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福祉用具、貸与価格の見直し策などを議論

福祉用具、貸与価格の見直し策などを議論

 厚生労働省は、2016年10月12日に社会保障審議会介護保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学教授)を開き、次期介護保険制度改正に向け、福祉用具・住宅改修の見直し策を議論した。福祉用具については、同一製品でありながら、極端に高い貸与価格が存在することに対し、あらかじめ保険者の了解を必要とすることなどを義務付け、是正を図っていく考えを示した。住宅改修についても、見積書類の様式を国が統一することなどで、利用者が適切なサービスを受けられる環境を、これまで以上に整備していく考えだ。 

極端に高い価格、保険者の了解必要

 福祉用具貸与・特定福祉用具販売の価格については、財務省から同一製品でありながら、10倍以上価格の開きがあるケースや、地域差が大きいことなどが指摘されている。

 厚労省はこの日の資料で、これまでに▽09年度より、保険者が国保連の給付データを活用し、同一製品の貸与価格幅が記載された介護給付費通知を発出することを可能にしている▽14年3月より、テクノエイド協会のホームページ上で、種目別の全国平均価格と最頻価格(実勢値)を公開▽15年度より、複数の福祉用具を貸与する場合の減額制の導入――など、適正なサービス競争が行われる環境整備に取り組んできた経緯を説明した。

 しかしながら、現在でも一部に高額請求が存在しているため、新たな対策に乗り出す考えを示した。

 具体的には、「福祉用具貸与価格に極端な価格差が生じないようにするため、極端に高い額を貸与価格とする場合には、あらかじめ保険者の了解を必要とすることしてはどうか」との論点を示した。

 提案内容は、事業者が都道府県や市町村に貸与価格を届け出る際に、あらかじめ上限を設け、それを超える場合は、自治体の了解を必要とするイメージだ。「極端に高い額」の基準をどのように設定するかは今後の議論になるが、実現すれば問題視されている「外れ値」の是正に大きな効果を発揮しそうだ。

 ただ、比較的低額な福祉用具については、事業者によって価格差が大きいので、一律に「上限は平均価格の何倍まで」と基準を決めてしまうと、自由競争を阻害する要因にもなる。この辺りは慎重な議論が必要だろう。

 さらに、利用者が適切にサービスを受けられるようにするための見直し策として、▽福祉用具貸与の価格について、全国レベルでホームページにおいて公表する仕組みをつくる▽利用者が適切な福祉用具を選択できるよう、福祉用具専門相談員が、製品の価格・特徴などを利用者に説明すること、及び複数の製品を提示することを義務付ける▽利用者に交付しなければならない福祉用具貸与計画書をケアマネジャーにも交付する▽貸与事業者に対し、介護給付費請求書の適切な記載方法の徹底を図る――などの具体策も提示した。

 出席した委員からは、「福祉用具の価格設定については外れ値がでないように、基準価格を設定することが必要」(鈴木邦彦・日本医師会常任理事)、「基準価格を設定し、それを超える部分は自己負担にするべき」(井上隆・日本経済団体連合会常務理事)など、さらに踏み込んだ見直し策を求める意見もあったが、多くの委員が「歓迎したい」「是非進めて欲しい」など、賛同の声を上げた。

 また、福祉用具事業者等でつくる日本福祉用具供給協会(小野木孝二理事長)も提案書を提出し、テクノエイド協会と連携し、各事業所が福祉用具レンタルを提案する際に、TAISコードを活用し、価格情報を提示すること、TAISコードで分類できない商品に対しては、協会の会員事業所の全国平均価格を公表することなど、業界を挙げて「価格の見える化」を進めていくことを約束している。

住宅改修見積書類の様式を統一

 住宅改修については、厚労省が現状と課題として、約6割の保険者が「事業者により技術・施工水準のバラツキが大きい」と回答したアンケート結果を紹介。さらに、国保連に給付データの蓄積がないなど、工事価格などの取引実態の把握が進んでいない状況にあると説明した。

 そうした実態を踏まえ、具体的な見直し策として、▽事前申請時に利用者が保険者に提示する見積書類の様式(改修内容、材料費、施工費の内訳が明確に把握できるもの)を国が示す▽複数の住宅改修事業者から見積もりを取るよう、ケアマネジャーが利用者に説明する▽建築の専門職やOT・PT・住環境コーディネーターなどが適切に関与している事例や、住宅改修事業者への研修会を行っている事例など、保険者の取組の好事例を広く紹介する――などの案を提示した。福祉用具と同様に、多くの委員が見直し策に賛同する意見を挙げた。

 このほかに、共通事項として「福祉用具や住宅改修が、利用者の自立支援、状態の悪化防止、介護者の負担軽減等の役割を果たしていることも考慮した上で、価格設定や保険給付の対象範囲、利用者負担のあり方について、どのように考えるか」との論点も示したが、財務省が求めるような、要介護2までを原則自己負担にするなどの具体的な提案はなされなかった。

 介護保険部会の議論は、法改正を伴うものについて、12月末までに結論を得ることになっている。
(シルバー産業新聞2016年11月10日号)

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