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ねんりんピック新聞 2025in岐阜 インタビュー 剣道

ねんりんピック新聞 2025in岐阜 インタビュー 剣道

「最終点は見えない」
剣道人生、なお上を目指す
大阪府太子町 三宅智子さん(63)

 面や胴、小手など、瞬間の一撃が有効打と判定されると、審判の旗があがる。スポーツ一家で育った三宅智子さんは高校生から剣道を始め、天理大学体育学部で学び、大阪府立高校で保健体育を教えながら部活動で剣道を指導してきた。「中学生のとき、藤棚の下の土の上で素足でやったのを覚えています」。現在は7段の段位を持つ。剣道の最高位は8段。やわらかな表情の奥に、なお高みを目指す鋭いまなざしが感じられた。
 お話を聞いたのは、三宅さんが担当する金剛高校(富田林市、大崎弘司校長)の剣道の授業。高校3年の選択授業で、約240人のうち15人が、週2時間通しの剣道を選択している。三宅さんは3年前に府を退職した後も、この授業や他校の剣道部で指導を続けている。

 この日は、女子生徒1人を含む13人が胴着を付けて参加していた。陸上部、バレーボール部、バスケットボール部、サッカー部など運動部の生徒が多い。4月から始めた授業だが、半年が経ち、竹刀を握る姿に気迫が感じられる。打ち込みは「打突(だとつ)」と呼ばれ、踏み込みの音とともに胴を打つ快音が響いた。
 中でも唯一の女子生徒は、部活動で3年間剣道を続けてきた。元気な男子生徒と比べて、腰の据わりが安定している。警察官一家に育ち、「非行に走る若い人を防ぎたい」と警察官を志望している。試験も間近だという。「就職が決まり警察学校に入ると、剣道と柔道は必須になります。学校にいる内にやっておくといいですよ」と三宅さんは話す。
 2時間の授業は、素振り、足さばき、追い込み、打ち込みなどの、回りけいこが続く。体育館(道場)では業務用の大型扇風機が回り続ける。最後には全員が先生の前でテストを受け、声が出ているか、打突は正しいか、姿勢はどうか、当たる場所は、足の運びはどうかを確認する。毎週テストで生徒の成長を確かめる。授業の終わりには達成感と爽快感から生徒の間で自然と笑いが広がった。

 三宅さんがねんりんピックに出場するのは、2年前の愛媛大会から2回目。ねんりんピックの剣道は男女混合の団体戦で行われる。刃物のまち、関市で開催される。68チーム、386人がエントリー。うち女性はわずか8人、三宅さんはそのひとりだ。試合は16ブロックに分けて予選リーグを行い、各ブロックの1位チームによる決勝トーナメントが実施される。愛媛大会で大阪府は予選敗退となった。
 岐阜大会の出場が決まり、修道館に集まり練習に余念がない。
 「やればやるほど奥深いのが剣道です。いまもどこが到達点か分からない。相手より早く打つことが大事ですが、相手の竹刀が自分の中心にあると手は出せない。目標は、相手が出ようとするところを先に打つことです。しかし、上級の相手には通じず、打ったつもりが打たされていることがあります」 「思い出の試合は、2003年8月5日の全国家庭婦人剣道大会。決勝で東京都に敗れました。私は大阪府の大将でした。今もその時の映像がよみがえります。団体戦での優勝は格別です」と、三宅さんは振り返る。

 全日本剣道連盟によると、同大会は08年を最後に、全国都道府県対抗女子剣道優勝大会と名称変更されて、広く女性が参加できる大会になった。女性の剣道人口は増えているという。
 家庭では夫も教員で、3児の母、子どもは成人している。「私の剣道は、家族に見守られています」とほほえんだ。

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