インタビュー・座談会

パナソニックAF 片山社長「生産性向上で処遇改善と高品質サービスを」

パナソニックAF 片山社長「生産性向上で処遇改善と高品質サービスを」

 6月にパナソニックエイジフリー(大阪府門真市)の社長に就任した、片山栄一氏。昨年1月にメリルリンチ日本証券の証券アナリストからパナソニックの役員へ転じ、エコソリューションズ社副社長、パナソニックサイクルテックの社長も務める。介護サービス、住まい、福祉用具サービスといった事業の柱については、それぞれ積極的な展開を念頭に置きつつも、拡大のスピードを少し緩め、処遇改善やスキルアップに取り組んで従業員の質を確保し、サービスの質向上を図る考えを示した。

介護の生産性向上で、処遇改善と質の高いサービス目指す

 当社の介護事業は、ライフサポート(在宅・施設介護サービス)、リテールサポート(介護ショップ)、ケアプロダクツ(介護機器・設備製造)の3部門からなる。16年度の売上は340億円で、そのうちライフサポート32%、リテールサポート50%、ケアプロダクツ18%という構成になっている。

 ライフサポートでは、ケアマネジメントや訪問介護・入浴・看護、デイサービス、小規模多機能、ショートステイなどの「エイジフリーケアセンター」が全国に173拠点、またサービス付き高齢者向け住宅を47拠点、介護付有料老人ホームを3拠点、グループホームを1拠点展開している。リテールサポートでは、介護用品のレンタル・販売、リフォームなどを手がける介護ショップを126店舗展開している。

生産性向上へインフラ整備も

 当社がサービス、ショップ、メーカーの3部門を備えることで、介護分野で総合的な力を持っていることは確かだ。ただし、エイジフリーケアセンターやサ高住、有料老人ホームなどで、ハード・ソフト両面での大半をグループ企業の商材で賄っている点は結果論でそれそのものが強みとは考えていない。結果的に当社の競争力のある商品が多いというだけだ。実際に、中で使うケア用品なども、自社・他社問わず一番ふさわしいと思われるものを採用している。空間洗浄機「ジアイーノ」や内装建材「ベリティス」など強みのある商品は積極的に使って広め、グループとしての成功のための貢献はする。ただし、パナソニック製品にこだわるあまり、施設の競争力が失われるのでは本末転倒である。個別商品の力を見てグループとして意味のある連携をしている。

 日々サービス提供にあたる人材の質こそ、介護事業の競争力を測る物差しだ。以前当社は、介護業界のナンバーワン企業を目指すと宣言した。ただしそれは、売上高だけを指標とする意味合いが強かった。私としては従業員がいかに満足感と働きがいを感じてもらえるかどうか、それにより質の高いサービスが提供できているかをより重要視している。

 介護業務は非常に大変な仕事である一方で、業界全体として給与水準は明らかに改善の余地がある。十分な経済条件が満たされなければ、良質な人材は確保できず、質の高いサービスは提供できない。待遇改善のためには、いかに介護業務の生産性を劇的に上げていけるかがカギだ。直接お客様と接するサービス以外の事務的な業務において、どれだけ業務量を減らすことができるか。そのためのハードウェアの整備や、インフラ投資などが必要だ。例えばお客様に関する情報管理やサービス提供記録などをスムーズに行える、情報共有プラットフォームについて、将来的には他社も巻き込みながら開発するなど、何らかの解決策を探っていきたい。

 そのほか、エイジフリーケアセンターでは、デイの送迎関連業務に全体の労働時間の2~3割が費やされており、その部分をどう改善していくか。また、キャリア採用で入社した従業員に対する研修制度や処遇の改善・見直しなど、足元から一つずつ見直していく。

拠点整備はペース落とす

 真に評価される事業所・施設を展開するには、いかに良質な人材を確保できるかにかかっている。以前掲げた拠点整備のペースに対し、人材確保が難しい状況であり、拠点拡大のスピードは落としていく。

 また、ここ数年で整備したショートステイ付きの新しいエイジフリーケアセンター(33拠点)と、それ以前からあるセンター(93拠点)との間で、ハード・ソフト両面でサービスの質にバラつきがあれば、その質を高いレベルで揃えていく必要もある。

 サ高住(エイジフリーハウス)については、成長はさせるがどのように成長させるか検証している。サ高住では主に標準的な所得層を対象としているが、例えば首都圏では介護度が低く、より富裕層寄りな方へ向けた、高級感と手軽なサービスを備えた住まいなど、われわれが今まで手がけなかった分野への参入も検討しなければならない。

リフォームをより重視

 ショップ事業では、介護用品のレンタル・販売も重要だが、特にリフォームサービスが今後さらに大切だ。リフォームを行う際、顧客の自宅を拝見して普段の生活ぶりを確認し、それに対するサポートの仕方を考えるプロセスを蓄積していくことが、当社の介護事業全体にとって大きな財産となる。介護保険の枠内の工事は決して単価は高くないが、より大きな規模のリフォームにつながるきっかけにもなり得る。生活環境の整備から、ご本人の暮らしや人生にも寄り添える貴重なサービスだといえる。

生産性向上に向けた介護ロボへの開発投資は必須

 超長期のテーマだが介護業務の生産性を上げるうえで介護ロボットの活用は欠かせない。この分野への投資はパナソニック本社とも連携して積極化させていく。既存のものでは例えば持ち上げ介助を代替する「リショーネ」のようなベッドがあり、お客様に貢献できていると自負している。しかし介護・介助の動作において最も必要性が高いのは、手先の指を使った細かい動きだ。人間の指の動きをロボットで完全に再現するのは最も難しい。20~30年かかるかもしれないが、将来的には手先の細かい動きを代替できるような介護ロボット技術の開発も検討する必要があるのではないかと思っている。

これからの時代に合ったライフサポートを

 国が掲げる「自立支援介護」や介護予防の推進の中で、介護が必要となる前の段階で高齢者にどうアプローチしていくか。例えば私が社長を兼任しているパナソニックサイクルテックの自転車を通じて、高齢期の健康増進や介護予防に役立つような商材を提供するなど、介護サービスだけではカバーしきれない、多様な高齢期の生活をサポートする方策も検討していきたい。さらには、幼児期からの保育サービスなども含め、これからの時代に合ったライフサポートを考える中で、高齢期の生活のお手伝いには何がより必要かを探っていきたい。(談)

(シルバー産業新聞2017年8月10日号)

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