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【韓国の介護保険】ニーズ対応困難な福祉用具
韓国も日本同様に介護保険制度によって高齢者の福祉用具市場が拡大してきた。福祉用具サービス(貸与と販売)は、2015年時点で、日本円で112億円市場となっている。日本の介護保険の福祉用具市場(貸与と販売と住宅改修)が15年度でおよそ3500億円であるので、市場規模は日本の3%程度。韓国の高齢者数(637万人)は、日本(3300万人)の19%で、単純な比較だが、韓国の福祉用具サービスの充実度は日本の6分の1程度に当たる。
リストアップし公定価格に
韓国と日本では、介護保険の福祉用具サービスの仕組みが大きく違う。給付対象品目は16品目(表)で、対象機種は国が決める。品質規格があり、登録にあたっては、日本のJIS(日本工業規格)に当たるKS(韓国産業標準)などの規格に照らして、韓国標準協会や韓国高齢親和用品産業協会などが認定する。毎年、対象となる機種と除外される機種があり、12年には新規65機種がある一方で、除外も33機種あった。14年時点で登録メーカー数は103社、登録機種は632機種に留まる。一方、日本ではテクノエイド協会の福祉用具情報によると、16年12月時点で、介護保険対象は8712機種(レンタえる用具に幅を増やすべきだと訴えている。
15年からモニタリング義務付け
利用に当たっては、アセスメントの仕組みがない中で、品目の選定は健康保険公団、機種選定は事業所が行う。15年からモニタリングが事業者に義務付けられた。消毒点検は義務で、外部委託可能。8年前の制度開始当初は、ケアマネジャーがいない制度下で、手すりの設置の際に、利用者宅に手すりを宅配し、家族が手すりを取り付けるという状況などもあった。事業者はそうしたものだと疑わず、利用者・家族も介護保険のおかげで安い費用で手すりが取り付けられて良かったと受け止めた。
韓国でのレンタル台数は電動ベッド2万7000台(日本85万台)、車いす3万9000台(68万台)。日本と比べて電動ベッドで3%、車いすでも5%にあたる。給付費の5割は販売であることや、現代の韓国は福祉用具利用に対する国民の抵抗感やベッド社会であることも影響している模様だ。
利用者はレンタルか販売を選択でき、合わせて年間の給付限度額は日本円で16万円(等級に関係なし)。福祉用具給付費112億円のうち、貸与はその40%の46.7億円を占め、14万人の利用者がいる。
韓国でのレンタル台数は電動ベッド2万7000台(日本85万台)、車いす3万9000台(68万台)。日本と比べて電動ベッドで3%、車いすでも5%にあたる。給付費の5割は販売であることや、現代の韓国は福祉用具利用に対する国民の抵抗感やベッド社会であることも影響している模様だ。
利用者はレンタルか販売を選択でき、合わせて年間の給付限度額は日本円で16万円(等級に関係なし)。福祉用具給付費112億円のうち、貸与はその40%の46.7億円を占め、14万人の利用者がいる。
少ない、ニーズに添った選択の余地
日本との違いのもうひとつは、韓国では、福祉用具の価格が輸入価格やメーカーの蔵出し価格をもとに国が定めている点。保険者である健康保険公団の給付評価委員会が公定価格を決める。為替の変動によって、ウォン安に転じると、福祉用具事業者は逆ザヤになって、事実上扱えなくなる。そもそも登録数が少なく、ニーズに添った選定が難しくなっている。
登録を受けている福祉用具事業所数は、14年時点で1576事業所。日本は7959事業所(15年10月)。日本の3%市場規模で、日本の20%程度の事業所数がある韓国の福祉用具事業所は、零細事業所が多いことを表している。
全国5カ所に福祉用具展示・研修を行う高齢親和体験館があり、福祉用具の利用相談や体験ができる。日本製品も多く展示されている。ソウル近郊にあるソンナム福祉用具体験館は、1階が展示場、2階開発部門、3階メーカー。出来て10年が経ち、4年前からウルチ大学が運営を受託している。韓国では、病院で使ったり見た用具を求める傾向が強いという。
福祉用具事業者、韓国ランダル(ソウル)の林(Lim)琦雄社長によると、「福祉用具事業だけでは経営が困難なため、訪問介護を併設する福祉用具事業所が半分以上を占め、次に25%程度が医療機器販売を併設する。15年では、1福祉用具事業所の月平均収入は、日本が390万円であるのに対して、韓国は62万円に止まる」と説明する。福祉用具メーカーも事業規模は小さく、年間の平均給付費で、1機種2000万円、1メーカー8000万円程度という。
制度初め、韓国政府は国内の福祉用具メーカー育成をもくろみ、ギャッチベッドの角度を上げる規定を設けるなど、韓国の介護保険市場参入をめざす日本メーカー外し策ともいえる手立てをした。しかし、現在ではこうした露骨な外資外しはなくなったものの、韓国市場では、電源220V対応や速い動作スピード(ギャッチや昇降)対応などの対応が必要になっている。
(シルバー産業新聞2017年1月10日号)
登録を受けている福祉用具事業所数は、14年時点で1576事業所。日本は7959事業所(15年10月)。日本の3%市場規模で、日本の20%程度の事業所数がある韓国の福祉用具事業所は、零細事業所が多いことを表している。
全国5カ所に福祉用具展示・研修を行う高齢親和体験館があり、福祉用具の利用相談や体験ができる。日本製品も多く展示されている。ソウル近郊にあるソンナム福祉用具体験館は、1階が展示場、2階開発部門、3階メーカー。出来て10年が経ち、4年前からウルチ大学が運営を受託している。韓国では、病院で使ったり見た用具を求める傾向が強いという。
福祉用具事業者、韓国ランダル(ソウル)の林(Lim)琦雄社長によると、「福祉用具事業だけでは経営が困難なため、訪問介護を併設する福祉用具事業所が半分以上を占め、次に25%程度が医療機器販売を併設する。15年では、1福祉用具事業所の月平均収入は、日本が390万円であるのに対して、韓国は62万円に止まる」と説明する。福祉用具メーカーも事業規模は小さく、年間の平均給付費で、1機種2000万円、1メーカー8000万円程度という。
制度初め、韓国政府は国内の福祉用具メーカー育成をもくろみ、ギャッチベッドの角度を上げる規定を設けるなど、韓国の介護保険市場参入をめざす日本メーカー外し策ともいえる手立てをした。しかし、現在ではこうした露骨な外資外しはなくなったものの、韓国市場では、電源220V対応や速い動作スピード(ギャッチや昇降)対応などの対応が必要になっている。
(シルバー産業新聞2017年1月10日号)