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24年改定検証 上限価格制 財政効果限定的/業務負担煩雑

2024年改定検証で福祉用具貸与価格の適正化に関する調査結果が、4月14日の介護給付費分科会で公表された。3年に1度の見直しが実施される貸与価格の上限価格制の経営や事務負担、利用者へのサービス提供への影響を調査するもので、介護保険総合データベースの福祉用具貸与の請求全データを用いて分析、貸与事業所(7078事業所)の悉皆調査(有効回収率46.3%)、利用者(265万人)のうち1事業所あたり2票調査(同42.5%)を行った。
24年4月貸与実績
介護保険総合データベースの24年4月サービス提供分で、総貸与件数1117万件は、上限価格制の施行前、2017年10月提供分が786万件であったことから、上限価格制の導入以降9年間で、331万件(42.1%)増加した。介護保険利用者の増加に伴い、在宅介護の基本サービスとして受給者が伸びている。これまでのところは上限価格制の導入が福祉用具貸与の阻害要因にはなっていない。
24年4月時点の貸与実績(17年10月比、増加率)を詳しくみると、総貸与額は369億円(275億円、34.1%増)、貸与商品数1万2579件(1万4635件、▲14.1%)、利用者数274万人(213万人、28.6%増)。1人当たり貸与額1万3454円(1万2934円、4.0%増)、請求事業所数7171事業所(7325事業所、▲2.1%)だった。
貸与種目別実績
下表が用具別の件数と貸与額(表参照)。この間、貸与件数は670万件から975万件に、45.5%増加。中でも手すりは154万件291万件に、88.7%増になった一方、移動用リフトは4.8万件⇒4.5万件に▲6%、自動排泄処理装置は865台が322台に減少した。24年4月の新たな上限設定を超える貸与件数は、119万件で、貸与額で48.1億円、上限を超える分の総額は1054万円となり、貸与全額の2.2%を占める。
財政削減効果
ここから、商品別に平均価格と標準偏差を算出して上限価格を試算したところ、平均貸与額は次回で▲0.18%、次々回で▲0.09%となり、上限価格制による財政削減効果が著しく減少していくのが分かる。
調査では、各貸与種目で、最も貸与件数の多い商品について、17年10月、18年10月、21年4月、23年4月、24年4月サービス分の貸与価格の分布状況と、各時点で仮に上限を設定した場合のシミュレーションを実施。手すりA商品では、平均価格、標準偏差ともに回を追うごとに低下し、24年4月時点では、平均価格2929円、標準偏差351円、上限3350円、貸与総額4億1973万円となる。次回シミュレーションでは、上限3280円、上限を超える割合は16.7%、貸与総額4億1879万円で、貸与総額は▲94万円(▲0.2%)と試算された。
しかし、上限を超える貸与価格が1件以上ある利用者の割合は、次回シミュレーションで27.8%、次々回シミュレーションで28.5%が該当。価格など契約の見直しが発生する。
調査では、各貸与種目で、最も貸与件数の多い商品について、17年10月、18年10月、21年4月、23年4月、24年4月サービス分の貸与価格の分布状況と、各時点で仮に上限を設定した場合のシミュレーションを実施。手すりA商品では、平均価格、標準偏差ともに回を追うごとに低下し、24年4月時点では、平均価格2929円、標準偏差351円、上限3350円、貸与総額4億1973万円となる。次回シミュレーションでは、上限3280円、上限を超える割合は16.7%、貸与総額4億1879万円で、貸与総額は▲94万円(▲0.2%)と試算された。
しかし、上限を超える貸与価格が1件以上ある利用者の割合は、次回シミュレーションで27.8%、次々回シミュレーションで28.5%が該当。価格など契約の見直しが発生する。

