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勤続10年介福士不在でも算定可 特定処遇改善加算

勤続10年介福士不在でも算定可 特定処遇改善加算

 2019年10月から導入される予定の特定処遇改善加算の詳細が明らかになってきた。厚生労働省が4月12日、同加算のQ&Aや計画書の様式などを通知した。Q&Aでは、勤続10年以上の介護福祉士が不在でも、加算要件を満たしていれば算定可能としている。一方、「経験・技能のある介護職員」の考え方は、「労使で話し合いの上、事業所ごとに判断することが重要」としており、裁量が大きい分、事業者には悩ましい問題だ。

10月算定、8月までに提出

 「介護職員等特定処遇改善加算」は、経験・技能を有する介護人材の更なる処遇改善を目指し、今年10月の消費税率引上げとあわせて新設される。同加算では賃金改善のルールが設定されており、まず賃金改善の対象を①経験・技能のある介護職員②その他の介護職員③その他の職員――の3つに分類。そして①の中で最低1人、「月額8万円以上の賃金改善」もしくは「賃金改善後の年収が440万円以上」の実績を作らなくてはならないほか、①の賃金改善の平均額が②の2倍以上、②の賃金改善の平均額が③の2倍以上であることも要件となる。
 今回の通知では、勤続10年以上の介護福祉士が在籍していなくても算定可能であることなど、より具体的な運用ルールが示された。同加算を10月から算定するためには、8月末までに都道府県などへ届け出る必要がある(来年度以降は2月末まで)。通知では届出に必要な計画書の様式も示している。
 介護サービス事業所を複数運営する場合、法人が一括して計画書を作成することが可能。指定権者の圏域を超えて、複数の事業所がある場合も、事業所一覧表などの別途書類の提出で一括作成が認められる。その際、「月額8万円増、または年収440万円以上の賃金改善」の実績は法人で1人ではなく、申請する事業所数と同じ人数を設定しなければならない。
 ただし、必ずしも「1事業所に1人ずつ」である必要はない。例えば、特養1カ所、デイ2カ所の計3事業所で一括申請した場合、特養で「月額8万アップor年収440万円」を3人つくれば、デイは実績なしでも構わないというのが厚労省の説明だ。設定が困難な事業所が含まれる場合は、合理的な理由を説明することで設定人数から除くことができる。
 また、月額8万円の処遇改善に現行の処遇改善加算による賃金改善分は含めることはできない。年収440万円以上での実績を目指す場合、今年度は年度途中からの施行であることから、通年で同加算を算定していれば年額440万円以上となることが見込まれる場合も要件を満たすとした。
 算定要件である職場環境等要件は「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」の区分ごとに1つ以上の取り組みを行うこととしているが、既に現行の処遇改善加算で実施している場合、新たな取り組みを行う必要はないとの見解を示した。また同加算に基づく取り組みを情報公表制度やホームページなどに掲載する「見える化要件」は20年度から要件に加わることとなっている。

「事業者の裁量」 に悩む現場

  「勤続10年以上」の考え方については、▽同一法人のみだけでなく、他法人や医療機関などでの経験も通算する▽事業所内で設けられている能力評価や等級システムを活用するなど、10年以上の勤続年数を有しない者であっても業務や技能などを勘案して対象とする――など、「事業所の裁量により柔軟に設定できる」とした。
 最も手厚い賃金改善が必要な「経験・技能のある介護職員」がいない場合、月額8万円、年収440万円以上の設定が必要になるのか。Q&Aでは事業所内で相対的に経験・技能の高い介護職員をグループに設定することを基本としつつ、介護福祉士の有資格者がいないなど介護職員間の経験・技能に明らかな差がない場合は、計画書などに設定をしない理由を具体的に記載することで認めるとしている。計画書には、事業所における「経験・技能のある介護職員」の考え方を必ず記載しなければならない。
 Q&Aが示されたものの、「勤続10年以上の考え方」「経験・技能のある介護職員」や配分方法の設定は事業者にとって悩ましい問題だ。現場からは、「事業者に丸投げの内容で、施設内でも意見が割れる」「方針が示されないことに職員の不安が高まっている」「職種間、法人内や近隣の事業所など、あらゆるバランスを考えるときりがない」といった声があがっている。
 

