ニュース

大阪大学大学院 睡眠時体動センサーで心不全悪化を早期検出

大阪大学大学院 睡眠時体動センサーで心不全悪化を早期検出

 大阪大学大学院医学系研究科の宮川繁教授(心臓血管外科学)と坂田泰史教授(循環器内科学)らの研究グループは、心不全の悪化を「呼吸安定時間(RespiratoryStabilityTime:RST)」の低下を計測することで、息切れや体重増加などの症状が現れる前に検出できることを実証した。心不全の早期治療が可能となり、入院や死亡の抑制につながることが期待される。

 心不全とは、心臓の機能が低下することで息切れや体のむくみが生じ、運動負荷に耐える力が低下した状態を指す。急激な悪化により入院を繰り返しながら進行し、予後が悪いことが特徴。

 RSTは、麻野井英次招へい教授(同大学国際医工情報センター)が2010年に発表した呼吸の安定性を示す指標。健康な状態では、深い眠りの際に呼吸は規則正しく安定しているが、心不全が悪化すると肺に血液がうっ滞し、肺からの神経シグナルにより呼吸が乱れる。この指標は、ベッド上に設置した体動センサーから自動送信されるデータをクラウド上で解析することで、病院や診療所から遠隔でモニタリングすることができる。

 今回、宮川教授、坂田教授、麻野井招へい教授を中心とする研究グループは、入院リスクの高い外来心不全患者を対象に治験を実施。RSTを自動で算出するプログラム(パラマウントベッドの子会社であるハートラボが医療機器として製品化)を用いて解析を行った結果、心不全症状の悪化が入院の平均1週間前から始まるのに対し、RST20秒未満への低下は入院の平均1カ月前から認められることが判明した。

 これにより、RSTを解析することで、症状が現れる前に心不全の悪化を検出できることが示された。また、治療によってRSTを上昇させることで入院を予防できることも確認された。

 坂田教授は、「早期発見と治療が課題とされてきたが、呼吸状態をモニタリングする意義が明らかになった。非侵襲的であり、睡眠時に計測できるため、多くの患者に適用可能。今後は、どのような介入が予後やQOLを改善するか、またコスト面での検討が課題となる」と述べた。
(シルバー産業新聞2025年1月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル