ワールドレポート

ATLife台湾 国内最大級の福祉機器展

ATLife台湾 国内最大級の福祉機器展

 5月16~19日、台湾・台北市で福祉機器展示会「ATLife台湾」(Assistive Technology Life TAIWAN)が開催された。国内外のメーカーなど210社が出展、3000を超える最新の福祉機器が並び、4日間で11.6万人の来場者を動員する国際福祉機器展。今回は、就任式を翌週に控え参加できなかったが、頼清徳新総統もこれまで開幕式に駆け付けていた。その台湾最大規模の展示会で、主催者が力を注ぐイベントの一つが、昨年から始まった「台湾長期介護レンタル補助機器優秀賞」の表彰式だ。賞を通じて、台湾の福祉機器産業のさらなる発展を目指すとともに、高齢者介護におけるレンタル制度のメリットを発信している。

レンタルの実用性評価日本製品も受賞

 「台湾長期介護レンタル補助機器優秀賞」は、台湾のレンタル用福祉機器の開発や応用の促進を目的に、昨年より実施されている。審査員7人の中には、介護保険による福祉用具貸与サービスの仕組みが根付く日本から、テクノエイド協会・五島清国企画部長も名を連ねている。審査のポイントとして、製品の機能・仕様、安全性、市場性に加え、耐久性や積み下ろしのしやすさ、容易に消毒やメンテナンスができることなどレンタル製品としての実用性も評価する。

 第2回となる今回は、台湾製品14点を含む全18製品が選出された。レンタルに馴染むと評価された、電動介護ベッド、マットレス、片麻痺用歩行器、スタンディングリフト、階段昇降機、歩行支援ロボット、離床センサー、トレーニングマシンなど、多種多様な製品が受賞。日本製ではプラッツの電動介護ベッド「ミオレットⅡ」、ダンロップホームプロダクツ「可搬型車いす用スロープ」が優秀賞に選ばれている。
「台湾長期介護レンタル補助機器優秀賞」表彰式。写真左が李淑貞センター長

「台湾長期介護レンタル補助機器優秀賞」表彰式。写真左が李淑貞センター長

福祉用具利用者の大半が購入を選択

 同賞を主催し、台湾の福祉用具施策にも関わる国立陽明交通大学ICF&支援技術研究センターの李淑貞センター長は、「この賞を通じて、高齢者介護に適したレンタルのメリットを普及させたい」と強調する。

 台湾の現行の介護制度「長照2.0」で提供される福祉用具サービスは、購入とレンタルが選択できる。日本の介護保険でも、今年4月から歩行器や杖、固定用スロープのレンタル種目・種類について「選択制」が導入されたが、台湾では当初から選択制の仕組みが採用されている。

 ただ、台湾国内ではほとんどの利用者が購入を選ぶという。その理由について、李センター長は「レンタル種目は購入対象よりも対象が狭く、補助金額も低い。それゆえ利用者だけでなく、メーカーや福祉事業者の意識もあまり向いておらず、レンタル向けの製品開発が進んでいない」と説明する(囲み記事参照)。また購入に比べてレンタルは申請回数が増えるなど、煩雑になることも利用を阻む一因となっているようだ。

 李センター長は、「日本の視察を重ね、高齢者介護については、状態にあわせた福祉用具への変更が容易なレンタルの仕組みが適していると痛感した。この賞をスタートしたのは、民間の立場からレンタルの重要性を発信し、政府やメーカー、福祉用具事業者を刺激したいからだ」とし、「第1回と比べて、今回は応募製品のレベルもとても向上している」と手ごたえを語る。

追加種目は「レンタル原則」の可能性も

 長照2.0を所管する台湾衛生福利部長期照顧司(日本の厚生労働省老健局に相当)の祝健司長は本紙の取材に応じ、「レンタル原則へ一気に変えるのは現場の反発も大きいと思われる。ただ、例えばテクノロジー機器など、現行の制度で対象になっていない製品であれば、レンタル原則から始める見通しが立ちやすい。頼清徳新政権と連携して進めていきたい」と話した。
(シルバー産業新聞2024年6月10日号)

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