インタビュー・座談会

厚労省インタビュー デイサービスの今後のあり方

厚労省インタビュー デイサービスの今後のあり方

 2015年介護報酬改定で通所介護の機能分化が示された。新総合事業への移行が進む予防通所介護は約2%の報酬ダウンとなる一方、中重度者や認知症高齢者の積極的な受入れは新加算で評価、またレスパイトケアの重要性から延長加算の充実がはかられた。今年4月からは定員18人以下の小規模型通所介護が地域密着型サービスへ移行するなど、通所介護は大きな再編期を迎えている。通所介護が地域で今後求められる役割について、厚生労働省老健局振興課辺見聡課長に聞いた。

小規模デイの地域密着型移行 地域連携や透明性の確保目的

 ――デイサービスの今後のあり方について。
 前回の法改正に関する2013年の介護保険部会の意見書において、通所介護について、「その機能に着目した上で、事業内容を類型化し、それに応じて介護報酬にメリハリをつけること」とされた。その考え方は、基本的に現在も変わっていない。通所介護に求められる機能というのは、心身機能の維持向上、活動の維持・向上、社会参加の促進に加え、認知症高齢者・重度者への対応、地域連携の拠点としての機能である。
 
 さらに、政府が目指す一億総活躍社会の実現に向けて、生産性の向上がポイントに挙げられている。限られた人材で、今後さらに増え続けていく要介護高齢者を支えるために、業務負担の軽減や生産性革命の実現が必要になるということ。この大きく2つの視点を軸に今後もデイサービスの有り様を考えていくことになる。

 ――事業者として果たしていくべき役割とは。
 利用者にとってデイサービスに参加することは生活の一部。デイサービス事業所の側が、その方がどのような生活背景を持っているのか等をしっかりと把握した上で、支援ができているかどうかが1つ目のポイント。そのために、前回の改定では個別機能訓練加算の追加要件として、利用者の居宅を訪問した上で計画を作成し、その後3カ月に1回以上のペースで計画の見直しを行う仕組みを取り入れている。
 
 前回改定の2つ目のポイントは、生活相談員の専従要件を緩和し、サービス担当者会議だけでなく、地域ケア会議への出席等を可能としたこと。ほかにも、地域の町内会などと連携して、利用者に必要な生活支援を担ってもらうなどの社会資源の発掘・活用ができるようにもしている。デイサービスの事業はその地域の介護資源の一部であるという考え方に立って、蓄積されたノウハウを地域に還元することをやってもらいたい。

 ――定員18人以下の小規模デイが4月より地域密着型サービスに移行になります。
 小規模デイの事業所の展開先として、地域密着型の通所介護に移行するほかに、大規模型や通常規模型のサテライト型事業所になる、あるいは、小規模多機能のサテライトになる選択肢がある。そもそも小規模デイを地域密着型に移行させるのは、地域との連携や運営の透明性を確保することを目的としている。サービスを提供している地域の関係者との間でネットワークを構築し、事業内容の透明性を確保する取り組みを、形式的なものではなく、実がきっちりと発揮されるような形で進めていってもらいたい。
 
 その一方で、地域密着型サービスとなると、利用者は「その町の住民」が原則。市町村の圏域を跨いで利用する場合は、手続きを取ることで他の市町村の事業所でも利用できる仕組みになっている。さらに隣接していない自治体間でも、同意が得られるのであれば、それぞれから指定を受けることもできる。
 
 ――デイサービスが充実を図るべき機能として認知症高齢者への対応が挙げられていますが、認知症デイとの関係はどうなりますか。

 
 考え方を整理すると、もともと認知症デイが創設されたのは、広く一般に要介護高齢者を対象としたサービス内容では、認知症の方に対し、必ずしも適切にサービスができないのではないかとの考えからだ。一方で、今後、さらに認知症高齢者の割合が高まってくる状況を踏まえ、デイサービスの機能を見つめ直すことも必要。さらに言えば、認知症デイは地域密着型のサービス類型だが、4月以降、小規模デイも地域密着型サービスに移行する。そうしたことを総合的に踏まえながら、今後のあり方を考えていく必要があるのではないか。

 ――医療と介護の連携も事業者にとっては重要な課題です。
 医療と介護の連携について、私は3つの視点があると思っている。1つ目は、入院医療と介護の連携。この部分は、退院後の生活を支えるために、連携パスを地域でどのように作っていくかが課題になる。2つ目は、在宅医療と介護の連携。在宅医療の状況は、地域によって様々なので、そうした個々の地域の状況を踏まえてどう連携体制を作っていくのか。そして、3つ目がターミナル期だ。 デイサービスの場合、1つ目と2つ目のところで、どういう関わりを持てるのかを考えていくことが必要だろう。前回の改定で中重度者ケア体制加算を創設したのは、まさにそうしたことを見据えてのことである。
 
 もう一つのポイントとして、12年度からは介護職員が、喀痰吸引や経管栄養を行えるよう法改正を行い、介護福祉士については今年度の合格者から、医療的ケアが当たり前の業務としてできる資格になっている。その専門性を活用して、どのような事業展開をしていくのかについては、そろそろ考え始めないといけないだろう。もちろん、医療ニーズがある人をデイサービスで受け止めるのには限界があるが、「まったく受け入れられません」というスタンスでは、これからの地域のニーズに応えられなくなるはずだ。

 ――お泊りデイをどう評価していますか。
 現場のニーズから出てきたものなので、一概に良い悪いの判断を行うものではないと考えるが、介護保険の指定を受けた設備を利用している以上、利用者保護の観点から、どのような使われ方をしているのか等について実態を把握する必要がある。
 
 そのため、前回の改定において、宿泊サービスを実施している事業所には指定権者への届出を義務付け、情報公表制度の活用や事故報告の仕組みも構築した。さらに、最低限の質を担保するという観点から、宿泊サービス提供にあたっての設備要件などをガイドラインにまとめ、各自治体に示している。そうした事業運営の結果を今後、見定めていくことになる。ただ、小規模多機能が普及してくると、利用の状況も変わってくる可能性もある。

 ――カジノ型のデイサービスを規制する自治体が出てきています。
 デイサービスに求められる機能は、冒頭申し上げた通り、心身機能の維持・向上、活動の維持・向上、社会参加の促進が基本となる。社会参加の促進の観点から、利用者の意欲を刺激するプログラムを組むことは有効だと考えるが、ただし、そのプログラムをどのような計画で行っているのか、時間や頻度も含めその中身については、保険給付で提供されているサービスである以上、必ず問われる。利用者自身の余暇や余興のために過ごす時間と、参加や活動に向けてのプログラムであることの区別がつかなくなると、保険料を支払っている方々からの納得が得られないという視点が必要だ。

(シルバー産業新聞2016年2月10日号)

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