在宅栄養ケアのすすめ

4月、感染ピーク時の現場/中村育子(連載77)

4月、感染ピーク時の現場/中村育子(連載77)

 私が所属する医療法人社団福寿会は、入院・入所から在宅までを広くカバーしています。3月に新型コロナの感染対策室を立ち上げ、東京都が示す対策に準じ基本方針と手順を作成しました。

 職員は37.5度以上の熱がある場合、原則出勤停止。利用者が発熱した場合は訪問・通所介護、訪問リハビリや訪問栄養指導(居宅療養管理指導)は提供しないこととしています。唯一、医師の訪問診療については、腹痛や下血、骨折など他の症状がある場合、発熱があっても防護服を着用して訪問します。

 施設等は面会禁止。有料老人ホームやGHの入居者には栄養指導の利用者も多くいますが、必ず建物に入る直前に検温し、問題なければ消毒して入ります。

 もし患者・利用者の感染が判明した場合は、その人へ医療・介護を直接提供した職員は「濃厚接触者」とされ、提供時の感染対策の状況に応じてその後の就業を判断します。

 例えば、患者も提供者も「マスク無し」だった場合は、リスクが高いと判定。提供者が無症状の場合も14日間の就業制限が行われます。患者は「マスク無し」でも提供者が「マスク有り」かつ「ゴーグルまたはフェイスガード有り」の場合はリスクが低いとし、14日間は自身での健康観察を求めますが、就業制限はありません。濃厚接触者の定義についても、接触時間や場所などの詳細が決められています。

「感染疑い」どう対応するか・・・

 幸い、今時点で当法人の職員、また患者や利用者に感染者は出ていません。ただ、4月に東京の感染者数が一気に増えたときは、さすがに「いつ感染してもおかしくない」と覚悟しながらの仕事でした。感染者の半数が「経路不明」とされる中でも、電車通勤を行っているわけです。衛生材料は十分に回ってこず、マスクは1人につき週1枚でギリギリの在庫状況でした。

 当時は、感染対策を徹底している病院や、急性期病院でも院内感染を起こしていた頃です。ひとたび院内感染を起こせば、そこで働く医療従事者も現場を離れなくてはならず、ますますマンパワーが不足します。感染症病床を持っていない福寿会にも都から感染者受入れの要請が来るほど、医療現場がひっ迫しているのだと感じました。

 足立区は大学病院がないためか、感染者数のピーク時はPCR検査から結果が出るまで5日ほどかかっていました。要介護者や認知症の人は、その数日間で心身機能や栄養状態が一気に低下してしまう可能性があります。独居の場合は特に注意が必要です。

 しかし、発熱がある以上、われわれも簡単には訪問できない状況です。「症状あり、検査待ち」の人も同様です。ひとまず医師が訪問し、解熱剤を処方して少し様子をみるといった初期対応に止めざるを得ませんでした。

 また、私が訪問している患者で40代の脳性麻ひの人がいるのですが、家族にマスクを着用してもらっても、嫌がってすぐに外してしまいます。そのため、通所サービスに入れないという事態もありました。

 予定していたサービスが一定程度受けられなかった利用者へは「状態が落ちている」ことを念頭に、まずは丁寧なアセスメントを行う必要があります。

 中村育子(福岡クリニック)

(シルバー産業新聞2020年6月10日号)

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