生き活きケア

多世代がシェアする自遊空間/サ高住 はっぴーの家ろっけん(神戸市)

多世代がシェアする自遊空間/サ高住 はっぴーの家ろっけん(神戸市)

 サービス付き高齢者向け住宅「はっぴーの家ろっけん」(神戸市)の1階にはいつでもだれでも訪れ、自由に過ごせる空間がある。ここでは地域共生社会の拠点として「遠くの親戚より近くの他人」をコンセプトに、多世代・多国籍が交流するちょっと懐かしくて新しい家族の光景に出会うことができる。(生き活きケア 149)

 サービス付き高齢者向け住宅「はっぴーの家ろっけん」(神戸市)の1階にはいつでもだれでも訪れ、自由に過ごせる空間がある。ここでは地域共生社会の拠点として「遠くの親戚より近くの他人」をコンセプトに、多世代・多国籍が交流するちょっと懐かしくて新しい家族の光景に出会うことができる。

 神戸市長田区の下町風景が広がる「六軒町商店街」を抜けると、6階建てのマンションが見えてくる。サービス付き高齢者向け住宅「はっぴーの家ろっけん」だ。別名「介護付きシェアハウス」。その理由は建物の中にある。

 入ってすぐの1階のリビングが交流スペース。住民である高齢者がくつろぐ傍らで、宿題に集中する子どもやゲームに夢中な子ども、創作活動に取り組む若者など、各々好きなことに没頭する世代が入り混じる。来訪する人は1週間で200人。SNS等で噂を聞いて立ち寄る海外からの旅行者もいるそうだ。

 高齢者たちは「何してるん」と宿題を覗きに来る人や「ちょっとやらして」と作成中の作品にアドバイスを送る人も。入居者の食事の時間になれば、子どもたちが手慣れた様子で入居者の食事の配膳などを手伝う。

 皆他人同士だが、まるで親戚が集まった時のような雰囲気で自然と、世代交流が行われている。
この日はみんなで寿司パーティー (首藤氏は右から2人目)

この日はみんなで寿司パーティー (首藤氏は右から2人目)

育児・仕事・介護の両立からエンターテイメントまで

 「ろっけん」の開設は2年前。首藤義敬施設長は「仕事をしながら、育児と親の介護を全て完璧に行うことは不可能。こうした状況に悩んでいる人たちへ、地域でお互いが自然に助け合う『大家族』を形にしようと考え『シェアハウス』をコンセプトにした」と話す。

 事前に開いた区民向けのワークショップでは100人以上から意見をもらった。そこで共通していたニーズが「世代や家庭環境を問わず、誰もが『楽しめる』場所」。1階はだれでも気軽に何でも使える広い共有スペースに設計した。

 施設内には卓球台や図書スペースなど介護施設ではあまり見かけない光景も。「卓球をしたいのに進学先に卓球部がない」「本を読みたいけれど近所に図書館がない」といった施設に寄せられた声をSNSで発信。それを見た近所の人が寄贈してくれたという。欲しいものがそこにある。人が集まる理由の一つだ。

 子育て中のママさんもよく利用する。買い物や兄弟のお迎えに行く間に子どもを預けても、見守る目が沢山あり安心。さらに、子育て出勤も可能で、子供も仕事の間の遊び相手に不自由しない。

 より楽しみ要素を充実させようと、イベントは毎週開催。

 同施設スタッフが企画する「すみびらき」は卓球大会や占い大会、お寿司パーティーまで何でも実現する。
 食事のお手伝いはおてのもの

 食事のお手伝いはおてのもの

いつの間にか地域住民の支援拠点に

 ろっけんの評判が広がるにしたがって、思わぬケースも。親族からの暴力をうけ、同施設に駆け込んできた女性がいた。空室で数カ月過ごしてもらう間にスタッフが新しい住居探しを手伝い、さらに働き先の紹介も行った。

 首藤氏は「年を重ねた入居者はいわば生き字引。ここにいろいろな特技・趣味を持った多世代が融合すれば施設が大きな知恵袋になる。一人ではどうにもできないことも、解決策がどんどん出でくる」と同氏は話す。

 次に取り組みたいのは看取りからお別れ会までを施設内で実施すること。お世話になった人が沢山集まる『はっぴー』なお見送りを実現させたい」と同氏は語った。
アフリカ・トーゴからの旅人

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(シルバー産業新聞2019年9月10日号)

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