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在宅への介護テック普及に向け「開発とビジネスの視点」

8月6日に開催された厚生労働省の福祉用具・住宅改修評価検討会の構成員には、介護テックの専門家として宮本隆史氏(社福・善光会理事最高執行責任者兼統括施設局長)が初参加した。宮本氏に、介護テックを在宅に広げていくために必要なこと、構成員として同検討会への関わり方について聞いた。
同検討会の構成員は自治体(保険者)や医師、リハビリテーション、ケアマネジメント、福祉用具事業、工学系研究者など各専門領域の第一線の方々が務めており、今回以降、私に期待されるのは「介護テックに関する開発やビジネスの視点」だと思っている。背景には、排泄予測支援機器以降、介護テックの在宅への導入が進んでいないことがある。
福祉用具の対象拡大が進んでいないのは、介護テック分野に限らず福祉用具全般に言える。新規追加を検討しているメーカーが検討会構成員と直接意見交換できる機会がなく、あくまでも申請した書面に基づいて審査を受ける仕組みが要因ではないかと推測する。
福祉用具の対象拡大が進んでいないのは、介護テック分野に限らず福祉用具全般に言える。新規追加を検討しているメーカーが検討会構成員と直接意見交換できる機会がなく、あくまでも申請した書面に基づいて審査を受ける仕組みが要因ではないかと推測する。
認知症の人と周囲の人のための介護テック
今後、認知症の人の在宅生活を支援する介護テックが必要になると考えている。本人が尊厳をもって生活できるように支援するとともに、BPSD(認知症による行動心理症状)が進む中で、支援をする周囲の人の負担も介護テックで軽減できるのではないかという想いだ。認知症になっても住み慣れた地域で生活できることを目指す国の方針にも沿う。
国では認知症施策推進大綱(2019年6月)や、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(認知症基本法、24年1月施行)の整備などを進めてきた。前回(17年)の重点分野の見直し時点と比べて、認知症の人と周囲の人を社会で支える考え方が大きく進展した。
厚労省と経産省の両省も、25年度より介護ロボットの重点分野に「認知症生活支援・認知症ケア支援」分野を追加することを決めている。介護テックの進展は目覚ましく、その当時の枠組みに収まらないことも増えている。こうした見直しは今後も実施されていくのだろう。
認知症の親の介護のため、働き盛りの人の介護離職を減らすことができるのであれば、貴重な働き手を失うことがなくなり、日本の生産性向上にも貢献できる。
国では認知症施策推進大綱(2019年6月)や、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(認知症基本法、24年1月施行)の整備などを進めてきた。前回(17年)の重点分野の見直し時点と比べて、認知症の人と周囲の人を社会で支える考え方が大きく進展した。
厚労省と経産省の両省も、25年度より介護ロボットの重点分野に「認知症生活支援・認知症ケア支援」分野を追加することを決めている。介護テックの進展は目覚ましく、その当時の枠組みに収まらないことも増えている。こうした見直しは今後も実施されていくのだろう。
認知症の親の介護のため、働き盛りの人の介護離職を減らすことができるのであれば、貴重な働き手を失うことがなくなり、日本の生産性向上にも貢献できる。
保険給付の議論はコスト・効果・必要性のバランス重視で
私の所属する社会福祉法人善光会は、サンタフェガーデンヒルズ(東京都大田区)のほか都内に特養や介護施設を展開しており、数多くの介護テックを積極的に導入し活用を進めてきた。今年度の介護報酬改定で創設された「生産性向上推進体制加算」は上位加算の(Ⅰ)が算定できている。
また、厚労省が実施する、介護ロボットの開発・実証・普及の流れを加速化することを目指したプラットフォーム事業で、介護ロボットの評価・効果検証を実施する全国8カ所のリビングラボの一つに当法人の「CareTechLab」が選定されている。そうした経緯から、開発企業との接点も多く、在宅でも介護テックが介護保険給付されることについては基本的にポジティブだ。
ただ、一般に介護テック関連の機器は高額なものも多く、公費が半分を占める保険給付の対象とすることが費用対効果の面からも適切なのか、在宅生活を続ける上で必要なものなのか、構成員としてバランス感覚をもって意見をしていきたいと思っている。
また、厚労省が実施する、介護ロボットの開発・実証・普及の流れを加速化することを目指したプラットフォーム事業で、介護ロボットの評価・効果検証を実施する全国8カ所のリビングラボの一つに当法人の「CareTechLab」が選定されている。そうした経緯から、開発企業との接点も多く、在宅でも介護テックが介護保険給付されることについては基本的にポジティブだ。
ただ、一般に介護テック関連の機器は高額なものも多く、公費が半分を占める保険給付の対象とすることが費用対効果の面からも適切なのか、在宅生活を続ける上で必要なものなのか、構成員としてバランス感覚をもって意見をしていきたいと思っている。

(シルバー産業新聞2024年10月10日号)