施設サービスはどう変わっていくのか

特定加算を算定しない介護施設に未来はない/菊地雅洋(連載48)

特定加算を算定しない介護施設に未来はない/菊地雅洋(連載48)

 10月から算定できるようになった特定処遇改善加算は、議論の余地なく加算算定すべきであり、算定をためらう事業者からは近い将来 優秀な介護人材はいなくなる。

 現に介護福祉士養成校の就職担当教員の多くは、「特定加算を算定していない事業者には学生を紹介しない」と言い切っている。介護福祉士の資格を持つ就職希望者も、この加算については敏感に反応しており、今後の就職活動では加算算定の有無を重要な職場選択の要素と考える傾向がみられる。

 しかしこの加算の算定をためらい様子見している事業者がある。その理由は、加算算定することで配分できない職種あるいは配分比率の低い職種との公平性を欠くことになり、職場の和を保つことができないというものだ。だが国が支給して配分してよいという費用の算定努力をせず、配分可能な職員にそれを手渡さない事業経営者に、支給対象職員は信頼を寄せられるだろうか?その不信感こそが、職場の和を乱すもとにならないだろうか。

 配分対象にできない職員や配分率が低い職員がいたとしても、その人たちの給与が下がるわけではない。他人の給与が大幅アップするからと言って、それが妬ましくて職場の和を乱すような言動に走る職員がいるとすれば、それをたしなめ、そのような「せこい考え方」はやめようと諭すのが経営者や管理職の務めである。そもそも配分グループ分けや配分比率は国が基準を定めており、この部分は事業者単位で変えられないのだから、そこは全国共通のルールとして理解を促すべきだ。

 しかもこの加算によって経験・技能がある介護職員等は、昇給原資が得られているのだから、事業所の全体の収益分を加算配分した職員に回す必要がなくなる。それは加算配分しない職員への事業収益から得られる昇給原資が増えることを意味している。よって介護事業経営者は、安定して収益を確保することで必然的
に加算が配分されない職員の給与も増える可能性があることを説明し、実際にそうした方向に向けて舵を取るべきである。

 そのためにも、チームでスクラムを組んで高品質なサービスを提供し、顧客に選択され収益を挙げるように努力をすべきだと職員に周知徹底することが大事だ。つまり加算以外の収益をできるだけ配分率が低い職員や、配分されない職員に回す努力を行い、職場全体の職員給与の改善に努める姿勢が経営者に求められるのだ。

 安易に加算算定を見送り公平性を担保しようとするなど、事業経営者として恥ずべき姿勢である。そうした経営判断もできない事業者に将来はないので、加算算定しない事業所の介護職員は早く別の就職先を探した方が良い。

 では、事業者に強い裁量権が与えられたこの加算の配分をどのようにすべきだろうか。そのことについては次号で案を示したい。

 菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

(シルバー産業新聞2019年11月10日号)

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