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特定加算「経験・技能あり」 平均改善額2万1700円

特定加算「経験・技能あり」 平均改善額2万1700円

 10月から始まった「介護職員等特定処遇改善加算」について、福祉医療機構が行ったアンケート調査によると、「経験・技能のある介護職員」の平均処遇改善額は2万1700円であることがわかった。当初は「月額8万円の賃金アップ」のイメージが強かったが、ベテラン介護福祉士に限定せず、幅広く配分できる仕組みとしたため、実際の改善額は2万円台に止まった。「持ち出し」による賃金改善に並行して取り組む法人も一定数いた。加算をきっかけに介護人材の積極的な確保に乗り出す一方で、賃金バランスを崩したり、不公平感を招いたりしないよう工夫を凝らしている。

月8万円改善法人平均0.8人

アンケート調査は福祉医療機構が8月から9月にかけて実施。特定処遇改善加算の対象事業所を運営する4872法人を対象とした(有効回答率20.9%)。回答者の87%は社会福祉法人。

 その結果、施行される「10月から算定する」が76.5%と4分の3を占めた。一方で、7.2%の法人が「算定予定なし」と答え、同機構は「特に収益規模が小さい法人や、主体事業が介護・老人福祉事業以外の法人で、算定しない意向を示す割合が高かった」としている。算定する同加算の区分は、「事業所によって異なる」が46.0%と最も高かったが、より加算率の高い「(Ⅰ)のみ」と回答した法人も44.1%に上っている。

 1人当たりの平均改善見込み額は、「経験・技能のある介護職員」月2万1700円、「その他の介護職員」月9339円、「その他の職種」月4585円という結果に。同加算の算定要件である「月額8万円以上の賃金改善または改善後賃金が年額440万円以上」になる職員の数は9.6人で、さらに「月額8万円以上の賃金改善」に限ると0.8人だった。

 3つのグループ全てを配分対象とした法人は73.4%と大半を占めたが、「経験・技能のある介護職員」と「その他の介護職員」の2グループを対象とし、「その他の職種」を外した法人も2割近くいた。「経験・技能のある介護職員」のみを配分対象とした法人は4.3%。3グループを配分対象とした法人に大まかな配分比率を尋ねたところ、「2対1対0.5」が7割近くとなり、概ね国の配分ルールに沿った運用がされているようだ。

 同加算では「経験・技能のある介護職員」の基準について、最終的に各事業所の裁量で決めることになっている。勤続年数を要件とした法人は78.7%。そのうち「10年」が84.1%と大半を占めている。経験年数の考え方は「他法人の経験年数を考慮」16.2%、「他法人の介護施設での経験年数を考慮」33.4%で合計すると49.6%。「他法人の経験年数を考慮しない」47.3%と拮抗している。

「持ち出し」処遇改善はケアマネが最多

加算以外で、法人の持ち出しによる独自の処遇改善を行う意向について35.4%が「予定あり」と回答。対象は、加算での配分比が最も低い「その他の職種」が62.5%、同加算の対象外サービスの職員が57.1%と多かった。持ち出しでの処遇改善を行う職種はケアマネジャーが41.3%と最多。同機構は「ケアマネジャーは介護職のキャリアパスでも上位に位置づけられることが多く、介護職員との給与の乖離などの観点から持ち出しの処遇改善を実施する法人が多いのではないか」と分析する。

 「算定に向けた要件達成や準備が難しいと感じる要件・理由」では、「介護職員内の配分方法の決定」55.5%、「その他職員への配分の検討」52.3%、「加算対象外の事業所職員との賃金バランス調整」50.3%と半数に達した。来年度から要件に加わる「見える化要件」(処遇改善の内容をホームページなどで公開)を困難とする法人は9.6%だった。

 次年度以降「経験・技能のある職員」の対象職員について74.6%が「増える」と回答。「自然増減で増えない」は11.4%で、「人数に一定の上限を設ける」との回答も5.6%あった。対象職員が増加した場合、「配分方法を見直して、あくまで総額は本加算額の範囲に収める」が83.7%と8割強を占めた。経営環境が同じであれば、「経験・技能あり」職員の増加とともに一人当たりの平均改善額が減少することになる。「配分方法は維持し、加算額以上は持ち出しとする」は9.9%だった。

事例① 竜間之郷

 大阪府大東市の老健「竜間之郷」(大河内二郎施設長)は介護職に限定して配分する。そのうえで、①10年以上の経験を持つ介護福祉士②全ての業務に従事する介護職員③「入浴のみ」「食事介助のみ」など、一部の業務に従事する介護職員――の3グループに分けた。大まかな改善額は①3万円②1万5000円③7500円。経験年数は施設独自の勤務評価指標を使って、他法人の経験年数も考慮する。3カ月の勤務を評価し、最高のA評価は他法人の経験年数をそのまま合算する。B評価は「勤務年数×0.75」、C評価は「勤務年数×0.5」。

事例② コウダイケアサービス

 神戸市で多数の居宅サービスなどを展開するコウダイケアサービス(毎田糸美社長)では、法人一括で申請を行った。改善額は「経験・技能のある介護職員」1万3000円、「その他の介護職員」6000円、「その他の職種」2000円と、「経験・技能のある介護職員」の処遇改善を重視。今回は土日出勤、夜勤など、他の職員をフォローするような働き方に取り組んだ職員を手厚く評価したという。現在、新たな社内評価プログラムを策定中。職員自ら目標を設定し、年3回、自己評価と上司との面談で進捗を確認する。達成度を採点することで、職員の評価を見える化し、処遇改善の公平感を担保する。

事例③ セントケア・ホールディング

 介護大手のセントケア・ホールディング(東京都中央区、森猛社長)は10月から全営業所で取得を開始。加算(Ⅰ)・(Ⅱ)がおよそ半々となっている。これにあわせて、介護福祉士への新たな人事給与制度を導入。経験年数と「専門性や役割範囲」に応じた賃金アップを行う。経験年数については「3年未満」「3~5年」「6~9年」「10年以上」の4つに区分。6月時点で同社の介護福祉士有資格者は3345人いるが、経験年数はほぼ4つの区分に均等に分かれる見込みだ。「専門性や役割範囲」では、主に人材育成に係る部分を評価。職能が高い順に「マスターインストラクター」「シニアインストラクター」「インストラクター」「トレーナー」の4ランクとする。

 モデルケースとして、最も経験・技能が高い「経験10年・マスターインストラクター」の場合、月額8万2000円以上の賃金増を見込む。加えて、社会福祉士や施設の計画作成担当者など他の職種に対しても、手当の改定や一時金の配分等を実施。金額は一部未定だが、加算以外の費用でも充当する予定としている。

(シルバー産業新聞2019年11月10日号)

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