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歩行の維持・回復へ、専用マシンでバランス訓練強化

歩行の維持・回復へ、専用マシンでバランス訓練強化

 京都府福知山市にある「フィットネス型デイサービス えむずケア」は、機能訓練特化型の通所介護。定員15人で、午前・午後にそれぞれ約3時間の機能訓練サービスを提供し、総合事業の通所型サービスも一体的に実施している。

 代表の達川実佐江さんは、長年に渡りエアロビクスのインストラクターとして活動していたが、約9年前に東京都健康長寿医療センターが養成する介護予防運動指導員の資格を取得。福知山市から委託を受け、市のオリジナル介護予防体操「貯筋体操」を高齢者へ指導する役割を担い、現在は指導者の育成に携わっている。

 この活動を通じて達川さんは、地域の高齢者に健康増進・介護予防の意識を持ってもらうことの重要性と、要介護認定を受けた人にも、機能維持・改善を目指すサービスを提供したいと、「えむずケア」を約5年前に立ち上げた。

運動意欲を引き出す

 同事業所では、東京都健康長寿医療センター研究所の大渕修一氏による「包括的高齢者運動トレーニング」を、運動プログラムに採用。同トレーニングは、高齢者の身体機能向上へ向け、筋力や持久力、柔軟性、バランス能力をまとめてトレーニングするもので、同事業所では専用のトレーニング機器も導入した。

 サービスでは最初の約45分間、達川さんらスタッフの指導で、椅子に座ったままグループ体操を行う。ここでは、関節や筋肉をほぐし、次のトレーニングへ向けたウォーミングアップを行う。また、マシンでは鍛えられない指先や足先のストレッチも行い、物を掴んだり瓶のフタを開けたりする動作や、歩行時に地面をしっかり蹴り接地するのに必要な、指先の力や柔軟性の確保にもつなげる。

 グループ体操が終わると、利用者はそれぞれトレーニングに取り組む。事業所にはトレーニングマシンやエアロバイクのほか、セラミックボールを用いた足の温浴装置、脚のエアマッサージ器なども設置され、利用者は10分ずつ交代で利用する。

体幹トレーニングの改善へ

 身体機能の維持・向上へ、ハード・ソフト面から色々とアプローチしているが、唯一、体幹を鍛えるためのバランストレーニングが、利用者にはあまり好評ではなかったという。

 「鏡の前で、適度に不安定な姿勢となるバランスマットに乗り、足踏みや昇降動作などを行っていただきますが、一人で黙々と取り組むのが、比較的地味で楽しくなかったのかもしれません」と達川さん。

 そんな中ある時、事業所に一通のダイレクトメールが届いた。そこには、機械の上に乗るだけで、膝関節に負担をかけず、バランストレーニングなどができるというマシンの案内が入っていた。

 気になってメーカーの「ことほ」(大阪市、四宮葉一社長)へ連絡したところ、そのマシン「らくらくバランス」を借りられると聞き、さっそく昨年11月に事業所で2週間試用した。ほぼ全ての利用者と達川さん自身も試してみたところ、バランストレーニングを楽に・楽しく続けられ、同時に下肢運動もしっかりできることが実感できたという。
車いす利用者もバランストレーニングに励む

車いす利用者もバランストレーニングに励む

 マシンの天板にあるペダルに両足を載せスイッチを入れると、ペダルが自動で足踏み動作のような動きを始める。16段階の速度調節ができるペダルは単純に上下するのではなく、実際の歩行時の足の動きをシミュレートした、独自の「3Dウォークシステム」を採用し、膝関節に負担をかけずに身体のバランス能力を鍛えられるよう設計されている。「マシンを使ったあと、身体の調子がいいと皆さんから好評だったので、導入を決めました」と達川さんは振り返る。

 えむずケアでは、このマシンを2月に正式導入し、トレーニングに活用している。「導入して間もないので、歩行機能が改善したというデータなどはまだありませんが、関節可動域に制限のある方でも、最初はゆっくりとしたスピードで筋肉をほぐし、徐々にスピードを上げていくことで、痛みや無理なくバランストレーニングができています」と達川さんは話す。

 50代で片マヒのある利用者は、マヒ側に重心がかけづらかったが、らくらくバランスを使い続けるうちに、マヒ側に少しずつ重心が乗るようになり、立位や歩行のバランスも改善されてきた。「スタッフがつきっきりでサポートしなくても、マシンが望ましい重心の位置を感じられるようサポートしてくれます」と達川さんは評価する。

下肢運動にも効果

 「体幹を鍛えるのはもちろんですが、それ以前に、自分で足を動かしづらい方の下肢運動にも役立っています」と達川さん。「パーキンソン病や片マヒのあるご利用者では、自分で足首を動かしたりする運動が難しく、本来なら、椅子に座ってつま先やかかとを上げるなどの運動を行います。しかし、それでは可動域がご自身で動かせる範囲内に留まりますし、拘縮のある方では、スタッフがサポートしてもなかなか動かせません。しかし、つかまりながらでも、らくらくバランスの上で立位がとれれば、マシンが足首やふくらはぎをしっかり動かしてくれます」と話す。

 通所介護では、利用者のADLの一定の維持・改善を評価する「ADL維持等加算」で、5時間以上のサービス利用者が5時間未満の利用者より20人以上多いことを求める要件が、21年報酬改定で撤廃。4月からはえむずケアのような短時間型事業所でも算定できるようになる。えむずケアでは、同加算算定も視野に入れつつ、地域の高齢者が最期までいきいき暮らせることをより一層サポートしようと、日々笑顔でサービスに励んでいる。

「らくらくバランス」(ことほ)

 医療機関、介護事業所・施設向けの歩行機能維持・回復訓練マシン。パナソニック「ジョーバ」を手掛けたメンバーが開発した。膝などの関節に負担をかけず、歩行に必要な下肢の筋肉の動員(リクルートメント)を訓練し、歩行に必要なバランス能力を鍛える。

 問合せは同社(☎0120・793・514)まで。

(シルバー産業新聞2021年3月10日号)

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