【介護DB分析】事業所別商品別貸与額の経年変化
経営への影響
貸与価格が上限を超えた品目があった貸与事業所は76.2%で、上限見直しを理由に取扱商品を見直した事業所の割合は、24年度調査で、「取扱商品の種類を縮小した」4.9%(21年度調査4.6%)、同「拡大した」27.1%(21.2%)、「見直していない」67.3%(72.3%)と、対応をはかった事業所が増えている。
収益への影響は、「減少した」が62.0%(21年49.9%)。「増加した」7.2%(22.4%)と、収益への影響が拡大している。
諸経費についても、水光熱費、通信運搬費、人件費が1%~5%増加した事業所の割合は50%強、委託費(レンタル卸等の費用含む)は43%、賃借料は21%の事務所で増加した。
収益への影響は、「減少した」が62.0%(21年49.9%)。「増加した」7.2%(22.4%)と、収益への影響が拡大している。
諸経費についても、水光熱費、通信運搬費、人件費が1%~5%増加した事業所の割合は50%強、委託費(レンタル卸等の費用含む)は43%、賃借料は21%の事務所で増加した。
対応業務の状況
価格交渉を実施した事業所の割合は、対仕入れ先で37.9%(21年20.0%)。対委託先(レンタル卸等)で52.4%(36.5%)。委託先(レンタル卸)の利用比率の見直しは、「実施」47.2%(42.5%)。介護保険による福祉用具貸与件数に対する委託先の利用比率は、3割未満22.4%(24.2%)、3~10割未満24.3%(21.8%)、10割53.3%(54.0%)。
貸与価格の上限見直しを理由に発生した事務作業は、多い順に「ケアマネジャーへの貸与価格変更の説明」88.2%、「ケアマネジャーへの説明文書の作成」80.4%、「利用者への説明文書の作成」76.8%だった。
「システム改修」は「実施していない」55.3%。事務作業へ対応の工夫として、「変更点のみ変更する様式等を用意」34.2%、「法人本部で一括対応」27.1%だった。
貸与価格の上限見直しを理由に発生した事務作業は、多い順に「ケアマネジャーへの貸与価格変更の説明」88.2%、「ケアマネジャーへの説明文書の作成」80.4%、「利用者への説明文書の作成」76.8%だった。
「システム改修」は「実施していない」55.3%。事務作業へ対応の工夫として、「変更点のみ変更する様式等を用意」34.2%、「法人本部で一括対応」27.1%だった。
利用者への影響
利用者へのサービス提供の変化については、「モニタリングの訪問頻度は変更していない」91.0%、「メンテナンスの実施頻度は変更していない」92.2%。貸与価格の上限見直しを理由とした事業所としての利用者への対応は変わらず、サービス提供が行われているとした。
【選択制導入】用具別購入率/要介護度別/医師の所見入手先/事業所ヒアリング
年4月施行の選択制(表)。固定用スロープは販売を選択した割合は新規利用者で19.8%、継続利用者で11.1%だった。歩行器(歩行車を除く)は、新規2.8%、継続1.7%。購入を選択した利用者が決め手としたのは、「長期利用が想定されるため」5割台、「価格が安価なため」2割台で、固定用スロープについては「メンテナンスの必要性が低いため」が1割を占めた。
購入を選択した利用者のうち要支援は3割、要介護1~4は2割台、要介護5は2割弱だった。
医師の所見の入手は、「外来の主治医・かかりつけ医」28.9%、「介護サービス事業所のリハ職」27.0%、「入院先の主治医・かかりつけ医」18.3%、「病院・診療所のリハ職」8.9%など。
貸与事業所3事業所へのヒアリングでは「利用者、ケアマネジャーへの説明等の対応の負担が大きい」「貸与価格の引き下げよりも、諸経費の増加の方が経営への影響が大きい」「選択制の導入は、主に福祉用具専門相談員が利用者へ説明することが多く、多職種からの意見なども参考に利用者が貸与か購入の選択を行っており、制度の趣旨に沿った運用が行われていた」等の意見があった。
購入を選択した利用者のうち要支援は3割、要介護1~4は2割台、要介護5は2割弱だった。
医師の所見の入手は、「外来の主治医・かかりつけ医」28.9%、「介護サービス事業所のリハ職」27.0%、「入院先の主治医・かかりつけ医」18.3%、「病院・診療所のリハ職」8.9%など。
貸与事業所3事業所へのヒアリングでは「利用者、ケアマネジャーへの説明等の対応の負担が大きい」「貸与価格の引き下げよりも、諸経費の増加の方が経営への影響が大きい」「選択制の導入は、主に福祉用具専門相談員が利用者へ説明することが多く、多職種からの意見なども参考に利用者が貸与か購入の選択を行っており、制度の趣旨に沿った運用が行われていた」等の意見があった。

(シルバー産業新聞2025年5月10日号)