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やまゆり園再生基本構想を考える(5)/中山清司(連載164)

やまゆり園再生基本構想を考える(5)/中山清司(連載164)

 「相模原障害者施設殺傷事件」の3年前、千葉県でも障害者施設で大きな事件があった。2013 年11月に起こった「県立袖ケ浦福祉センター暴行死事件」だ。

 発端は当時19歳だった施設入所者が支援スタッフに腹部を蹴られ、それが原因で死亡した。その後の県や警察の調査によると、同センターにある2つの施設「養育園」と「更生園」で施設内虐待が常態化しており、10数名の職員が数年にわたって関与していたという。

 直近の話だが、この2つの県立施設について、千葉県は全入所者を民間施設で分散して受け入れることを条件に、23年3月末までに廃止する方針を表明した。

 津久井やまゆり園もそうだが袖ケ浦福祉センターでも、このような事件を契機に施設改革の話が立ちあがった。「検証委員会」が設置され、施設入所者の保護者に対して転所に関するアンケート調査をおこなった。

 その結果、「回答した98人の保護者のうち81%が『入所継続を希望』としているが、記述欄には『やっと入れてもらった。親も年を取ったので、このまま見てほしい』『受け入れ先があると思えない』といった意見が見られる」とのことだった(「福祉新聞」14 年8月25日)。

 津久井やまゆり園の再生基本構想においても、事件後早い時期に家族会にヒアリングが行われた(17年2月)。そこでの主な意見としては「グループホームで今と同じ生活が保障できるなら、移行できる方はすれば良い」「地域生活が難しく、ようやく津久井やまゆり園に入所できた。事件後、知事が建替えを表明してくれて非常に心強かった」

 さらに、「親として、新しい施設が完成するまで我慢と思っていたが、先送りされた感じがして不安だ」「医療的ケアが必要な方や車椅子を利用している方がグループホームで生活するのは難しいのではないか。施設でないと生活できない人がいることを理解してほしい」「建替えを信じて待っている。何とか建替えしてくれることを望む」といったものだった。

  ちなみに津久井やまゆり園の新しい施設は、今年1月に新築・改修工事が入ったところだ。

 重度知的障害があり医療的ケアが必要な方、また行動障害の激しい方の場合、家族との在宅生活が難しくなり施設入所を求めるケースは、実際かなり多い。筆者の身近でも、ある入所施設では「入所待機者が500人ぐらいいる」という。しかし、国の基本方針は、入所施設を新設しない、今いる施設入所者もグループホームなどを使って地域移行を進めるというもので、このギャップが埋まることはない。

 奇しくも、津久井やまゆり園と袖ケ浦福祉センターは、どちらも1960年代のほぼ同時期に開設された。現在、入所者の平均年齢は40歳代であろうか。そうすると入所者の親は60歳~70歳代になられている。中には既に他界されている方もおられるだろう。

 「やっと入れてもらった。親も年を取ったので、このまま見てほしい」という施設入所されている子どもをもつ親御さんの声は、私も数多く見聞きする。また、これから施設入所やグループホーム利用を考えている親御さんからは、「どうやったら施設やグループホームに入ることができるでしょうか」という相談が非常に多い。

 多くの高齢の親が、行動障害の激しい自閉症の成人と在宅生活を送っている。「地域で暮らす」と言えば聞こえはいいが、実際のところ家族は孤立無援の状況である。ガイドヘルプやショートステイといった在宅福祉サービスもあるにはあるが、「強度行動障害に対応できるヘルパーがいない」「月に1泊ショートステイがとれるかどうか」というのが実情だ。

 急に怒って物を壊す、一睡もしない日が何日も続く、異物を食べてしまうなど、強度行動障害の対応に疲弊した家族が施設入所に期待を寄せるのは、ある意味、もっともなことだと筆者は捉えている。

NPO法人 自閉症eスタイルジャパン 理事長 中山清司

(シルバー産業新聞2020年12月10日号)

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