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ねんりんピック新聞 2025in岐阜 インタビュー 剣道

ねんりんピック新聞 2025in岐阜 インタビュー 剣道

「上段の構え」を後世へ残す大会に
土岐市 塚本六美さん(70)

 「お前、今日から上段な」。
 大学時代、剣道場の隅で打ち込みをしていたところへ、師匠が声をかけた。その後の剣道人生を導く一言だったと、塚本さんは振り返る。
 上段の構えは、竹刀を振り上げた状態が基本の姿勢。片手打ちができ、遠い間合いからでも届く「飛び道具」のような攻撃力が最大の長所だ。そのぶん胴はガラ空きで、間合いに入られると守備が脆い側面もある。「当時は上段が全盛期。全日本大会の優勝者の多くがそうだった。憧れもあった」と塚本さん。その長身を生かした戦法が見事にハマった。
 中学から大学まで剣道一本。最初は野球部に入るつもりが、当時、「肩を冷やすので、川での遊泳は禁止」された。川で魚を捕るのが何より楽しかった塚本少年には耐えがたかった。そんな時、今でも懇意にしているてもよい自由形と背泳ぎを専門とする。
 県の規定により坂井田さんは2017年秋田大会以降、全大会出場を果たしている。優勝含め、成績は常に上位。「一番印象的だったのは、個人背泳ぎで優勝した18年富山大会」と坂井田さん。「背泳ぎは絶対に、自先輩からの誘いで剣道を始めた。
 体格にも恵まれ、中学〜高校は県大会で上位に入る実力だった塚本さん。東京の大学に進学すると、そこは強者が集う場。思うように結果が出ない中で、上段との出会いが転機になった。

真の上段を取り戻す

 上段構えが廃れかけた時代があった。連盟がルールを改正し、上段の構えに対しては「突き」の有効範囲を広げることに。17年後にルールが戻されるまでの間、不利になった上段使いは一気に減ったそうだ。
 そんな不遇の時代も乗り越え、上段の構えを貫いた塚本さん。「ルール改正の影響で、高校生や大学生へ指導できる人もかなり少なくなった。上段は自分を生かしてくれた戦法。今の若い人達にぜひ伝えていきたい。剣道を続けられた恩返しだと思っている」。ねんりんピックはその目標を叶える最適な場だと捉える。「年齢的にも、最後のチャンスになる」。
 ねんりんピックは2度目の出場。2016年長崎大会以来となる。最初、20年に地元・岐阜で開催すると聞いた時は心が躍った。子どもたちへの指導を行う傍ら、自らの強化練習にも励んだ。ところがコロナで延期・中止に。5年越し、ようやく念願が叶う日が近づいてきた。 「結果的に、足かけ10年、ねんりんピックのために稽古を続けてきた。岐阜でなければとっくにやめていたかもしれない」。団体戦では大将を務める。「地元開催。優勝が絶対条件」と自らプレッシャーをかける。
 趣味は釣り。夏場は毎週、御嶽山の渓流でイワナやアマゴ釣りを楽しむ。昔、ラグビーで左足を骨折し、蹲踞(そんきょ)や正座ができなくなった。リハビリ目的で山・谷歩きに出かけたのが趣味に高じた。
 陶器の製造が盛んな土岐市で、業務用和食器メーカー「東産工業所」を経営。30数人の社員を抱える。24時間・36日稼働の大型窯で焼く製品は数百種類。頑丈さが強みで、主に料亭やホテルで使用されている。
 昔は湖の底だった土地。原料に優れたきめの細かい泥が採取できるそうだ。塚本さん自身も陶芸を嗜む。

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