千田透の時代を読む視点

ケアプラン有料化、明確なビジョンを示した上で/千田透(連載76)

ケアプラン有料化、明確なビジョンを示した上で/千田透(連載76)

 次期介護保険制度改正に向けた議論が、社会保障審議会介護保険部会で進められている。

 その中で、具体的な項目の一つとして挙げられているのが、ケアプランの有料化である。

 財務省は、「利用者負担がないことで、利用者側からケアマネジャーの業務の質についてチェックが働きにくい構造になっている」ことを問題視しており、利用者負担を導入することで、チェック機能が働き、ケアプランの質の向上につながるとしている。本当にそうした効果があるのかについては、根拠に基づいた議論が必要だ。

 そもそもケアマネジメントに利用者負担を導入しなかった理由は、指定基準に記されている通り、「要介護者である利用者に対し、個々の解決すべき課題、その心身の状況や置かれている環境等に応じて保健・医療・福祉サービス等が、多様なサービス提供主体により総合的かつ効率的に提供されるという重要性に鑑み、保険給付率についても特に10割としている」からである。

 制度開始時に〝あえて〟利用者負担を導入しなかったのに、20年が経ち制度が浸透してきたことや、利用者自身がケアプランに関心を持つ仕組みとした方がサービスの質の向上につながるといった理由だけで自己負担を導入すると言っても、理解は得られないだろう。

 さらに考慮しないといけないのは、この間のケアマネ試験の受験者数が大幅に減少している実態である。

 昨年度は、受験数が前年の13万1432人から4万9312人へと6割以上も激減し、今年度についても、台風の影響で試験が中止になった1都12県を差し引いても、受験者数は3万378人と前年度を下回る状況になっている。

 これは単に、前回試験から受験資格を厳格化したからという理由だけでは説明できない状況である。

 そうした中で、居宅介護支援に利用者負担を導入することが、現場にどのような影響を与えるのか。そうしたことも考慮しなければ、現場が上手く回らなくなる可能性がある。

 制度を持続可能なものにさせていくために、給付と負担の議論は続けていく必要があるが、今のタイミングで居宅介護支援に利用者負担を導入することについては、慎重であるべきであろう。

 そして、何よりも必要だと思うのが、今後、国としてケアマネジャーや居宅介護支援事業所をどのようにしていきたいのか。そのビジョンを明確にした上で、質の向上や自己負担の導入を議論していく姿勢である。

 千田透(全国生活協同組合連合会 常務理事)

(シルバー産業新聞2019年12月10日号)

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