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善光会 ロボット活用で特養の人員2.8対1に

善光会 ロボット活用で特養の人員2.8対1に

 社会福祉法人善光会(梅田茂理事長)が運営する特別養護老人ホーム「フロース東糀谷」(160床)は生産性向上、業務効率化の取り組みで業界の注目を集めている施設だ。3年半で人員配置を1.86対1から2.8対1まで緩和した。

 同法人ではフロース東糀谷など運営施設の一部のユニットで「介護業務時間25%軽減」を目指し、介護ロボットを集中的に導入している。介護職員のオペレーションを分析し、作業ごとの所要時間を割り出したところ、移乗や食事介助など上位6作業で業務時間全体の半分を占めていた。時間がかかる業務に対し、優先的に効率化を図っている。実際、フロアには移乗、歩行、入浴、排泄、コミュニケーションとさまざまな用途のロボットが設置されている。中には夜勤職員が使用するという「セグウェイ」のような移動ロボットも。「1回の夜勤で15㎞もあった歩行距離を3分の2に軽減できた」(同法人担当者)という。

 職員は出勤すると、インカムを着け、スマートフォンを携帯する。常時接続されたインカムで、タイムリーに職員間の連絡・連携がとれる。スマートフォンは各機器のアプリがダウンロードされており、入居者の離床や排尿のタイミングなどを通知してくれる。

「見守り ・ 巡回」 が最大のターゲット

 中でも大きく改善したのが見守りや巡回業務だ。各居室にはパラマウントベッドの「眠りSCAN」、コニカミノルタ「ケアサポートソリューション」、キング通信工業「シルエット見守りセンサ」などの見守り機器を備える。これまでセンサーの発報があれば、その都度、業務の手を止めて居室に駆け付けていた。今はスマホを使い、その場で入居者の様子をモニタリングできるので、優先順位や訪室の必要性を判断しやすい。離床やバイタル、排尿のタイミングなども遠隔で把握でき、深夜帯の巡回も不要となったという。
介護職が利用者の横で入力・確認できる

介護職が利用者の横で入力・確認できる

 同法人理事の宮本隆史氏によると、「見守り・巡回」は介護職業務の15%を占めており、「業務負担軽減の最大のターゲット」と強調する。センサーが鳴る度に作業中断をせずに済み、直接介助などの業務でも効率化が図られているという。またリネン交換など業務の一部を外注化。これらの取り組みを推進し、2015年に1.86対1だった人員配置を徐々に緩和。昨年10月には2.8対1になっている。日中は食事・入浴介助時などは除いて1ユニットにつき1人、夜間帯は2ユニット1人が基本的な配置だ。今後も取り組みを継続し、最低基準である3対1レベルのオペレーションを目指す考えだ。取材時には、他社と共同開発中のシステムも稼働していた。リビングで複数の入居者を同時に見守ることを目指すものだという。

使用機器が増えると業務は煩雑に

一方、ロボット運用の課題として、機器が増えるほど、アプリの切り替えや携帯する端末が増え、かえって業務が煩雑化してしまうことがある。

 同法人はこうした課題に対応するアプリ「スマート介護プラットフォーム(SCOP)」の開発も進める。メーカーが異なる複数の機器をSCOPで管理運用できるほか、最終的にはケアマネジメントAIの搭載も目指すという。

 昨年度には、日本医療研究開発機構(AMED)の開発助成事業に採択され、今年5月にも初期バージョンが無償リリースされる見込みだという。

(シルバー産業新聞2019年3月10日号)

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