施設サービスはどう変わっていくのか
特定加算の配分をどうすべきか~私論/菊地雅洋(連載49)
介護職員等特定処遇改善加算の配分については、Aグループ(経験・技能のある介護職員)に限定せず、Bグループ(その他の介護職員)にまで範囲を広げて配分するという方法をお勧めしたい。そうしないと介護福祉士養成校の卒業生や、若い経験の浅い介護福祉士は、その事業者に就職しなくなるからだ。
そこに就職すれば10年後にまとまった額の昇給が可能であると言っても、そのスパンはあまりに長い。若い女性ならそれまでに結婚退職してしまって、その恩恵を受けられないと考える人も多い。そもそも10年後に特定加算が存在するという保障はなく、今現在少しでも高い給与を得られる事業者に就職したいと思うのは当然だ。
さらに今現在働いている経験年数の浅い介護職員の立場を考えると、Aグループになるまでに数年の経験をさらに経なければならないのであれば、経験が浅い介護職員にも加算配分する事業者に転職して、より高い給料をもらいながらそこで経験を積んだ方が良いと考える人も当然出てくる。Aグループに限定配分する事業者からは、このように経験の浅い介護職員の流出可能性が高まる。
Bグループまで配分範囲を広げると、今現在経験と技能のある介護職員に該当する人たちは、その分配分額が減らされて不満であろうという意見も当然出るだろう。しかしそうであっても即、経験と技能のある介護職員が退職し、他事業者へ流出する可能性は極めて低い。
なぜなら周囲を見渡すと、「経験と技能のある介護職員」の経験年数(就業年数)を他の法人にまで広げて計算しているところは非常に少なく、大多数は自法人内の経験年数に限定して見ているからだ。ということは現在の法人内ではAグループとして、一番高い加算配分がされる対象となっていたとしても、その法人を退職して他法人に就職した場合、同じくAグループとしてくれる就職先は極めて限定される。
むしろ転職した場合、今までの自分の経験年数がリセットされて、給与が下がるケースが多くなっているため、この加算によって、「経験と技能のある介護職員」は固定化が促進される可能性が高くなっている。
だからこそ流動化しやすいBグループの介護職員までは配分を広げる必要があると考えるのである。
しかし配分をCグループ(その他の職種)まで広げるメリットはないと思う。なぜなら不公平感を恐れて配分をCグループまで広げてもルール上配分額には差をつけねばならず、職場内の格差感を完全になくすことはできないからだ。
そうであればA・B両グループに配分する費用が減って、介護職員の不満が高まることの方を事業リスクと捉えたほうが良い。何しろ介護事業の人材不足の根本は、「介護職員不足」なのである。その本質を忘れてしまえば、根本対策の手当てが不十分になり、誰もが不満という状態になりかねない。
そもそも配分をCグループに広げて、法人単位で加算を支給する場合であっても、特定加算の算定事業に関わっている職員でなければその配分はできず、法人内に併設している訪問看護事業所や居宅介護支援事業所に専従する職員には加算配分はできないのである。
そう考えると前月の記事で指摘したように、その他の職種については、加算配分とは別に給与改善を考えたほうが良い。
ということで特定加算の配分は、AとBグループまでにすることが、最も職員が流動化せず、必要な人材が張り付く方法だと考えるのである。
菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)
(シルバー産業新聞2019年12月10日号)
さらに今現在働いている経験年数の浅い介護職員の立場を考えると、Aグループになるまでに数年の経験をさらに経なければならないのであれば、経験が浅い介護職員にも加算配分する事業者に転職して、より高い給料をもらいながらそこで経験を積んだ方が良いと考える人も当然出てくる。Aグループに限定配分する事業者からは、このように経験の浅い介護職員の流出可能性が高まる。
Bグループまで配分範囲を広げると、今現在経験と技能のある介護職員に該当する人たちは、その分配分額が減らされて不満であろうという意見も当然出るだろう。しかしそうであっても即、経験と技能のある介護職員が退職し、他事業者へ流出する可能性は極めて低い。
なぜなら周囲を見渡すと、「経験と技能のある介護職員」の経験年数(就業年数)を他の法人にまで広げて計算しているところは非常に少なく、大多数は自法人内の経験年数に限定して見ているからだ。ということは現在の法人内ではAグループとして、一番高い加算配分がされる対象となっていたとしても、その法人を退職して他法人に就職した場合、同じくAグループとしてくれる就職先は極めて限定される。
むしろ転職した場合、今までの自分の経験年数がリセットされて、給与が下がるケースが多くなっているため、この加算によって、「経験と技能のある介護職員」は固定化が促進される可能性が高くなっている。
だからこそ流動化しやすいBグループの介護職員までは配分を広げる必要があると考えるのである。
しかし配分をCグループ(その他の職種)まで広げるメリットはないと思う。なぜなら不公平感を恐れて配分をCグループまで広げてもルール上配分額には差をつけねばならず、職場内の格差感を完全になくすことはできないからだ。
そうであればA・B両グループに配分する費用が減って、介護職員の不満が高まることの方を事業リスクと捉えたほうが良い。何しろ介護事業の人材不足の根本は、「介護職員不足」なのである。その本質を忘れてしまえば、根本対策の手当てが不十分になり、誰もが不満という状態になりかねない。
そもそも配分をCグループに広げて、法人単位で加算を支給する場合であっても、特定加算の算定事業に関わっている職員でなければその配分はできず、法人内に併設している訪問看護事業所や居宅介護支援事業所に専従する職員には加算配分はできないのである。
そう考えると前月の記事で指摘したように、その他の職種については、加算配分とは別に給与改善を考えたほうが良い。
ということで特定加算の配分は、AとBグループまでにすることが、最も職員が流動化せず、必要な人材が張り付く方法だと考えるのである。
菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)
(シルバー産業新聞2019年12月10日号)