在宅栄養ケアのすすめ
地域栄養のレベルアップ(4)/中村育子(連載66)
糖尿病や高血圧といった、いわゆる生活習慣病は低栄養と密接な関係があります。後期高齢者の場合、糖尿病から糖尿病性腎症、高血圧といったふうに生活習慣病が重症化・複合化しやすくなります。一般的に糖尿病であればエネルギー、腎臓病はたんぱく質、高血圧は塩分を制限していく必要がありますので、これが重複すると低栄養のリスクが高くなります。
生活習慣病へ早期介入
国は「健康寿命を男女ともに3年ずつ延伸する」との目標を立て、その対策の一つに生活習慣病の重症化予防を掲げていますが、その際に「低栄養予防」の視点が抜け落ちてはいけません。普段、入院患者または施設入所者の献立・食事管理を行っている管理栄養士が、地域に出て、低栄養予防へどう専門的に関わっていくかは、大きな課題となっています。
ちなみに、私が所属する福岡クリニックがある東京都足立区は、23区で最も糖尿病の医療費が高く、健康寿命が都平均より2歳短いというデータがあります。大いに改善の余地があるでしょう。区では(血糖値の急上昇を防ぐ効果がある)野菜の摂取を促すべく「あだち ベジタベライフ」をキャッチコピーに、野菜をふんだんに使ったメニューを提供する協力店の拡大や、小中学校等の給食に「野菜の日」を設けるなどの環境づくりに取り組んでいます。
ちなみに、私が所属する福岡クリニックがある東京都足立区は、23区で最も糖尿病の医療費が高く、健康寿命が都平均より2歳短いというデータがあります。大いに改善の余地があるでしょう。区では(血糖値の急上昇を防ぐ効果がある)野菜の摂取を促すべく「あだち ベジタベライフ」をキャッチコピーに、野菜をふんだんに使ったメニューを提供する協力店の拡大や、小中学校等の給食に「野菜の日」を設けるなどの環境づくりに取り組んでいます。
まずは外来受診を
健康診断では、血液検査から脂質異常症や血糖、貧血、肝機能などは概ね知ることができますので、「疾患」である生活習慣病は、低栄養や口腔機能低下に比べ、まだ早期に医療が介入しやすい点はメリットです。ただ、「身体は元気だから」と放置しないよう、生活習慣病またはそのリスク有りとされた人は、ぜひ一度、医療機関の外来を受診してもらいたいです。
その時には、「生活習慣病外来」や「糖尿病外来」、さらには「栄養外来」などを掲げる医療機関をお薦めします。医療機関側も、栄養外来は管理栄養士をうまく活用する一つの手段となります。
私は普段、在宅訪問がメインですが、最近、福岡クリニックの栄養外来に少し入るようになりました。まだ月に数件ですが、患者は糖尿病や高度肥満症、高血圧、脂質異常症など、ほぼ全員が生活習慣病をもっています。普段の食事の聞き取りを行うと、脂質異常症で中性脂肪が多い人、糖尿病の人などは、やはり甘い物やお酒に食生活が偏っています。
その時には、「生活習慣病外来」や「糖尿病外来」、さらには「栄養外来」などを掲げる医療機関をお薦めします。医療機関側も、栄養外来は管理栄養士をうまく活用する一つの手段となります。
私は普段、在宅訪問がメインですが、最近、福岡クリニックの栄養外来に少し入るようになりました。まだ月に数件ですが、患者は糖尿病や高度肥満症、高血圧、脂質異常症など、ほぼ全員が生活習慣病をもっています。普段の食事の聞き取りを行うと、脂質異常症で中性脂肪が多い人、糖尿病の人などは、やはり甘い物やお酒に食生活が偏っています。
生活を見て、 地域資源へ
外来での食事・栄養指導のポイントは、在宅と同じように、いかに生活全体を見るかです。例えば、高血圧と診断された人の指導内容は「1日の塩分摂取量を6g未満に制限する」が一般的です。しかし、普段15g摂取している人と、8g摂取している人では、ハードルの高さがまるで違います。決して、一律の栄養指導になってはいけません。
この場合はひとまず、調味料を「減塩タイプ」にすることや、1日3回の味噌汁を2回に減らすことを提案します。本人が納得することが第一で、少しだけ食生活に変化をつける。これが無理なく続けるコツです。15gを10gに減らすだけでも大成功です。
外来では食事内容だけではなく、出身(食文化)や同居家族の有無も聞いておくべきです。生活習慣病の本人が男性、その奥さんが食事を作っている場合などは、奥さんも外来に同行してもらったほうがよいでしょう。
ただし、在宅とは違って外来は1人あたりの時間も30分程度と短く、またその場で調理指導を実演することもできません。この部分の補完策としては、病態食に対応できる配食サービスの利用や、介護予防の料理教室への参加などが有効です。栄養外来を行う医療機関は、こうした地域資源を把握し連携していくことも、地域で求められる役割です。
その連携先に管理栄養士が居れば尚良し、です。体操教室等の通いの場に顔を出すだけでも構いません。これを複数医療機関・薬局が協力し合えば、「常に顔の見える専門家」として管理栄養士が認識されるのではないでしょうか。
中村育子(福岡クリニック)
(シルバー産業新聞2019年7月10日号)
この場合はひとまず、調味料を「減塩タイプ」にすることや、1日3回の味噌汁を2回に減らすことを提案します。本人が納得することが第一で、少しだけ食生活に変化をつける。これが無理なく続けるコツです。15gを10gに減らすだけでも大成功です。
外来では食事内容だけではなく、出身(食文化)や同居家族の有無も聞いておくべきです。生活習慣病の本人が男性、その奥さんが食事を作っている場合などは、奥さんも外来に同行してもらったほうがよいでしょう。
ただし、在宅とは違って外来は1人あたりの時間も30分程度と短く、またその場で調理指導を実演することもできません。この部分の補完策としては、病態食に対応できる配食サービスの利用や、介護予防の料理教室への参加などが有効です。栄養外来を行う医療機関は、こうした地域資源を把握し連携していくことも、地域で求められる役割です。
その連携先に管理栄養士が居れば尚良し、です。体操教室等の通いの場に顔を出すだけでも構いません。これを複数医療機関・薬局が協力し合えば、「常に顔の見える専門家」として管理栄養士が認識されるのではないでしょうか。
中村育子(福岡クリニック)
(シルバー産業新聞2019年7月10日号)