連載《プリズム》

国交省の隠し玉

国交省の隠し玉

 いよいよ「高齢者住まい法」改正案が、2月8日に閣議決定となり国会に上程された。国交省は現在高齢者人口の1%程度の高齢者住宅を、2020年までに一挙に3~5%に拡大すると、成長戦略に掲げている。(プリズム2011年3月)

 国交省は現在高齢者人口の1%程度の高齢者住宅を、2020年までに一挙に3~5%に拡大すると、成長戦略に掲げている。65歳入口2900万人の1%は29万人だから、その3~5倍の住宅数は87~145万戸にあたり、これを10年間で実現するという戦略である。昨年1年間のすべての新築住宅着工戸数が81万戸だから、これを上回る数の高齢者住宅を10年間で確保することは並大抵な計画ではないはずだ。サービス付き高齢者住宅の元の1類型である高専賃(高齢者専用賃貸住宅)の登録戸数が、全国で4万8000戸に止まっていることからも難しい数字であることが分かる。しかし、12年の介護保険制度改正のテーマである、地域包括ケアの推進の重要な取組みとされる24時間短時間サービスは、このサービス付き高齢者住宅との組み合わせが念頭に置かれている。それだけに画餅ではすまない。

 実は、「成長戦略」には隠し球があった。国交省は、公営住宅の入居者の高齢化対策という大きな課題をかかえている。隠し球とは、公営住宅のサービス付き高齢者住宅化を指す。06年3月時点で、都道府県と市町村が管理する公営住宅だけで145万戸ある。公営住宅等比率をみると、北海道(7..1%)や九州(5.3%)が高いが、高齢者住宅の需要が最も高いと考えられる関東圏は、全国で最も低い1.3%。東京都新宿区の戸山団地は、都が積極的に独居高齢者の居住を進めたこともあり、高齢化率が50%を超える限界集落。コミュニケーションが絶たれ、孤立化を招いている。

 詳細はまだ分からないが、公営住宅の事業主体である自治体が民間にサービス付き高齢者住宅として試用させるという仕組みだ。これなら最低252㎡の居室面積でもあっても、低所得者への対応は自治体の判断でどうにでもなる。必須のサービスである生活支援も費用も抑えられる可能性がある。介護サーピスは介護保険主体で開できる。民間がやるのだから、民常庄迫とは言われない。既存の社会資源を利用して解を見つけることは、これからの日本の進む道かも知れない。

(シルバー産業新聞2011年3月10日号)

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