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介護保険の利用者負担 現役並み所得者3割へ

 厚生労働省は11月25日に社会保障審議会介護保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学教授)を開催し、2018年の次期介護保険制度改正における利用者負担のあり方について、現役並み所得者のサービス利用負担割合を3割へ引上げる検討を行った。

 厚生労働省は11月25日に社会保障審議会介護保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学教授)を開催し、2018年の次期介護保険制度改正における利用者負担のあり方について、現役並み所得者のサービス利用負担割合を3割へ引上げる検討を行った。在宅サービス利用者の3~4%が対象となる見込み。高額介護サービス費については、課税世帯(一般区分)を医療保険の高額療養費と同じ4万4400円へ引上げるなど、所得に応じた負担拡大の具体案を示した。

 利用者負担のあり方は、18年制度改正の検討課題「介護保険制度の持続可能性の確保」の一つ。政府が2015年12月に発表した「経済・財政再生計画改革工程表」の中でも、16年末までに結論を得るとされている。前回の同部会では、介護保険サービス利用時の負担割合や高額介護サービス費の上限について所得に応じた引上げを検討。委員からは「やむを得ない」との意見も多かったが、負担割合・額や対象者の範囲についての具体案は示されていなかった。

 同省はこの日、サービス利用時の負担割合については現役並み所得者を医療保険と同様、3割に引上げる案を論点に提示した。「現役並み所得」の対象範囲は、世帯内に課税所得145万円以上の第1号被保険者がいる場合で、世帯内の第1号被保険者の収入合計が520万円(1人のみの場合383万円)以上となる場合。同省の試算によると、在宅サービス利用者で約13万人(3~4%)、特養入居者で約1万人(1~2%)が該当する。これによる財政効果は給付費ベースで100億円程度が見込まれる。前回の15年改正では、合計所得金額160万円(年金収入のみは280万円)以上の利用者の2割負担を導入。16年2月実績で在宅サービス利用者の9.7%が該当している。

 なお、医療保険では70歳以上の高齢者についても現役並み所得の場合、患者負担割合は3割となっており、それ以外は75歳以上が1割、70~74歳が2割とされている(2014年4月1日現在、70歳を超えていた人は1割を継続)。

 同改正案を妥当とする委員も多いなか、3割という設定に対しては「受益を考えると、あまり負担に差を設けないほうがよい」(齊藤秀樹・全国老人クラブ連合会常務理事)との指摘や、「保険料の上昇を抑えるために2割負担がはじまり、そしてすぐに3割負担。介護保険料が一体どの程度抑えられるのか、事業者が利用者へ説明できる根拠が欲しい」(石本淳也・日本介護福祉士会会長)などの要望もあがった。

 また、介護給付費実態調査の平均費用額をみると、施設サービスに関しては利用負担を2割とした場合、特養の要介護1を除く全ての場合で高額介護サービス費の上限(4万4400円とした場合)に達するため、3割負担への影響は少ないとみられる。これについて、「3割負担を導入すれば在宅利用者のさらなる負担増を招き、施設へシフトしてしまうのではないか」(伊藤彰久・日本労働組合総連合会生活福祉局長)と懸念を示す声や、一方で「これだと十分な財政効果が得られない。自己負担化や給付のあり方なども検討すべきだ」(岡良廣・日本商工会議所社会保障専門委員会委員)とさらなる負担増、給付適正化を求める意見もあがった。

課税世帯の高額介護費上限 4万4,400円に

 高額介護サービス費は、利用者負担が過度に重くならないよう、所得に応じて月々の負担上限額を段階的に設けたもの。15年改正以前は課税世帯(一般区分)が3万7200円で統一していたが、改正後「現役並み所得者」の区分を設け4万4400円に引上げ、続く一般区分は3万7200円のままとした。16年3月実績によると、現役並み所得は5万2479件(全体の3.1%)、課税世帯は21万9239件(同13.1%)が該当する。

 同省はこの日の論点で、一般区分について医療保険の高額療養費と同じ4万4400円へ引上げる案を示した。これについては、速やかに医療との整合性をとるべきとの意見、医療と介護ではそもそもケアの性質が異なることから、一致させる必要性がないとする意見に分かれた。

 また、高額介護サービス費は上限を超えた分を利用者が請求する償還払いであるため「一度は全額を支払わなければならず、その部分の負担能力も加味した方がよい。高額合算療養費(医療・介護の合計負担額の上限)の活用も言われているが、請求の手続きなどの負担も大きい」(馬袋秀男・民間介護事業推進委員会代表委員)と慎重な議論を求める意見もなされた。

 高額療養費についても現在、医療保険部会で見直しの検討が行われている。現役世代の課税世帯は、所得区分をさらに細分化し上限額を設定しているが、70歳以上の現役並み所得者は単一の区分であるため、現役世代同様、より所得が高い人で上限額引上げを行うかなどが論点とされている。
(シルバー産業新聞2016年12月10日号)

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