介護職員等特定処遇改善加算のQ&A(4月12日発出)

取得要件について

 問1 特定処遇改善加算は勤続10年以上の介護福祉士がいなければ取得できないか
 A ①現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の取得②介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取り組みを行っている③介護職員処遇改善加算に基づく取り組みについて、ホームページへの掲載などを通じた見える化を行っている――を満たす事業所が取得できることから、勤続10年以上の介護福祉士がいない場合も取得可能

 問2 職場環境等要件について、現行の介護職員処遇改善加算の要件を満たすものとして実施している取り組みとは、別の取り組みを実施する必要があるか
 A ▽資質の向上▽労働環境・処遇の改善▽その他――の区分ごとに1以上の取り組みを行うことが必要。これまで介護職員処遇改善加算を算定するに当たって実施してきた取り組みをもって、この要件を満たす場合、新たな取り組みを行うことまでは求めない

配分対象と配分ルールについて

 問5 「経験・技能のある介護職員」に該当する職員がいないことも想定されるのか。その場合、月額8万円、または年収440万円以上となる者の設定・確保は必要か
 A (略)介護福祉士の資格を有する者がいない場合や、比較的新たに開設した事業所で、研修・実務経験の蓄積などに一定期間を要するなど、介護職員間における経験・技能に明らかな差がない場合などはこの限りでない。

 問6 月額8万円の処遇改善を計算するに当たり、現行の介護職員処遇改善加算による改善を含めて計算することは可能か
 A 現行の介護職員処遇改善加算による賃金改善分とは分けて判断することが必要

 問7 処遇改善後の賃金が、役職者を除く全産業平均(440万円)以上かを判断するにあたっての賃金に含める範囲はどこまでか
 A 月額8万円、または年収440万円以上の処遇改善となる者の賃金額については手当等を含めて判断する。月額8万円については法定福利費などの増加分も含めて判断し、440万円については社会保険料などの事業主負担、その他の法定福利費などは含めずに判断する

 問8 2019年度は10月から算定可能となるが、経験・技能のある介護職員について、処遇改善後の賃金が年収440万円以上かを判断するにあたり、考慮される点はあるのか
 A 処遇改善後の賃金が年額440万円以上となることが原則だが、2019年度は6月間またはそれ以下の期間の特定処遇改善加算を加えても年収440万円以上を満たすことが困難な場合、12月間加算を算定していれば年収440万円以上となることが見込まれる場合も要件を満たすものとして差し支えない

 問9 「その他の職種」の440万円の基準を判断するにあたって賃金に含める範囲はどこまでか
 A 手当などを含める。法定福利費などは含めない

 問10 「その他の職種」の440万円の基準についての非常勤職員の給与の計算はどのように行うのか
 A 常勤換算方法で計算し、賃金額を判断することが必要

 問12 各グループの対象人数に関して、「原則として常勤換算方法による」とされているが、どのような例外を想定しているのか
 A 「その他の職種」については、常勤換算方法のほか、実人数による算出も可

 問13 平均改善額の計算にあたり、母集団に含めることができる範囲はどこまでか
  A 賃金改善を行わない職員も、平均改善額の計算を行うにあたり職員の範囲に含める

指定権者への届出について

問15 法人単位の申請が可能とされているが、法人単位での取り扱いが認められる範囲はどこまでか
A 法人単位での取り扱いは、▽月額8万円、または年額440万円以上となる者の設定・確保▽経験・技能のある介護職員、他の介護職員、その他の職種の設定――が可能。法人単位で月額8万円の処遇改善となる者などの設定・確保を行う場合、法人で 1人ではなく、一括して申請する事業所数に応じた設定が必要。事業所の中に、設定が困難な事業所が含まれる場合は、実態把握にあたり、その合理的理由を説明することにより、設定の人数から除くことが可能。なお、取得区分(Ⅰ)(Ⅱ)と異なる場合であっても、介護職員等特定処遇改善加算の取得事業所間においては、一括申請が可能
(シルバー産業新聞2019年5月10日号)

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