連載《プリズム》

ケアマネジャーは走った

ケアマネジャーは走った

 仙台市が昨年11月に行った高齢者実態調査において「災害時の安否確認」という設問を設けた。市民一般と要介護認定者それぞれ5000人に「地震などの災害が起きた場合、だれに安否確認をしてもらうのがよいと思うか」を複数回答可で尋ねた。(プリズム2011年10月)

 最も多い答えは「家族や親戚」で、一般、要介護者とも8割を超えたのは当然といえるだろう。ところが2番目に多い答えが一般と要介護者では大きく違っていた。一般が選んだのは「近所の人」(47%)だった。これに対して要介護者は、「ケアマネジャー、地域包括支援センター職員、ホームヘルパー」(52%)を選び、「近所の人」は25%で、市民一般で「ケアマネジャー等」を選んだのは11%に止まり、要介護者が選んだ割合(52%)に比べて、およそ5分の1にすぎなかった。認知度や必要度の差が表れている。

 また医療職に対しては、要介護者は「かかりつけ医や看護師」を25%の人が選んだ。市民一般には選択肢の表現を変えて「病院や診療所の医師、看護師」としたが、これは8%に止まった。医療職に対する信頼感と災害時に頼りになる存在とは違うということか。

 東日本大震災を見越したかのようなこの設問。回答結果の通り、被災地のケアマネジャーは自らも被災者でありながら、3月11日の震災当日から利用者の安否確認に走り回った。カセットコンロでご飯を炊いて、おにぎりをつくり、利用者宅を回る。ガソリンがなく車が使えず、自転車に乗ったり、歩いたり。ケアマネジャーの顔を見るなり、安堵感から泣き出す人もあったという。先の固い作業靴に履き替えて、家の中にいる利用者の了解を求めて、壊れた玄関の戸を押し破って安否確認をしたという男性のケアマネジャーもいる。彼は不足した紙おむつを確保しようと、亡くなった人の家を回りワゴン車いっぱい集めて、必要な人に届けている。自動車のバッテリーで携帯電話を充電して連絡を取り合うケアマネジャーたちもいた。親身になって支えられているという安心感は、在宅介護に悩み、疲れ果てた本人や家族の心身を癒す。

(シルバー産業新聞2011年10月10日号)

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