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十島村 小多機+レンタル+通いの場 少ない資源でできること

十島村 小多機+レンタル+通いの場 少ない資源でできること

 7つの有人島(トカラ列島)からなる鹿児島県十島村。23時に鹿児島港を出港した村営船フェリーとしま2(1953t)が一番近い口之島に着くのが午前5時。所要時間は6時間。順次7島をめぐり、最後の宝島には11時半に到着する。奄美大島・名瀬に15時に着いて翌日早朝、Uターンして逆順に7島を回って夕方に鹿児島港に戻ってくる。週2回の運行だ。

 取材した島の保健師、肥後あかねさんは、口之島の生まれ。医師の常駐がない十島村で看護師の役割は大きく、島民の医療や介護を担おうと、2014年から保健師として勤務している。

 各島に診療所があり、19年度から進めてきた看護職1人→2人体制づくりが、今年9月に整った。医師の診療は、鹿児島赤十字病院や県立鹿児島病院からの医師派遣があり、月2回程度の巡回診療(直接診療)が行われている。

 医師の不在時は遠隔支援システムを使用して医師と情報共有を行う。緊急時は、ドクターヘリや県の防災ヘリ、自衛隊ヘリで、村外の病院に搬送している。

 4人いる保健師の中で、肥後さんは介護保険を担当する。介護保険の取組として、「小規模多機能ホームたから」、各島の通いの場、福祉用具貸与サービスを提供する。

 要介護認定者数は、要支援14人、要介護30人。要介護度が高くなると、鹿児島市などで介護保険サービス(施設やデイ)を利用する場合が多い。肥後さんは「要介護3でも、島に留まり生活を継続している人もいます」と言う。

 小規模多機能ホームたから(マシューズ)は現在、利用者は5人程度。24時間365日のサービス。通いサービス利用が多い。障がい者支援も行う。4年前から、マシューズが運営を担っている。島民のパート職も重要な戦力だ。週2回、5人にお弁当を提供(利用者負担200円)する。

 事業性の確保のため、介護報酬の収入だけでは運営できないので、一部、町の一般財源の投入を行い、赤字にならないように支援している。「他島の住民や議員からも、自分たちの島にも欲しいという要望が寄せられているが、担い手がいないのが現状」と肥後さん。

 福祉用具貸与サービス(カクイックスウイング)は、23年度実績で年間累計319件。月当たり約26件。約20人が、介護ベッド、シニアカー、手すりなどを利用している。シニアカーで、畑に行ったり、タケノコ取りに行くなど、歩行が困難な人の日常生活で活用されている。

 通いの場は、各島で週1回以上、総合事業(住民主体)で実施する。希望者に対して、体操、認知症カフェ、見守り支援などを行っている。小宝島は、診療所の看護師が通いの場開催日の午前に対応する。中ノ島は生活支援コーディネーター(介護職)が担当するなど、各島での取組が進む。

 肥後さんは「資源の少ない島でできる方法を探ることや、島の人たちの力を生かして事業を展開すること、多くの関係機関との連携やコーディネートが保健師の役割です」と、離島の介護保険に取り組む。
(シルバー産業新聞2024年12月10日号)

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