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厚労省Q&A 認知症チームケア加算の研修に「BPSDケアプログラム」

厚労省Q&A 認知症チームケア加算の研修に「BPSDケアプログラム」

 厚生労働省は4月18日に発出した2024年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.14)で、施設サービス、認知症共同生活介護(グループホーム)に新設された「認知症チームケア推進加算」の算定要件の一つ「認知症チームケア推進研修」について、東京都が開発した「日本版BPSDケアプログラム」(以下、ケアプログラム)を認めることを示した。

 加えて、同加算で作成が必要な「認知症チームケア推進加算に係るワークシート」についても、ケアプログラムで利用者の状態評価や計画作成・見直しを行うオンラインシステム「DEMBASE」への記録をもって代えられると明記した。

 ケアプログラムは東京都医学総合研究所が開発し、18年より都内での普及を開始。「効果検証を重ね、エビデンス性の高い認知症ケアプログラムとしては国内唯一と言ってもよい」と同研究所の西田淳志氏は話す。

 同加算の主旨にも沿う、PDCAに沿った認知症ケアをチームで実践するのがケアプログラムの特長。まず利用者の行動からSOSサインを拾い上げ、次に、身体的ニーズを中心とした23項目のチェックリストで行動の背景要因を分析する。西田氏は「BPSDは身体の状況に起因するケースが多い。痛み・かゆみを本人がうまく伝えられず、放置されることで症状が悪化する」と説明する。

 分析をもとに、実行可能なケア計画を策定。「50字以内」で簡潔に記載することも、チームケアを意識したものだ。全員が徹底的に同じケアを継続し、1カ月後に再評価。改善が見られない場合は要因分析に戻り、計画を見直す。

 評価・計画などは「DEMBASE」で記録。入力・分析などケアの中核を担う職員は「アドミニストレーター研修」を受講し、これが今回の加算要件として認められた。同研修はeラーニング4時間とZoomによるフォローアップ研修4時間(2時間×2回)と短時間かつオンラインで実施できるのが特長。4月現在、のべ1533人が修了している。

 ケアプログラムは現在都内52市区町村で活用。都は今年度中に全62市区町村への拡大をめざす。今回、算定要件にもなったことで、今後は他道府県への普及も積極的に支援していく方針だ。

活用事例 根本要因が見える化 効果的な医介連携に

 医療法人社団永生会が運営する「認知症グループホーム南風」(東京都八王子市)はBPSDケアプログラムを活用し、報酬改定当初より認知症チームケア推進加算(Ⅱ)を算定している。

 利用者個々に、職員全員で本人の困りごとや気になる言動をアセスメント。月1回のユニット会議ではBPSDの捉え方や対応策などを職員間で共有し、ケアの視点を統一できるよう努める。

 永生会人財開発室の奈良田敬氏は「ケアプログラム導入前も定期的なカンファレンスは行っていたが、職員の感覚や感情が優先されがちだった。今はデータから根拠をもって、利用者の困りごとにアプローチできるようになった」と話す。

 例えば、易刺激性・不安定性の評価が悪化していた利用者をチェックリストで分析したところ、水分不足や排尿・排便の問題が浮かび上がった。ケア計画では排便の不調を背景要因と仮定し、「1日1500mlを目安に水分を提供する」を方針に。BPSDをスコアリングするNPI評価では57から45に改善した。

 医師との連携にも変化が。例えば興奮や暴力などの行動がみられる際、従来は症状のみを報告し向精神薬や安定剤の処方にとどまることが多かった。しかし、背景要因で「排便の問題」が上がることで、排便に関する処方や水分摂取量の見直しなど、根本的な解決につながるケースも増えてきているそうだ。
(シルバー産業新聞2025年5月10日号)

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