インタビュー・座談会

大浦武彦先生に聞く③オムツ交換時のズレ対策の重要性

大浦武彦先生に聞く③オムツ交換時のズレ対策の重要性

皮膚湿潤環境への配慮が褥瘡予防で注目されるようになっている。ズレや圧の除去と合わせて、ケアをする上で重要な要素となっています。

――皮膚湿潤の管理によって褥瘡発生リスクが高まると聞きました。

  これまでも繰り返し説明しましたが、褥瘡予防・治療には、圧とズレの除去が第一です。その上で創の治りが芳しくなかったり、悪化していたりするのであれば栄養や皮膚湿潤などに問題がないかを確認することも必要となります。  

 皮膚湿潤で言えば、たとえばオムツ使用者であれば、蒸れなどによって褥瘡の発生リスクが高まるのは確かです。もし、発赤や骨突出があり、皮膚湿潤も、良くない患者であれば、なおさら褥瘡発生リスクが高まるといえます。
 
 ただ、私はオムツ交換の方法が適切でないために褥瘡が発生していることも、相当数あると考えています。オムツ交換の際の患者の移動の扱い方が問題である。

――どのような介助方法が求められるのですか。

  皮膚が蒸れた状態を最少にするため、オムツ交換を適切に実施することは理にかなっています。ただ、作業がしやすいように、ベッド上の患者を自分の側に力ずくで移動させ、オムツ交換をしているのであれば、蒸れの対策のために、引っ張りやズレなどの応力を発生させていることになり本末転倒といえます。   

 こうした意識を看護職や介護職に持ってもらい、例えば、ポリエステル製の滑りの良い素材でできたグローブを装着し、患者とベッドの隙間に腕を入れ込んで、滑らせる要領で手元に引き寄せることを推奨しています。   

 この方法だと、患者の創にかかる圧やズレを最少に出来ます。介助する側にとっても、軽い力で移動できるので、負担軽減や腰痛予防の観点からも良いです。

――看護・介護によっては、オムツ交換がリスク要因ということですか。

  そうです!このことをよく理解してもらうため、皆さんに簡単な質問を出題しますので、よく考えて答えてみてください。「褥瘡患者に尿道カテーテルを使用するようになって、褥瘡の治りがよくなりました。なぜでしょうか」。   

 普通に考えれば「尿による皮膚の浸軟が解消され、アレルゲンや外的刺激、便中の消化酵素による肌トラブルが起こりにくくなったから」といった解答が正解となるでしょう。   

 ただ、実際の看護・介護の現場では、不適切な力ずくのオムツ交換の必要がなくなり、創に外圧がかかる回数が大幅に削減されたからという、なんとも皮肉なことが正解ということもあるのです。   

 それほどに、介助する人の理解と技術も高める必要があるのです。

――オムツ選びはどうでしょうか。

  理想的は交換回数を減らすことです。吸収量の多い製品で、尿の吸収に優れて蒸れにくい製品ということになります。最近では、在宅療養をする患者も増えてくる中で、尿に含まれる不純物が目を詰まらせて、本来の吸収性能を低下させることがないように開発された製品も出始めています。各社から特色ある製品が発売されていますので、用途や目的に合わせて選択するべきです。   

 患者によって適合するかどうかの問題もありますが、最新の介護機器として、排尿を検知して自動で吸引してくれる尿吸引ロボ「ヒューマニー」(ユニ・チャームヒューマンケア製)という製品もあります

(シルバー産業新聞2017年2月10日号)

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