在宅栄養ケアのすすめ
地域栄養のレベルアップ(5)/中村育子(連載67)
これまで「食事の偏り」「口腔機能低下」「生活習慣病」と、高齢者の栄養・食事に関連する問題と対応を話してきましたが、最後に取りあげるのが「孤食」です。
「集まる+栄養」で孤食予防
農林水産省の「食育白書」(2017年版)によると、1日全ての食事を1人でとる日が、週の半分以上を占める人の割合は15.3%で、11年と比べて5ポイント上昇しています。一方、孤食がほとんどない人ほど主食・主菜・副菜のバランス良い傾向も出ており、孤食は低栄養リスクの要因の一つであり、対象となる人は今後増えていくと考えられます。
孤食への対応は、専門職が定期的に介入する在宅患者や要介護者よりも、「放置されやすい」元気高齢者へいかに早期に関わるかが重要です。本人が何となく感じている体重減少や食欲低下に気づくことで、低栄養予防につながるでしょう。そのためには①地域住民が集まる場を形成する②専門職が関わり、食事・栄養に関するプログラム、要素を付加する――の順で地域資源を醸成していくことがポイントです。
孤食への対応は、専門職が定期的に介入する在宅患者や要介護者よりも、「放置されやすい」元気高齢者へいかに早期に関わるかが重要です。本人が何となく感じている体重減少や食欲低下に気づくことで、低栄養予防につながるでしょう。そのためには①地域住民が集まる場を形成する②専門職が関わり、食事・栄養に関するプログラム、要素を付加する――の順で地域資源を醸成していくことがポイントです。
地域の通いの場を活用
福岡クリニックがある東京都足立区では、高齢者の孤食防止や居場所づくりとして、「住区de団らん」「男の料理教室」といった食事に関連した取組みを行っています。主に地域包括支援センターや住区センター、地域のボランティア、町会などが関わっています。
住区de団らんは、区民交流の場として設置している「住区センター」に高齢者が自分の食事を持参して集まり、レクリエーションなどを楽しみながら一緒に食事をする場です。自分で作ってくる人もいれば、お弁当を注文する人、出前を頼む人もいます(食品衛生上、住区センターでの調理・食事提供は困難とのこと)。
私も一度見学しましたが、カラオケあり、ゲームありと皆さんとても楽しい時間を過ごされていました。ただ、食事内容をチェックすると、野菜中心でたんぱく質が不足している人など、けっこう栄養バランスが偏っています。こうした場にもし管理栄養士が居れば、ちょっとした食事内容の聞き取りなどが行え、無理のない範囲で本人の栄養の意識を高められるのではないでしょうか。
また、「男の料理教室」は地域包括が主催する高齢者向けのイベントで、内容は名前の通りです。講師も男性です。私が普段、介護予防教室として実施する料理教室は7~8割が女性なので、ずいぶん雰囲気が違いました。あまり調理手順の細かいことは教えず、材料と完成形を見せて「はい、どうぞ!」と、かなり自由度の高い場だという印象でした。
食事がメインでなくても、例えば認知症カフェで家族向けの時短レシピ紹介や、体操教室で運動×食事に関するミニ講話といった要素を盛り込むといった方法もあります。教室のマンネリ化を回避できるだけでなく、管理栄養士等の専門職が地域住民とより近い距離で活躍できる場にもなることでしょう。
こういう話をすると、大概の反応は「本業が忙しくて時間を割けない」です。確かにそうですが、大切なのは、同職種や他職種が少しずつ地域貢献の時間を出し合うことです。これらを束ねる職能団体や行政の役割が、ますます重要になります。
中村育子(福岡クリニック)
(シルバー産業新聞2019年8月10日号)
住区de団らんは、区民交流の場として設置している「住区センター」に高齢者が自分の食事を持参して集まり、レクリエーションなどを楽しみながら一緒に食事をする場です。自分で作ってくる人もいれば、お弁当を注文する人、出前を頼む人もいます(食品衛生上、住区センターでの調理・食事提供は困難とのこと)。
私も一度見学しましたが、カラオケあり、ゲームありと皆さんとても楽しい時間を過ごされていました。ただ、食事内容をチェックすると、野菜中心でたんぱく質が不足している人など、けっこう栄養バランスが偏っています。こうした場にもし管理栄養士が居れば、ちょっとした食事内容の聞き取りなどが行え、無理のない範囲で本人の栄養の意識を高められるのではないでしょうか。
また、「男の料理教室」は地域包括が主催する高齢者向けのイベントで、内容は名前の通りです。講師も男性です。私が普段、介護予防教室として実施する料理教室は7~8割が女性なので、ずいぶん雰囲気が違いました。あまり調理手順の細かいことは教えず、材料と完成形を見せて「はい、どうぞ!」と、かなり自由度の高い場だという印象でした。
食事がメインでなくても、例えば認知症カフェで家族向けの時短レシピ紹介や、体操教室で運動×食事に関するミニ講話といった要素を盛り込むといった方法もあります。教室のマンネリ化を回避できるだけでなく、管理栄養士等の専門職が地域住民とより近い距離で活躍できる場にもなることでしょう。
こういう話をすると、大概の反応は「本業が忙しくて時間を割けない」です。確かにそうですが、大切なのは、同職種や他職種が少しずつ地域貢献の時間を出し合うことです。これらを束ねる職能団体や行政の役割が、ますます重要になります。
中村育子(福岡クリニック)
(シルバー産業新聞2019年8月10日号)