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和光市・東内審議監逮捕 生保受給者の現金詐取容疑

和光市・東内審議監逮捕 生保受給者の現金詐取容疑

 生活保護受給者から福祉事務所が預かっていた1200万円のうち、200万円をだまし取ったとして埼玉県警は2019年6月13日、詐欺容疑で和光市企画部審議監の東内京一容疑者(55)を逮捕した。県警では動機や余罪について追及しており、同年7月上旬に何らかの進展がある模様だ。

親族からの問合せで発覚

 事件の発覚は、2018年11月頃。4年前まで生活保護を受給していた80代女性の親族から、和光市が保管する女性の現金1200万円について問合せが市に寄せられたのが初め。この問合せを受けて、12月3日に市福祉事務所職員は、東内京一教育部長(15年当時は保健福祉部長兼福祉事務所長)を保管中の生活保護受給者の現金を着服した疑いがあるとして市に内部通報(公益通報)した。
 和光市は12月7日に顧問弁護士2人を調査員として、東内容疑者はじめ関係者を個別に調査した結果、年明けの19年1月23日に、当該行為を事実と認定。詐欺罪に当たるとして松本武洋市長が朝霞警察署に告発状を提出し、即日受理された。告発を受けて埼玉県警は関係者の調べに入り、6月13日に詐欺罪容疑で東内容疑者を逮捕した。
 埼玉県警の発表では、東内容疑者は現金を福祉事務所に保管中であることを知り、15年2月9日~同年3月18日までの間に、同事務所職員に「あの金はオレオレ詐欺をしている大型詐欺グループの金らしい」「検察の人から内々に話が来ており、あのお金を押さえたいらしい」「特捜に持っていくから俺に渡してもらえるか」などとうそを言い、現金200万円をだまし取った疑いがあるとした。

告発状とはズレも

 市広報課によると、1200万円は、訪問した福祉事務所職員が女性宅で発見したもので、通常、これだけの預貯金があると生活保護の受給資格がないことから、市が預かり、250万円を生活保護費の返還金として請求。残りの950万円を女性の預金通帳に入金した(女性は15年5月死亡)。証言している。また東内容疑者は「詐欺と認識していなかった」と話しているという。東内容疑者を逮捕した警察も、容疑の認否については明らかにしていない。
 市は今後の警察の動向を見守る姿勢だが、告発内容と逮捕理由に金額の差異があることから、今後200万円の詐取とは別容疑で再逮捕になる可能性もあるという。
 18年末の内部通報から内部調査を経て19年1月の市の告発、さらに4月の異動、6月13日の逮捕に至るまで、こうした一連の状況については一握りの幹部職員にしか知らされていなかった。その後、東内容疑者の指示で職員が通帳から100万円を女性本人の借金を返すという名目で引き出した。さらに400万円を東内容疑者の指示で引き出している。市の告発では、そこで引きだされた計500万円を詐取したという内容で、逮捕理由にある200万円との関係は不明という。
 市が行った聞き取り調査によると、現金を引き出したとされる職員は「東内部長の指示で引き出した」と
 逮捕された6月13日(14時30分)当日の18時から、和光市は松本市長の記者会見を行い、「職員による不祥事により被害を受けられた方や市民の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを深謝する。事件の発生原因を究明し再発防止に努める」と頭を下げた。

第三者委員会立上げ原因究明へ

 今後、顧問弁護士や県・市のOB職員、学識経験者らによる、第三者調査委員会を早急に立ち上げ、事実の調査と再発防止に向けた対応を検討する。広報では、事件の経緯と対応策をまとめ、市民に報告する方向だという。警察の今後の対応を待って、市として関係者の処分を決める。
 東内容疑者は18年4月から介護と教育をつなげる役割を担うため、教育部長に就任しており、19年3月末まで、内部や警察の事件調査を受けながらも、市の3月議会でも答弁に立つなど、業務を行っていた。4月になって、市が異動と合わせ業務ラインから外したのを機に、東内容疑者は病気休職中となっていた。

どうする弱い立場の金銭保護

 同氏は09年4月から11年10月まで厚生労働省老健局に入り、和光市が展開していた介護予防推進策を全国に広げる役割を果たした。
 15年改正で市町村での設置が義務づけられた地域ケア会議は、個別ケアの推進から地域課題の発見まで、介護予防推進の基本ツールとなった。和光市の地域ケア会議を材した本紙記者は、地域の医療介護の関係者が一堂に会する中で、詳細な利用者の個人情報が開示される様子を見て、これが悪用される懸念を覚えたと話す。皮肉にも、推進役の立場の者が容疑者になった。
 弱い立場の人を守るはずの福祉職員による不正事件はこれまでもあった。権利擁護が機能しない状況では、認知症や独居の中で在宅介護利用者の保護、適正な遺品管理などのあり方も含めて、関わる者の倫理観を高めていく必要がある。事件の全容が明らかになり、和光市の再発防止策がどのようなものになるのか注目される。

(シルバー産業新聞2019年7月10日号)

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