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奉優会 緊急時の対応マニュアルで明確化

奉優会 緊急時の対応マニュアルで明確化

 社会福祉法人奉優会(東京都世田谷区、香取眞惠子理事長)の居宅事業部では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、職員が安心して働けるよう、新型コロナ対策と並行して経営していくための「緊急事態宣言後のロードマップ及びマニュアル」を作成した。

 継続した経営については▽環境改善▽業務改善▽収益改善――の3つの柱を立て、コロナ禍においてもシームレスな支援を目指す。

 環境改善では事業所の体制を中心に、マスク着用・手洗いうがいの継続のほか、デスクやレイアウト、飛沫防止シートの設置など環境整備に取り組むことを記している。 業務改善では、利用者をトリアージして優先度をつけた訪問を実施。モニタリングや、会議は電話・メール・ウェブ会議を活用し、人を集めず感染リスクを最小限にする取組みを行うこととした。

 等々力の家居宅介護支援事業所では利用者110人中、訪問をしているのは50人。同法人の居宅介護事業所全体では半数の利用者に訪問している。

 新型コロナ感染拡大による、サービスの利用控えなどにより減収などの影響も受けていた。収益改善では、職員にスマートフォンを支給。地域の多職種とすぐに情報共有できるシステムを導入し、新規利用者の確認や受入れ状況などを随時共有している。

 同事業部の佐々木克祥事業部長は「新型コロナ感染拡大により、面会をしない営業スタイルが中心となっている。メールやFAXなども積極的に活用している」と話す。

職員の安全を第一に考えた対応

 マニュアル作成により、利用者や職員の発熱時の対応が明確化。職員が休んでも大丈夫なようにフォローできるシフトを作成し、体調不良者への早期サポートが実現している。

 利用者が体調不良だった場合は、電話で状況を確認し、すぐに医療機関に繋げる。「利用者の具合が悪いと聞くとすぐに駆け付けて支援が必要だと考えてしまう」と佐々木氏。「しかし、万が一新型コロナ陽性だった場合、職員も感染し最悪の場合は休業に繋がる。そうするとサービスが必要な、より多くの利用者の支援ができなくなる」と指摘する。

 マニュアルで対応方法を明確化することで、職員が安心して対応できる体制を整えている。

業務体制見直しにより残業時間80%減

 訪問の優先順位設定や、会議の短縮、情報共有のICT化、感染予防に向けた業務体制の見直しを行った結果、残業時間が大幅に削減された。

 同法人が運営する居宅介護支援6カ所の4月~6月の合計残業時間は、昨年の395時間に対し、今年は60時間と約80%削減された。

 「訪問件数が減ったのも要因の一つだが、ICTを活用したスムーズな情報共有や、業務体制の簡素化により、残業時間削減に繋がった。今後も新型コロナ対策と並行してニューノーマルな働き方改革による、働きやすい環境の構築を実現したい」と、佐々木氏は先を見据えている。

虐待やフレイルなど利用者の状況把握

 訪問を最小限にしている現在でも、特に慎重に利用者や環境の状況を把握しているケースが虐待リスクやフレイルだ。

 「在宅介護が長期化することで家族の負担が多くなるため、虐待リスクがあるケースはこまめな訪問を徹底していた」と佐々木さんは話す。

 実際に、家族の利用者に対する表情や言動がきつくなったことから、行政の保健師に相談し、行政と連携した見守りに繋げた。

独自の展開を活用する体制

 「等々力の家」では、併設する特養の管理栄養士と連携した料理教室や、地域の病院と開催しているがん患者の集いの場「やすらぎサロン」の運営など、独自の展開をしている。

 主任ケアマネジャーの佐藤直子さんは「保険外サービスは、ただ使うのではなくいかに地域とのつながりやサポートに繋げていくかを考えることが重要だ」と強調する。

 少しでも社会との繋がりを維持できるよう、オンラインでの相談会などをケアプランに位置付けているという。

 事業所副責任者の芥川裕美子さんは「自粛していた利用者の体力の低下がよくわかる。家族の介護負担の状況と感染予防を意識しながら、様々なサービスを活用して利用者の生活を支えるプランを立てていきたい」と語る。

(シルバー産業新聞2020年9月10日号)

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