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「とろみサーバー」で業務改革

「とろみサーバー」で業務改革

 特別養護老人ホーム市川三愛(千葉県市川市、100床)は昨年12月、介護テクノロジー補助金を運用し「とろみサーバー」(凰商事)を導入した。2ユニットで1台、計5台を設置。これまでの手作業と比べ、作り手に依存しないとろみ調整の質、利用者個々への提供のしやすさなど、使用1カ月で既に効果を実感する声が多くあがっている。

 3食を含む1日5回、計1000mlの水分摂取が目安の同施設。とろみ調整が必要な利用者は9割近くいる。食事でむせ込みが多い場合や、体調変化などを現場職員と看護師で確認し、適宜適切なとろみの濃度へ変更できる体制を整える。

 その反面、とろみ調整の対象者が多いだけに、以前は食事提供のたびにその調整作業に追われていた。例えば温かい飲み物の場合、やかんで湯を沸かし、コップを並べ、利用者ごとに必要なとろみ調整剤をスプーンで計量し入れ、湯を注ぐといった手順。「特に撹拌作業が大変でした。湯を入れてすぐ行わないとダマになる。担当職員やその時の慌ただしさで、どうしても調整にバラツキが出やすかった」と介護副主任の西村亜矢子さんは話す。

 とろみサーバーは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会基準の「薄いとろみ・中間のとろみ・濃いとろみ」の3段階の濃度でとろみ調整済の飲料を自動抽出する機器。とろみ剤は「つるりんこ」(森永乳業クリニコ)を使用する。

 操作は①飲料の種類②温・冷③とろみの濃さ――をボタン選択するだけ。西村さんは「作業がかなり簡素化され、食事の準備に余裕が出ました。使い方も簡単で、職員に浸透するのにさほど時間がかかりませんでした」と語る。

 看護・介護主任の堤麻子さんは「以前はスプーンの撹拌音があちこちで響いていた。これがなくなって、気持ちに余裕が生まれた気がする」と話す。とろみの均質性も高く評価。「普通の飲料と見分けがつかないくらいダマがなく、時間が経っても水っぽくならない。のどごしが良いので、普段はとろみを嫌がる人も、うすいとろみが自然に飲めるようになってきました」と、利用者の水分摂取量にも寄与していると述べる。

 現在は煎茶、麦茶、イオン水(スポーツドリンク)の3種類をセット。食事など大人数の準備が必要な場合は、同じとろみの濃度を大量に抽出する「まとめ取り」機能も活用する。抽出量はユニットごとに必要人数分を設定している。

すぐに出せる1杯

 その日の体調や食欲によっては飲むのが遅い人もおり、飲み物が冷めて新しく入れ直す場合、今まではその都度湯を沸かさなくてはならなかった。この手間もとろみサーバーは解消する。

 「温かいものをすぐ出せるのが本当に便利。『もう1杯飲みたい』と言われたとき、他の業務の合間に作るのはわりと負担でした」と西村さん。「飲み物の種類と濃度さえ確認できれば、近くにいる職員なら誰でも・いつでも対応できます」と喜ぶ。堤さんは削減できた時間を利用者との対話などに充足したいと話す。「例えば屋上へ連れ出して、綺麗な景色を見せてあげたい」。

 茂呂匡将施設長は同製品について「現場から必要とする声も多く、2〜3年前から検討していました」と説明。介護テクノロジー定着支援事業の対象に明記されたことが、決断を後押ししたそうだ。

 補助金ではあわせて吊り上げ式リフト、スタンディングリフトも各1台導入に至った。「介護人材定着のため、業務負担軽減、腰痛予防をより本格的に取り組む。今年はその元年にしていきたい」と強調する。

 堤さんは学会で聴講したノーリフティングの実践発表に感銘を受けた。施設では率先して現場職員のリフト習熟に奔走する。「『人の手で持ち上げたほうが早い』という意見もまだまだあります。吊り上げている時間を利用者との会話に上手く使うなど、コミュニケーション面での有効性も浸透させていく必要があります」と語る。
(シルバー産業新聞2026年2月10日号)

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