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新しいカタチの住宅型有料がオープン、「みたか多世代のいえ」(東京都三鷹市)

在宅訪問医が一緒に暮らす多世代型老人ホームが、このほど東京都三鷹市にオープンした。形態は住宅型有料老人ホームで、シニア向けの居室15室(全室個室)、シングル親子向け居室4室、若者単身者向け居室が2室、多目的居室1室が併設される。終末期にも対応し、最期まで自分らしく暮らし続けることを掲げる。開設の動機や目的などを”家守”と自ら名のる村野賢一郎さん(一般社団法人多世代のいえ代表理事)に話を聞いた。

医師の村野賢一郎さん
オープニングにケア職など60名が参加
5月13日にようやくオープニングセレモニーを開くことができた。これまで関わってくれた人やこれから一緒に作っていく仲間、そして住人やその家族のみなさんがくす玉を割って祝ってくれた。この住まいは、介護が必要になったシニアが、難病や末期がんなど医療が必要になっても、元気な子どもや若い世代が一緒に暮らすことで、自然と意欲が湧いてくるような生活を考えて創っている。
また建物にはシェア図書館やキッチンを作って外の方々にも開放し、住人との交流を図っている。要介護者が住むので、ケアは24時間体制を整えているが、調理のスタッフが別にいるのも特徴で、日々の暮らしを支えてくれる仲間がいる。ほんとうに多くの方々が関わっている。
私がそうだったように、人は誰でも自暴自棄になることもある。でも生きてさえいれば、誰かが親身に相談に乗ってくれる時がくる。私たちはそのための場所、とまり木になりたい。悩みや心配ごとのない人はいない。それを誰かに話す機会がないことが一番問題なのかもしれない。
5月13日にようやくオープニングセレモニーを開くことができた。これまで関わってくれた人やこれから一緒に作っていく仲間、そして住人やその家族のみなさんがくす玉を割って祝ってくれた。この住まいは、介護が必要になったシニアが、難病や末期がんなど医療が必要になっても、元気な子どもや若い世代が一緒に暮らすことで、自然と意欲が湧いてくるような生活を考えて創っている。
また建物にはシェア図書館やキッチンを作って外の方々にも開放し、住人との交流を図っている。要介護者が住むので、ケアは24時間体制を整えているが、調理のスタッフが別にいるのも特徴で、日々の暮らしを支えてくれる仲間がいる。ほんとうに多くの方々が関わっている。
私がそうだったように、人は誰でも自暴自棄になることもある。でも生きてさえいれば、誰かが親身に相談に乗ってくれる時がくる。私たちはそのための場所、とまり木になりたい。悩みや心配ごとのない人はいない。それを誰かに話す機会がないことが一番問題なのかもしれない。

共に暮らす理由とは
医師である前に、いち住民としてなぜ共に暮らすのか。そこには訪問医としての悩みがあった。居宅療養管理指導で地域のお宅を訪問しているが、高齢者が抱える孤独感や虚無感は、医療だけでは太刀打ちできないと思ってきた。1400人の要介護認定者を対象にうつ病の割合を調査した結果があるが、なんと約8割がうつ病だった。医療より生活を変える必要性を感じる。
また、月2回の訪問診療では患者さんの生活が見えにくい。例えば、腰が痛いので薬を処方し、2週間後に伺っても、その間、生活はどうだったのか医師には見えにくい。患者さんの様子が心配でもあり、何よりそれでは医師としてやり甲斐がない。さらに、訪問診療は24時間、365日対応となっているが、自社のクリニックだけでは対応が難しいのが現状で、外部から医師を呼んでいる。患者さんにとっては知らないドクターが来ることになる。かかりつけ医として身近にいる存在になりたかった。
医師である前に、いち住民としてなぜ共に暮らすのか。そこには訪問医としての悩みがあった。居宅療養管理指導で地域のお宅を訪問しているが、高齢者が抱える孤独感や虚無感は、医療だけでは太刀打ちできないと思ってきた。1400人の要介護認定者を対象にうつ病の割合を調査した結果があるが、なんと約8割がうつ病だった。医療より生活を変える必要性を感じる。
また、月2回の訪問診療では患者さんの生活が見えにくい。例えば、腰が痛いので薬を処方し、2週間後に伺っても、その間、生活はどうだったのか医師には見えにくい。患者さんの様子が心配でもあり、何よりそれでは医師としてやり甲斐がない。さらに、訪問診療は24時間、365日対応となっているが、自社のクリニックだけでは対応が難しいのが現状で、外部から医師を呼んでいる。患者さんにとっては知らないドクターが来ることになる。かかりつけ医として身近にいる存在になりたかった。

