在宅栄養ケアのすすめ

冬場の脱水に要注意!/中村育子(連載71)

冬場の脱水に要注意!/中村育子(連載71)

 前号では感染対策について取り上げましたが、冬場でもう一つ気をつけなければならないのが「脱水」です。

 脱水と聞くと、汗をかきやすい夏に多いと思われがちですが、冬は①夏に比べて喉の渇きを感じにくい②寒いから水を飲みたくない③夜間、トイレに行くのが面倒――などの理由で水分摂取量が減り、脱水が起きやすくなります。

 脱水になると皮膚や口腔内の乾燥、起立・歩行時のふらつき、発熱や便秘がみられます。また、冬に多いウイルス感染性の胃腸炎は下痢や嘔吐を引き起こし、体内の水分を奪います。こういった症状の後は注意が必要です。

 高齢者は加齢とともに皮膚感覚が鈍くなり、冬場は汗もかきません。「水はじゅうぶん飲んでいる」という人も多いと思います。本人の感覚だけに委ねるのではなく、できるだけ水分を摂る習慣をつけるよう働きかけましょう。

コップで水分量をチェック

 「1日に水を何ml飲んでいますか?」と聞かれて、正確に答えられる人はなかないないでしょう。まずは「コップ1杯=200ml」を目安に「1日何杯飲んでいますか?」と聞いてみましょう。ペットボトル(1本500ml)に置き換えても大丈夫です。

 その際、食事内容や服薬についても押さえておくと、より正確な摂取量が把握できます。毎食後に薬を飲んでいる人の場合だと、コップ1杯×3回で500~600mlは計算できます。体格にもよりますが、高齢者の場合1日で1200~1300ml摂取できていれば問題ありません。1000mlを下回ると、脱水症の危険信号です。

飲みやすい味で提供

 飲みたいと思わない人に飲めと言っても、拒否が強くなるだけです。特に在宅は、全ての食生活を管理できるわけではありません。本人が自ら意識して、無理なく飲む習慣をつけてもらうことが大切です。特に、認知症の人は水やお茶といった味のしないもの・薄いものは飲みたがらない傾向にあります。かつ、味がないものほど飲み込みのタイミングがつかめず、むせが起きやすくなります。そうなると水分を摂ることが余計、億劫に感じてしまうといった悪循環になりかねません。

 割と好まれる味は、甘いものです。ココアや甘酒、カルピスなどはおすすめです。冬場は寒くて、牛乳がけっこう冷蔵庫に残っている場合があります。電子レンジで人肌程度に温め、ココアを足して飲めばたんぱく質やカルシウムも摂取できます。甘酒などはおやつのタイミングなどで出すのが良いでしょう。

 他には、食事に汁物をうまく組み込んでいくのがポイントです。

 味噌汁、スープ、鍋物など、冬は温かいものは抵抗がありません。麺類は主食も兼ね、食欲が低下しているときでも比較的食べやすいので有効です。

トイレの不安・手間を解消

 生活環境面では▽なるべく部屋を暖かくする▽部屋をトイレの近くにする▽廊下を明るくし、手すりをつけて部屋からトイレの安全な動線を確保する――などの工夫が可能です。それでもトイレに行きたがらない場合は、部屋にポータブルトイレを設置するのも対策の一つです。ただし、夜間に限り使用すると決めておくようにしましょう。

 また、今は飲料水をペットボトルで買うのも当たり前になっていますが、高齢者の中には手の力が弱くて、ペットボトルのキャップが開けられないといった人もいます。片まひなどの人向けの自助レベルになると、介護ショップで取り扱っています。力が弱い人向けの簡単なものだと100円ショップでも売っています。

 水を飲むことへの障がいを可能な限り取り除き、面倒だと思わせないようにしましょう。
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 中村育子(福岡クリニック)

(シルバー産業新聞2019年12月10日号)

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