在宅栄養ケアのすすめ
情報は簡潔に!/中村育子(連載69)
在宅訪問をしているケアマネジャーさんやヘルパーさんは、他事業所の担当者と普段どう連絡をやり取りしているでしょうか?
同じ事業所(法人)から複数のサービスを提供している場合は、事業所の中で情報共有の時間が作れるので比較的簡単です。また、業務ソフトを導入すれば、顔を合わせる時間がなくても、利用者の状態などを共有することも可能でしょう。
一方、課題となるのが事業所「間」連携です。在宅介護では、多職種が集まる場がサービス担当者会議や退院時カンファレンスくらいしかありません。利用者によっては、医療・介護系だけでなく、生活保護のケースワーカーや民生委員など多様な職種が関わることもあり、全員が揃ってケアや支援の進捗確認や、方針を話し合うのはなかなか難しいのが現実です。
例えば、管理栄養士の訪問は月1~2回が限度です。その間に何を食べたか、教えた通りの食事が準備できているか、体調や生活全体の様子など、あらゆる情報から低栄養リスクを察知し、早期に対処したいと考えます。
家族が元気ならば、こうした人達が「情報のハブ役」になってもらえます。しかし、今は独居、老々世帯が増加し家族介護力が低下しています。主介護者が若くても、認知症やがん、難聴などのケースも普通にあります。本人・家族からの聞き取りだけでなく、他職種のケア情報も概ね把握しておく必要があるでしょう。
一方、課題となるのが事業所「間」連携です。在宅介護では、多職種が集まる場がサービス担当者会議や退院時カンファレンスくらいしかありません。利用者によっては、医療・介護系だけでなく、生活保護のケースワーカーや民生委員など多様な職種が関わることもあり、全員が揃ってケアや支援の進捗確認や、方針を話し合うのはなかなか難しいのが現実です。
例えば、管理栄養士の訪問は月1~2回が限度です。その間に何を食べたか、教えた通りの食事が準備できているか、体調や生活全体の様子など、あらゆる情報から低栄養リスクを察知し、早期に対処したいと考えます。
家族が元気ならば、こうした人達が「情報のハブ役」になってもらえます。しかし、今は独居、老々世帯が増加し家族介護力が低下しています。主介護者が若くても、認知症やがん、難聴などのケースも普通にあります。本人・家族からの聞き取りだけでなく、他職種のケア情報も概ね把握しておく必要があるでしょう。
情報を一元化
そのためには、「情報共有ツール」を用意しておくことが大切です。現状、在宅で多く使用されているのは(極めてアナログですが)連絡ノートです。利用者宅に1冊置き、訪問日時・担当者・職種・申し送り事項などを記録します。自由記述で特段フォーマットがあるわけではありません。誰が訪問しても、その間の経過を知ることができるのがメリットです。
大事なのは、必要な情報のみを簡潔に残すことです。連絡ノートは介護記録ではありません。誰もが限られた訪問時間の中で、自身の業務をしながら読むことになります。介護記録をなぞるような内容ではなく、「誰に」「いつ」「何をしてほしい」のかを明確に伝えるようにしましょう。
前に訪問したケースでは、娘さんより、本人(お母さん)の食欲が最近落ちている、と教えてもらいました。嚥下は特に変化がなかったので話を聞くと、ずっと便秘が続いているためお腹の調子が良くないとのこと。少し水分が多めのものを摂るよう伝え、加えて週1回訪問看護を利用していたので、連絡ノートには「訪問時に摘便が必要かどうか、みてほしい」との旨を記載しました。
別のケースでは、実は歯科診療を受けていたことが一切書かれておらず、後で聞いて知ったということもありました。歯の状態、口腔内の状態と食べられるものは密接に関係しますので、こうした情報も抜け落ちてはなりません。
在宅高齢者の栄養状態を知る上で、優先度が高いと考える情報は「体重」です。自宅に体重計がある場合は訪問時に自分で測定しますが、それ以外では利用先のデイサービス等に協力してもらいます。デイの職員が連絡ノートに直接書き込むことは少ないので、ケアマネジャーを通じて教えてもらうなど、工夫します。繰り返しですが、ポイントは細かいこと、多くのことを要求せず「これだけ教えてほしい」と事前にお願いしておくことです。この関係性が連携のスタートではないでしょうか。
連携ノート以外ではSNS等の活用も一つです。訪問内容をリアルタイムで知ることができるのは利点です。ただ、在宅の場合は利用者ごとに関わる多職種が異なりますので、個人情報保護の観点からもやや馴染みにくいかもしれません。私が実際に使用しているのは有料老人ホームへの訪問栄養で、ホーム職員とのグループチャットを用いています。
また、あまり使い慣れていない人がグループ内にいると、会話に参加せず、読んでいないこともあります。「紙」と「デジタル」の使い分けには注意しましょう。
中村育子(福岡クリニック)
(シルバー産業新聞2019年10月10日号)
大事なのは、必要な情報のみを簡潔に残すことです。連絡ノートは介護記録ではありません。誰もが限られた訪問時間の中で、自身の業務をしながら読むことになります。介護記録をなぞるような内容ではなく、「誰に」「いつ」「何をしてほしい」のかを明確に伝えるようにしましょう。
前に訪問したケースでは、娘さんより、本人(お母さん)の食欲が最近落ちている、と教えてもらいました。嚥下は特に変化がなかったので話を聞くと、ずっと便秘が続いているためお腹の調子が良くないとのこと。少し水分が多めのものを摂るよう伝え、加えて週1回訪問看護を利用していたので、連絡ノートには「訪問時に摘便が必要かどうか、みてほしい」との旨を記載しました。
別のケースでは、実は歯科診療を受けていたことが一切書かれておらず、後で聞いて知ったということもありました。歯の状態、口腔内の状態と食べられるものは密接に関係しますので、こうした情報も抜け落ちてはなりません。
在宅高齢者の栄養状態を知る上で、優先度が高いと考える情報は「体重」です。自宅に体重計がある場合は訪問時に自分で測定しますが、それ以外では利用先のデイサービス等に協力してもらいます。デイの職員が連絡ノートに直接書き込むことは少ないので、ケアマネジャーを通じて教えてもらうなど、工夫します。繰り返しですが、ポイントは細かいこと、多くのことを要求せず「これだけ教えてほしい」と事前にお願いしておくことです。この関係性が連携のスタートではないでしょうか。
連携ノート以外ではSNS等の活用も一つです。訪問内容をリアルタイムで知ることができるのは利点です。ただ、在宅の場合は利用者ごとに関わる多職種が異なりますので、個人情報保護の観点からもやや馴染みにくいかもしれません。私が実際に使用しているのは有料老人ホームへの訪問栄養で、ホーム職員とのグループチャットを用いています。
また、あまり使い慣れていない人がグループ内にいると、会話に参加せず、読んでいないこともあります。「紙」と「デジタル」の使い分けには注意しましょう。
中村育子(福岡クリニック)
(シルバー産業新聞2019年10月10日号)