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富山県 テクノロジー予算拡充 補正で年5.2億円に

富山県 テクノロジー予算拡充 補正で年5.2億円に

 富山県の65歳以上高齢者人口は2022年時点で33.1万人。20年の33.5万人をピークに、緩やかに減少を始めている。高齢化率は22年で32.9%と、3人に1人の割合。団塊ジュニア世代が65歳以上になる40年には39.1%に達すると推計されている。昨年策定した第9期介護保険事業支援計画(富山県高齢者保健福祉計画)は40年を見据えたもの。計画の柱「地域包括ケアシステムの深化・推進を支える体制づくり」では、介護テクノロジーを活用した現場の生産性向上を施策の一つに位置付けている。

 介護現場の生産性向上に関する具体的な施策は①補助金を活用した介護テクノロジー導入支援②導入・運用等の伴走支援③業務改善・生産性向上に取組む介護事業所の周知・横展開――の3つ。同県厚生部高齢福祉課の喜多智浩係長は「事業を通じて生産性向上に対する機運の高まりは感じています。介護報酬で加算ができたことも後押ししているのでは」と話す。

 施策①は国の「介護テクノロジー導入支援事業」の運用。今年度は約100法人・300事業所から申請があり、昨年度の120事業所から大幅に増加した。「想定していた以上の問合せ・申請数。介護ロボットとICTを複数組み合わせる『パッケージ型導入』は補助上限1000万円。ここの影響が大きい」と喜多氏は述べる。

 これを受け、同県では当初予算1.6億円に加え、11月に補正予算3.6億円を確保。申請への順次対応と共に、追加募集をかけている。

ワンストップ機能を向上

 施策②の伴走支援は県社会福祉協議会が運営する「とやま介護テクノロジー普及・推進センター」に事業委託。相談・研修・展示・情報発信に加え、今年度から導入補助金申請の受付・内容確認も担う。

 同センターは介護保険や障害福祉の各種制度で利用できる福祉用具を多数展示し、試用貸出も行う。展示スペースでは、導入前に使用感が得られるよう浴室などの生活環境も再現している。喜多氏は「展示・体験場所があり、介護テクノロジー機器も豊富」と説明する。
普及・推進センターの見守り機器展示コーナー。各社製品の検知・発報を比較できる

普及・推進センターの見守り機器展示コーナー。各社製品の検知・発報を比較できる

歩行支援機器や移動・移乗リフトも充実。その場で試用体験も

歩行支援機器や移動・移乗リフトも充実。その場で試用体験も

 補助金申請を除く同センターへの今年度の相談件数は9月末時点で272件。高井雅美所長は「実機を見たい・体験したい、他施設で使用していたので有用性を確かめたい、といった相談が多い。機器の特徴を伝えるだけでなく、相談者の現場課題を汲み取り、ケアの質や業務改善に向けた目標を見える化・共有していくことも役目です」と話す。製品カテゴリで問合せが多いのは見守り機器。「効率化よりも、まず入所者の安全確保に対するニーズ。夜間のケアの質向上を介護テクノロジーに求めています」(高井所長)

 年間3施設を対象とした個別の伴走支援事業も実施。課題抽出から取組の方向性、目標設定、成果の確認までを3~6カ月かけてワンストップで支援する。「業務改善とケアの質向上。この2つに軸足を置いた導入計画・目標になるよう、一緒に練り上げていきます」と高井所長。いずれは自分たちで改善するチームを組成することがゴールの一つでもあると述べる。

 また、今年度は「介護ロボット等導入シリーズ研修」も実施中。介護テクノロジーの導入プロセスを習得するもので、9月~1月にかけて1回3時間の研修を計6日間行う。現在7施設・14人(1施設2人)が参加している。

 施策③の周知・横展開では、16年度より「がんばる介護事業所」表彰制度を実施。介護サービスの質の向上や介護人材確保に向けた取組を行う県内事業所を自立支援部門・雇用環境部門の2部門で表彰する。受賞事業所はその取組をパンフレットで紹介する。

 昨年度、自立支援部門で表彰を受けた特別養護老人ホームささづ苑(富山市)を運営する社会福祉法人おおさわの福祉会(当時「宣長康久会」)は、介護テクノロジーを活用した生産性向上、職員の待遇改善、多様な人材の活用などの取組で、同年度に内閣総理大臣表彰も受賞している。

(シルバー産業新聞2025年1月10日号)

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