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特養博水の郷 一斉PCR検査で15人の無症状陽性把握

特養博水の郷 一斉PCR検査で15人の無症状陽性把握

 世田谷区では、介護事業所がサービスを継続するため、職員や入居者を対象としたPCR検査(社会的検査)を実施している。新型コロナウイルス感染症の拡大や重症化を防ぎ、早期に対応するのが目的だ。昨年11月にこの社会的検査を実施した社会福祉法人大三島育徳会の特養「博水の郷」では、職員13人、入所者2人の無症状陽性者が発生。事前の感染対策により濃厚接触者はゼロ、早期対応により症状が発症した人もいなかった。陽性者発生から収束までの対応を聞いた。

濃厚接触者を出さない勤務体系や、備蓄品を見直し

 社会福祉法人大三島育徳会特養「博水の郷」では新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた2020年2月より、感染対策として職員に対して37.0度以上の発熱がある場合は出勤禁止とし、飲み会の自粛や消毒液の配布、入所者への面会制限等を行ってきた。4月には他法人に先駆けて新型コロナの対応マニュアルを作成していた。

 田中美佐施設長は「これまで徹底した感染対策に職員と共に取組んできた。世田谷区が実施する社会的検査も『陽性者はゼロ』という証明をするつもりで受けた」と話す。

 11月13日に実施した初回のPCR検査では、職員61人中3人、14日にはさらに7人が無症状の陽性との結果が出た。

 陽性者の状況を把握した段階で①陽性職員の隔離②建物内のゾーニング③施設内の消毒④利用者、家族、関連する介護事業所への連絡⑤ホームページでの報告――を実施した。

 「13日に陽性者が発生した段階で、全職員と全入所者のPCR検査を保健所から指示された。検査は16日に実施すると言われたが、再検査が必要な職員は、改めて結果が出るまで勤務できない。再検査者だけでも即日再検査するよう世田谷区に依頼し、実施してもらった」と田中施設長は話す。

 16日のPCR検査では、残りの職員65人と、全入所者97人へPCR検査を実施。職員3人と入所者2人が陽性。最終的に職員13人と入所者2人が新型コロナ陽性となったが、全員が無症状だった。

 陽性者のうち、入所者2人と高齢職員1人は入院し、その他職員は自宅かホテルで療養。感染が発覚した11月13日から陽性入所者との接触後14日以上を過ぎた30日までを感染対応期間としていた。

徹底した3密回避で職員の濃厚接触者ゼロ

 同施設では、陽性者が出る以前から、職員間と職員・入所者間の3密を避けるよう心がけてきた。

 職員の昼食はなるべく一人でとるようにし、職員同士で長時間の会話を行わないように注意してきた。その結果、職員間の濃厚接触者はゼロだった。

 「濃厚接触者がいないことで、人手が不足したところには、別ユニット職員がフォローするなど、施設内の人員のみで対応することができた。万が一、濃厚接触者として多くの職員が休んだら、外部からの職員派遣を要請する必要が出ていた」(田中施設長)

 陽性者発生後すぐに、フロアごとに利用する入口、トイレ、共有部を分け、職員のシフトもフロア内で調整するなどゾーニングを徹底した。
ガラス越し面会スペース。感染のニュースを聞いた人より、スピーカーとマイクが寄贈された

ガラス越し面会スペース。感染のニュースを聞いた人より、スピーカーとマイクが寄贈された

使い捨てエプロンを1週間で3000枚以上使用

 感染対応期間中はコップ、お皿、カトラリー等食事用品を使い捨てに変更。さらに、1ケアごとにエプロンや手袋の交換を実施した。

 しかし、排泄ケアを入居者に1日4回実施した場合、4回×全入所者ク、消毒用品のストックはあったが、使い捨てエプロンを想像以上に消費し、区の支援も受けながら追加で備蓄した」と説明する。

 現在は消毒液260L(数カ月分)、使い捨てエプロン1万枚、マスク1万8000枚を備蓄している。

 このほか、区の清掃事務所から、感染対応期間中のごみは一般ごみと分けるようにとの指示があった。1週間で150袋以上のごみ袋を施設のベランダ等で保管するなど、マニュアルに位置付けられていない面での対応も求められた。

 エプロンなど、感染対応期間にかかった費用は国のかかり増し経費として請求する予定だ。施設として負担したのは、陽性となった入所者の入院時にかかった食事や衛生用品の費用だ。

 11月23日から陽性者が徐々に職場復帰し、27日には入院していた入所者が退院。保健所の指導により30日まで感染特別対策を行い12月1日より、以前の業務体制に戻った。その他職員や入所者には感染していない。

 田中施設長は「今回検査を受けたことで、症状が出る前に陽性者を把握でき、施設内での感染拡大を未然に防ぐことができた」と評価する。

 「その一方で、無症状の陽性者の把握は大変難しい。万が一の際に事業を継続できるよう、濃厚接触者を作らない働き方や、より感染対策を徹底したケアへの見直しを行い、改めて安心できる施設運営に取組んでいきたい」と語った。

(シルバー産業新聞2021年1月10日号)

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