在宅栄養ケアのすすめ

地域栄養のレベルアップ(2)/中村育子(連載64)

地域栄養のレベルアップ(2)/中村育子(連載64)

 前号では、高齢者が抱える食・栄養の問題として①栄養が偏っている②口腔内清潔・嚥下機能③生活習慣病などの疾病(要医療)④孤食――の4つを挙げました。このうち①に関しては、われわれもそうですが、多くの人が栄養の偏りに「気づかない」または「気にしていない」のが現状ではないでしょうか。

栄養バランスに気づく

 高齢者のうち、約8割は介護を受けていない元気な人達です。噛む・飲み込むに特に不自由がなく、大きな病気にかからなければ、食事内容はそう変えることはありません。また、少しむせたとしても、本人も周りも「高齢者だからそういうことも普通にある」と看過してしまうでしょう。つまり、身体が元気な人ほど、栄養バランスを見る機会がどんどん失われているわけです。こうした人たちが病気や要介護になる前に、どう栄養士が接点を作っていくかが、地域づくりのテーマの一つだと言えます。

 先日、足立区内で、家族に要介護者がいる人向けの栄養講習会を行いました。好きな物をいつまでも口から食べ続けてもらいたい、しっかり栄養をとって元気になってもらいたいという強い気持ちが、皆さんから伝わってきました。

 講習会では、参加者自身の普段の食事についても書いてもらいました。すると一転、あまり自分の栄養については気にかけてない様子がうかがえました。例として出てきたのが「ご飯、味噌汁、漬物(佃煮)」、「野菜炒めとビール」といった内容。この2例に共通しているのは、たんぱく質が抜け落ちているということです。

 たんぱく質は身体の15~20%を構成し、ご存じの通り筋肉や骨、臓器等に使われる大切な栄養素で、肉や魚、卵、大豆等に多く含まれます。これが要介護になってしまうと、噛む力の低下や食欲の減退で摂りにくくなり、低栄養が一気に進行してしまいます。

 また、「日本人の食事摂取基準」によると、男性の1日のエネルギー必要量は50~69歳の2450kcalに対し、70歳以上は2200kcalと10%程度少なくなります。しかし、たんぱく質については成人男性共通で50gと、年齢による差がありません。同じ摂取量を維持することが、より重要となります。

ひと工夫でたんぱく確保

 日頃から意識さえすれば、たんぱく質の摂取はそう難しくありません。今あるメニューのアレンジ版だと捉えれば、より手間も少なく済むので自宅で介護をしている人でも無理なく実践することができると思います。

 例えば、野菜炒めにはウィンナーやそら豆(本記事、上部の写真)、味噌汁には鮭などの魚を加える(下の写真)といったシンプルな方法です。今はスーパーやコンビニで、1人分だけの魚の切り身を買うこともできます。

 大切なのは「今の食事で大丈夫かな?」と少し立ち止まってみることです。そして、介護予防教室や病院・薬局の栄養相談等を通じて、食事内容のチェックを一度受けてみてはいかがでしょうか。
 中村育子(福岡クリニック)

(シルバー産業新聞2019年5月10日号)

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