連載《プリズム》

要援護者名簿

要援護者名簿

 東日本大震災から1年。避難の要援護者、支援者双方を飲み込んだ3.11の巨大津波や、広範な地域に撒き散らされた福島原発の放射性物質は、リスクマネジメントの域を超えていた。原発事故は、東電や国からの迅速で正確な情報がない中で、さらなる最悪な事態さえを引き起こっていたかも知れないことがその後分かっている。(プリズム2012年3月)

 05年3月に国がまとめた「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」がある。翌年には改訂も出た。それぞれの地域において、高齢者や障がい者など避難に支援が必要な人々を特定し、一人ひとりを誰がどこに避難させるのかを定める「避難支援プラン」を各市町村において策定することが、災害時要援護者対策の基本とされている。要援護者情報の収集や共有が何よりの課題だが、福祉目的で市町村が入手した個人情報を、本人の同意を得ずに避難支援のために利用することは、「明らかに本人の利益になるとき」に該当するという。関係者の守秘義務の仕組みを作り、積極的に支援者へ情報提供を図ることが望まれるとした。

 盛岡市への取材では、対象となる要援護者2万3732人のうち、49%に当たる1万1582人が要援護者名簿に登録。今年1月末時点の人数だが、昨年に比べて1%程度だが増えた。しかし障がい者の登録は進んでいない。残念ながら、多くの人々の努力にかかわらず、障がいをもつ人たちにとって、日本の社会が生きにくいことを表しているのだろう。

 本欄で紹介した特養「マリンホーム赤井江」(宮城県岩沼市)や軽費老人ホーム「松園ハイツ」(岩手県盛岡市)の取り組みなどにみられるように、災害マニュアルの見直しや災害訓練など日々の備えが力をもつ。備えがなければ、避難に支援が必要な人たちを救うことは困難だ。自治体レベルの避難支援プランだけではなく、そのまちやその組織で取り組む。介護保険事業者の役割は大きい。在宅の利用者や家族はケアマネジャーや介護看護職の方々を頼りにしている。被災地の1日も早い復旧復興に向けた社会全体での取り組みとともに、必ず発生する将来の災害に対するしっかりとした備えがなければならない。

(シルバー産業新聞2012年3月10日号)

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