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可搬型階段昇降機で初の死亡事故

可搬型階段昇降機で初の死亡事故

 介護保険貸与の給付対象になっている可搬型階段昇降機で2件の死亡事故が報告された。 消費者庁福祉用具重大事故情報によると、今年1月11日(70代の搭乗者)、4月23日(80代の搭乗者)の2件で、ともに搭乗者が昇降機から転落し、病院に搬送後、入院中に死亡した。

消費者庁では、製品の使用状況を含め、現在、原因を調査中。これまで可搬型階段昇降機による重大事故は合わせて8件で、死亡事故は初めて。消費者庁は、消費者安全法に基づき30日以上の加療を要する重大事故をHPで発信している。この事故を受けて、可搬型階段昇降機安全推進連絡会(美澤暁彦代表)と事務局のテクノエイド協会は、7月中に可搬型階段昇降機安全指導員に操作指導の徹底を図る通知を行うとともに、6月から講習時の指導を強化した。

 同通知によると、2件の事故概要はつぎの通り。事故はともに神奈川県で発生した。

 ①認知症の搭乗者が階段下降中に手すりをつかんでしまい、操作者がその手を振りほどこうとした際、昇降機を前に押し立てすぎて、シートベルトをしていなかった搭乗者が前方に投げ出され落下した。

 ②階段上昇し2階へ到着した時に操舵バランスを崩し、昇降機を前方へ立ててしまった際に、シートベルトをしていなかった搭乗者が座面よりずり落ち落下した。

 テクノエイド協会の寺光鉄雄調査監によると、可搬型階段昇降機は、上り時は利用者、操作者ともに後ろ向きで上がり、下り時は前向きで下がる。階段に沿うように機器を斜めにして上下行するが、事故時は機器が立ち気味になって、バランスを崩して、前方から転落することが多いという。

 シートベルトの着用は基本とされるが、機器ごとに転落した際のリスクも指摘されている。メーカーによっては安全帽の着用を推奨する。今回、可搬型階段昇降機安全推進連絡会が安全指導員に出した通知では、階段昇降機の講習ポイントを再確認し、操作者の操作状況をモニタリングするとともに、反復指導の徹底を図ることを求めた。「介護保険では、階段昇降機の操作は必ず安全指導員の指導を受けて行うことが義務づけられている。ヘルパーは指導を受けた後に十分に練習機会がないままに操作する場合がある。通知では、複数のヘルパーが操作者である場合には、普段の練習で操作技量を均一化し、1カ月から3カ月に1度の再評価を行うよう求めた」(寺光氏)

 可搬型階段昇降機は2009年4月から介護保険の福祉用具貸与の品目「移動用リフト」に加わった。エレベータのない階上階に住む要介護者の外出や、デイサービスの送迎時などに必要性が高いと判断された。

(シルバー産業新聞FAX/メール版2019年7月30日号)

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