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サ高住 立地に市町村の方針を反映

サ高住 立地に市町村の方針を反映

 サービス付き高齢者向け住宅が新たな局面を迎えている。国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会」は、現状のサ高住が抱える課題に対して適切な立地の推進や質の向上、介護サービス利用の適正化などに取り組むべきと結論付けた。創設以来続いてきた補助金や税制優遇、融資などの整備支援措置は、市町村の供給方針に沿うサ高住に重点化する方向で、今年度中に検討に入る見通し

ケアプランチェックで「囲い込み」防止

 サービス付き高齢者向け住宅が新たな局面を迎えている。国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会(座長=橋紘士国際医療福祉大学大学院教授)」は、現状のサ高住が抱える課題に対して適切な立地の推進や質の向上、介護サービス利用の適正化などに取り組むべきと結論付けた。創設以来続いてきた補助金や税制優遇、融資などの整備支援措置は、市町村の供給方針に沿うサ高住に重点化する方向で、今年度中に検討に入る見通しだ。

立地場所や併設事業所で補助金支給に「メリハリ」

 4月15日に公表された同検討会の中間とりまとめでは、今後取り組むべき主な対策として①サ高住の適切な立地の推進②サ高住の質の向上③介護サービス利用の適正化④地域における生活支援サービスの提供体制の確保――の4点を提示した。

 ①サ高住の適切な立地の推進では、市町村の供給方針に沿ったサ高住に対して、補助金支給などの支援を重点化する方向性が示された。サ高住供給の現状として、「地域的に供給のばらつきがあり、市街化区域外、医療機関などへのアクセスが悪い地域への立地もみられる」ことを指摘。まちづくりや適切なサービス供給の観点から、市町村の関わりを強め、計画的な整備を進めるとした。

 主な具体策として▽介護保険事業計画などに整合するサ高住の供給方針を市町村の計画に位置づける▽補助金申請時の市町村の意見を聴収。特に居住誘導区域外に立地するものについて同意を求める▽補助金などの支援を供給方針に適合するものに重点化する方向で15年度中に検討――などを挙げる。

 適切な立地以外にも地域へのサービス供給の拠点としての機能を備える「拠点型サ高住」の整備を促進するため、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や小規模多機能型居宅介護などの併設事業所の整備も重点的に支援する方針も掲げる。厚生労働省の調査によると、小規模多機能サービスを併設・隣接しているサ高住は12.7%、定期巡回サービスは4.3%に止まっている。

 また空き家・空き室の既存ストックの有効活用を進める。住戸ごとに分散して登録する「分散型サ高住」の整備推進のため、4月から安否確認・生活相談サービスの提供者の常駐場所を同一敷地・隣接の土地から「住宅からおおむね500m以内」へ緩和された。

 ②サ高住の質の向上では、提供が義務付けられている安否確認・生活相談のサービス提供体制のバラつきなどが課題に挙げられた。入居者50人に対して、安否確認・生活相談の日中帯の提供者数は「4人未満」が23.7%ある一方、「10人以上」も36.3%となった。中間とりまとめでは、従事者の資格要件や戸数に応じた従事者数の設定などの検討を今後行うとするが、サービス体制の強化は入居者の利用料に反映されるため、どのような結論に行きつくかはまだ不透明だ。

7月より有老ホームの指導指針の適用対象に

 今年7月から有料老人ホームに該当するサ高住は、有料老人ホーム設置運営標準指導指針の適用対象となる。介護や食事の提供などを行っていれば有老ホームに該当するため、9割以上のサ高住が対象となる。指針には管理者の配置や運営懇談会の実施などの規定がある。罰則規定はないものの、指針に従っていない場合、自治体からの指導対象となる可能性もある。ただし、長期的な事業収支計画の提出など、一部の規定についてサ高住は対象とならないものもある。

 ③介護サービス利用の適正化では、いわゆる囲い込みや過剰介護を防ぐため、保険者による入居者のケアプランチェックの推進などを具体策に挙げる。また契約前の事前説明事項に、外部事業者が提供するサービス利用が選択できる内容を位置付けることも盛り込まれている。囲い込みや過剰介護には、「サービス付き高齢者向け住宅と同一法人が運営する介護事業所の利用を、入居者に対して強要している」「区分支給限度基準額ギリギリの介護保険サービス利用を入居条件にしている」などの事例が地方自治体からも報告されている。

 サービス付き高齢者向け住宅協会の奥村孝行事務局長は、「外部サービスが使えるなど、入居者の選択の自由を十分に説明したうえで、結果として囲い込みの形になってしまうケースもある。事業者はしっかりと説明責任を果たし、適切なケアマネジメントが提供されていることを記録として残しておく必要がある」と指摘する。

 ④地域における生活支援サービスの提供体制の確保では、サ高住以外に住む地域の高齢者にも安否確認や生活相談といったサービス提供が確保されるよう、モデル事業への支援などに取り組む方針を示す。

 サ高住の登録数は15年3月時点で5498件、17万7722戸となっている。

サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会 中間とりまとめ

 今後取り組むべき主な施策(一部、編集・抜粋)
サ高住の適切な立地の推進
〇補助金申請時、市町村の意見を聴収。居住誘導区域外の立地は同意を求める
〇補助金などの支援措置を供給方針に適合するサ高住に重点化する方向で今年度中に検討
〇空き家など既存ストック活用推進のための整備支援拡充、規制緩和
〇補助金申請時、需要予測の徹底など事業者自身の検討が進む環境整備
〇定期巡回サービスや小規模多機能型居宅介護などの併設事業所整備に重点的支援
サ高住の質の向上
〇安否確認・生活相談サービス従事者の資格要件や戸数に応じた人数の設定を検討
〇有料老人ホーム設置運営標準指導指針などを踏まえた自治体の適切な指導監督の推進
〇第三者評価による評価指標等の検討
介護サービス利用の適正化
〇保険者によるケアプランの調査・点検強化などにより、ケアプランの適正化などを推進
地域における生活支援サービスの提供体制の確保                
〇ICTを活用した地域のNPOなどによる安価な見守りサービスの提供などのモデル的取組みの支援
(シルバー産業新聞2015年5月10日号)

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