インタビュー

訪問看護BCPは「地域包括型」に(後編)「リスクシナリオ」で初期対応

訪問看護BCPは「地域包括型」に(後編)「リスクシナリオ」で初期対応

 前号では、訪問看護ステーションを例に、災害等発生時に地域との連携で業務を回復させる「地域包括BCP」の考え方を紹介した。今号ではリスクごとの初期対応力をより高めるため、リスクアセスメントの手法について、引き続き慶應義塾大学公衆衛生学教室の山岸暁美氏が解説する。

慶應大・山岸暁美氏

慶應大・山岸暁美氏

災害対応マニュアルとBCPの役割

 「災害対応マニュアル」は、ハザード(震災・水害・感染症など)の発生時に直ちに行うべき内容を示すもので、ハザード別に作成されます。その際、事業所は一時的に低下した業務がいつ立て直せるかを示した「目標復旧時間」(RTO)を通常は設定します。

 BCPはこのRTOが満たせないと判明したときに、初めて発動させます。「オールハザード・アプローチ」つまり、ハザードの種類は問わず、結果として不足する経営資源や業務効率の低下に着目した計画となります。

 ただ、ヘルスケア領域に関しては、発災後の需要が高く、緊急性・公益性・専門性が高いといった特徴があります。また今回の新型コロナウイルスのように収束の見通しが立たない場合は、RTOの目安そのものが難しくなります。

リスクを細分化

 ハザードごとの初期対応を適切に行うにあたり、活用できるのが「リスクシナリオ」と「リスク対応計画書」です。

 例えば、地震では「スタッフの安否確認が迅速にできない」、感染症では「特に感染防護に関する資材の不足」など、まずは想定される場面(リスクシナリオ)を洗い出します。次に、各シナリオについて「影響度」(1~3点)と「対応の脆弱性」(1~4点)。この2つの点数を乗じた数(リスク値)が9点以上の場合に、リスク対応計画書作成の対象となります(図)。
 リスク対応計画書では、現状の課題と対応、リスク値を踏まえ、不備な点への具体策や実施期限、担当者を明記します。「給与が満額払えない」をリスクシナリオの例に挙げると、被災スタッフへの支援や近隣機関での就労支援を緊急対応に、また▽有事の際の融資制度、助成金等の方法の確認▽避難所への訪問看護に関するルール等について行政と協議▽事業を中断した際の近隣事業所、医療機関との相互支援――などが事前対策となります。

 災害は常に人の想像を超えて訪れます。BCPは想定されるあらゆるリスクに対し、地域資源との連携も含めた選択肢を複数用意しておく「思考の訓練」だと言えます。こうした取組みは、地域包括ケアシステムや地域共生社会の構築にも通じます。

(シルバー産業新聞2021年4月10日号)

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