生き活きケア

生き活きケア(90)老健「永寿ケアセンター」(大阪市)

 アセスメント方式のひとつであるインターライを活用して、利用者ニーズを把握した個別ケアを実践する老健がある。永寿福祉会(富永徳吉理事長)の「永寿ケアセンター」(大阪市)。6年前から導入を検討し、昨年までに、同法人が運営する特養や在宅サービスとともに、ほぼ利用者全員のインターライに基づくケアプラン作成が終わった。歩行支援ロボットHALも導入する。

インターライ活用で根拠をもった個別対応 多職種で考え合うアセスメント

 アセスメント方式のひとつであるインターライを活用して、利用者ニーズを把握した個別ケアを実践する老健がある。永寿福祉会(富永徳吉理事長)の「永寿ケアセンター」(大阪市)。6年前から導入を検討し、昨年までに、同法人が運営する特養や在宅サービスとともに、ほぼ利用者全員のインターライに基づくケアプラン作成が終わった。歩行支援ロボットHALも導入する。

アセスメント手法の見直し

 「永寿ケアセンター」は、大阪市南部で高齢者介護と知的障害支援を展開する永寿福祉会が設立した利用定員100人の老健施設。1999年5月に開設され、2012年改定で創設された在宅強化型老健として、在宅復帰率(50%超)や中重度者(要介護4、5=35%以上)などの要件をクリアしている。

 同老健が、アセスメント手法としてインターライ方式の導入を検討したのは、6年前。「利用者から出発し根拠のある個別ケアを追求する」という同法人の理念を実現するためには、利用者ニーズをしっかり探ることのできるアセスメント手法の導入が欠かせないと考えられたためだ。98年、介護保険の2年前に、個別支援計画の策定が求められるようになると分かり、同法人でインターライの基になったMDS方式の導入を行った。しかし実際に介護保険が始まると、所属する団体がすすめる「3団体方式」(包括的自立支援プログラム)が採用され、使われた。それが、6年前にMDSへの回帰が求められるようになる。

 「一人ひとりの利用者に立脚したケアを実施するためには、根拠に基づいたケアプランを立てる必要があります。MDSやその統合版であるインターライでは、250項目から300項目もの調査項目(トリガー)があり、当法人では多職種が協力して利用者に関わって調査項目を埋めていくのですが、このアセスメントを通じて、利用者ニーズの把握ができるようになりました」と、同法人の特養の施設長も務める石井享宏企画部長。

本人がやってみようと思えること

 MDSは、90年代にアメリカのナーシングホームでケアの向上をめざして開発されたアセスメント方式で、日本へも導入された。アセスメント表とケア指針とを基本に、利用者ニーズを把握し、自立の実現の可能性が高い生活動作を探りながらケアプランを作成していく。近年に、MDS方式は居宅、施設、高齢者住宅の各バージョンが統一して、インターライ方式に名称を変更した。

 3団体方式でも、MDSで学んだ経験を持ち、何を検討しなければならないのかが分かっているスタッフであれば、ケアプランを作ることはできる。しかし、アセスメント力の備わっていないスタッフや新人では、目の前の現象への対応に終始し、真の利用者ニーズにそったケアの提供に不安がでてくる。

 法人の川崎哲也総務部長は、「MDSを使うことで、スタッフ一人ひとりにケアプラン作りができる力を養成することができたのです」と話す。

 アセスメントの結果として、ADLの自立できる可能性のある項目が上がってくる。同老健では、本人がやりたいと思っていることは何か。阻害している要因は何か。アセスメント結果を一つずつ戻って考えていくことで、より自立の可能性の高い項目を浮かび上がせる。そこで特養などで実践されている竹内孝仁理論などを使って、本人がやってみようと思えるようなケアを、みんなで一所懸命考えるのだと言う。

 「それまでは、極端に言えば、ケアマネジャーが立てたケアプランの記述が出発点になり、ケアスタッフが個別支援計画を立てていた。たとえば、歩けない人がいます。その原因をしっかりと問わないままに、歩けない人にどのように生活してもらおうかを考えていたというイメージです。それを、MDSというツールを使って、多職種が関わって歩けない原因をアセスメントして、歩けるようになるためにはどうすればよいのかを検討するようになってきたのです」(石井部長)

生活のひとつでも自立してほしい

 アセスメントは、利用者ニーズを知り自立支援となる最適なケアに到達するためのプロセスになっている。一人にかかるアセスメント期間は、調査項目に応じて多職種がアセスメントに参加するため、カンファレンスも入れて、10日~1カ月程度を要する。アセスメントの状況は、タブレット端末で入力する。入力者や時期によってアセスメント結果が異なった時には、カンファレンスですり合わせやあらためて動作確認などを行って検討する。4年前にMDSへの切り替えが始まり、3年前にMDSからインターライへの過渡期も乗り越えて、昨年すべての利用者で対応した。

 介護現場では面倒だという声も上がったが、各施設でリーダーが核となり、「生活の一つでも自立してほしい」との思いを形にしていった。

 認知症の人に大声を出す周辺症状があった。インターライによって、大声は本人の訴えであり、コミュニケーションの表明だったと分かり、カンファレンスでその人の状態としてふさわしいケアを検討した。集団的対応に陥りがちな施設ケアを、この法人は多職種によるアセスメントの強化によって乗り越えようとしている。

HAL導入

 永寿ケアセンターは3年半前からリハビリで歩行支援ロボットHALを活用している。開発をしたサイバーダイン社からのレンタルだ。脚を動かそうとする脳からの微弱な電気信号を感知して、脚を振り上げる。両下肢タイプと片下肢タイプを各1台レンタルした。いまHALの利用者は、老健利用者2人とデイケア利用者3人。ケアスタッフのほぼ全員がHALの講習を受けて運行許可を得ている。運用データはすべて機器の改善のために、サイバーダイン社に送られている。

 写真は、HALを活用する89歳の女性で、2週間前から週1~2回のペースで歩行訓練を行っている。免下式歩行器で体重を保持してHALで歩く。要介護4。この訓練を行うようになって、笑顔が見られるようになり、食欲もでてきた。自立した生活の実現をめざす同法人にとって、歩こうとする思いを実現してくれるHALの導入は当然の帰結だったと言う。
(シルバー産業新聞2014年11月10日号)

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