連載《プリズム》

施設再建まで仮設で働く

施設再建まで仮設で働く

 岩手県釜石市の鵜住居(うのすまい)地区にある養護老人ホーム「五葉寮」の移転が難しくなっている。津波は高台にある施設まで達し、49人の利用者は職員とともに裏の山に逃れた。いま利用者は県内の養護老人ホームに分散移住している。10月には花巻温泉に皆が集まり、久しぶりの再会を喜んだ。(プリズム2012年1月)

 釜石市の復興プランが出された。流失を逃れた五葉寮のある高台は、防潮堤などを整備して、まちのエリアとして再興される計画だ。

 復興資金によってより高い地域へ移転し新築して再出発をめざそうとする法人の案の実現は厳しくなった。いま釜石市と協議中だが、利用者や職員のことを考えると結論を急がなければならない。施設職員は仮設住宅サポートセンターなどの在宅サービスに従事している。仮設住宅では徐々にコミュニティも生まれ、年越しのお餅つきにはたくさんの人が参加したという。

 復興対策本部の掌握では、東日本大震災の避難者は47都道府県に広がり、33万5千人。このうち8万人を超える人たちが仮設住宅で暮らす。介護などのサポート拠点のある仮設住宅は、岩手、宮城、福島の3県に約80カ所あり、来年初めにかけて計101カ所の設置が計画されている。

 仮設住宅のサポート拠点は社会福祉協議会、医療法人、株式会社、社会福祉法人、NPO法人、市町村など多様な運営主体によって担われている。提供されるサービスは拠点ごとに様々で、心の相談窓口や地域交流センター、学童保育、子どもの一時預かり保育、外出支援、訪問理容などの機能から、介護保険では居宅介護支援、通所介護、訪問介護、訪問看護、訪問入浴介護、小規模多機能型居宅介護など幅広い。

 岩手県釜石市の平田地区の仮設では、地域の医療機関によって診療所も開かれている。サポートセンターが諸機能をもつのは、多様な支援が必要な人々が仮設住宅で生活している証拠である。仮設住宅と介護サービスが一体化することで、支援が必要な人々の生活が守られている。

 五葉寮の再興の方向性が決まり、利用者と職員が戻って、施設に灯りがともる日が待ち遠しい。

 【写真】「五葉寮」の外観。津波の直撃を免れたが施設は使用不能となる(本紙撮影)

(シルバー産業新聞2012年1月10日号)

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