現場最前線の今

必要に合わせて考える暮らしの場 「やまゆり園再生基本構想」を考える③/中山清司(連載162)

必要に合わせて考える暮らしの場 「やまゆり園再生基本構想」を考える③/中山清司(連載162)

 2016年7月に起こった「相模原障害者施設殺傷事件」からすで4年が経った。この間、施設をどう再生すればいいか、多くの議論・検討がなされ、17年10月に神奈川県は「津久井やまゆり園再生基本構想」を発表する(前回「8月」と記載しましたが、「10月」に訂正します)。今回は、この基本構想を読み解きながら、重度の知的障がいのある人たちの暮らしの場を考えていく。

入所施設かグループホームかという二者択一ではなく

 1960年に精神薄弱者福祉法が制定され、そこに「精神薄弱者更生施設」(現在の「施設入所支援」)が位置付けられた。津久井やまゆり園がそうであるように、重度知的障がいの人たちの暮らしの場として入所施設がここから整備されていく。

 筆者が訪問したいくつかの入所施設でも、戦後すぐに戦災孤児などで入所し、今も施設で暮らしている知的障がいの高齢者に出会うことがある。中には名前も生年月日も不明な方もおられたりするが、今はとても穏やかに過ごされていることに安心したりする。

 このように知的障害者入所施設は、様々な事情で在宅生活が難しくなった知的障がい者の暮らしの場であり、強度行動障害を呈する人たちへの対応の最前線にもなっている。知的障害者施設協会の18年度実態調査によると、「施設入所支援は全国で約1250カ所、利用者総数6万6976人のうち、在籍期間10年未満の利用者は1万9181人(28.6%)。一方、10年以上の利用者は4万7388人(70.8%)」といい、長期滞留化・高齢化が問題になっている。

 一方でグループホームは、80年代に、国際障害者年やノーマライゼーション思想の浸透を受けて、施設入所ではない地域での暮らしを標ぼうし、全国各地で先駆的に取り組まれていく。筆者が個人的にかかわりのある横浜市にあるNPO法人では、84年に脳性麻痺の人たちのグループホームの運営を開始し、その後、自閉症や知的障がいの人たちのグループホームを立ち上げている。各地のグループホームの実践は、その後、障害者総合支援法における「共同生活援助」に整理され現在に至る。厚生労働省の最近の調査によると、全国で9万人以上の人がこのサービスを利用している。

 「津久井やまゆり園再生基本構想」でも、オールドスタイルの入所施設を再建するか、グループホームという比較的新しい考え方や実践を取り入れるべきかという論争は、このような歴史的変遷を振り返ると必然であったと筆者は思う。津久井やまゆり園再生基本構想策定に関する部会(第6回)の審議で、部会長の以下のような発言が残っている。

 「グループホームが最終的な居住の場ではないということです。グループホームを選択する方もいますし、自宅、アパートを選択するという方もいれば、もう少し大人数で暮らしたいという方もいると思います。そういったサービスの提供ができるような準備をすることが前提でありながらも、グループホームで不安定になったとき、入所施設等を利用して少し落ち着いて、またグループホームに戻るとか、一人の人生を長い期間でみると色々なことがあると思います」。

 入所施設かグループホームかという二者択一ではなく、入所施設であれグループホームであれ、その人にとって必要なサービスを創っていきたいという極めて現実的な捉え方をしている。そのうえで敢えて言うが、入所施設はいつの時代も、知的障がいの人たちとその家族にとってセーフティーネット(最後の砦)を期待され、実際そうあり続けていることを筆者は強調しておきたい。

 NPO法人 自閉症eスタイルジャパン 理事長 中山清司

(シルバー産業新聞2020年10月10日号)

関連する記事