多世代が暮らす日常とは
現在、シニアの居室は半分ほど決まり、シングル親子と若者の部屋も人が入り、多世代による生活が始まっている。認知症の人の口元を子どもがぬぐってくれたりと、生活の中から交流が生まれている。お手玉などのお年寄りが知っている昔遊びは子どもと相性がよい。一緒にビラを折るなど微笑ましい情景も生まれている。
食事は、調理スタッフが3食を手作りで賄い、家庭料理を提供し、一緒に食卓を囲む。住人も一緒に作り、参加することで自己肯定感を高めることができる。食材は地産地消に拘り、心臓や腎臓病にも配慮している。梅の季節には若者が和歌山で仕込んできた梅を、90歳の住人と漬け込むこともあった。行事として一時だけやるのではなく、日常的にやっているところに価値がある。
現在、シニアの居室は半分ほど決まり、シングル親子と若者の部屋も人が入り、多世代による生活が始まっている。認知症の人の口元を子どもがぬぐってくれたりと、生活の中から交流が生まれている。お手玉などのお年寄りが知っている昔遊びは子どもと相性がよい。一緒にビラを折るなど微笑ましい情景も生まれている。
食事は、調理スタッフが3食を手作りで賄い、家庭料理を提供し、一緒に食卓を囲む。住人も一緒に作り、参加することで自己肯定感を高めることができる。食材は地産地消に拘り、心臓や腎臓病にも配慮している。梅の季節には若者が和歌山で仕込んできた梅を、90歳の住人と漬け込むこともあった。行事として一時だけやるのではなく、日常的にやっているところに価値がある。

「みんなの図書館」で社会参加
建物の入り口には「みんなの図書館とまり木」というシェア図書館を配置している。住人も外部の人も、この小さな箱棚のオーナーになれて、それぞれの思いで集めた本や小物などを並べることができる。本棚は人気で、80ある本棚は開館して間もないにも関わらず、ほとんど利用者が決まっている。縄文時代について詳しい人は、本を並べるだけでなく、昔の草履を作って並べている。その人らしさを引き出して、人と人が繋がり始めている。
この本棚を通して感動的なエピソードがある。訪問診療しているAさんは、元来社交的で様々な社会活動に参加してきた経歴を持つ。しかし高齢になった今、外出したい気持ちと、衰えた自分の姿で人に会いたくない気持ちの狭間で、強く葛藤するなど、抑うつ状態だった。そこでAさんの大切にしている本をシェア図書館の一角に収めることを提案した。本はガザやイスラエル、戦争、性差別といった社会問題にまつわるものが多く、その本を読んだとある別の人が、思うところがありAさんに手紙を書いた。その手紙をAさんに渡したところ泣いて喜んでくれた。このように本は人と人の交流を生み出す力をもっている。他にも人と人とのつながりをどう作っていくのかを考えている。
建物の入り口には「みんなの図書館とまり木」というシェア図書館を配置している。住人も外部の人も、この小さな箱棚のオーナーになれて、それぞれの思いで集めた本や小物などを並べることができる。本棚は人気で、80ある本棚は開館して間もないにも関わらず、ほとんど利用者が決まっている。縄文時代について詳しい人は、本を並べるだけでなく、昔の草履を作って並べている。その人らしさを引き出して、人と人が繋がり始めている。
この本棚を通して感動的なエピソードがある。訪問診療しているAさんは、元来社交的で様々な社会活動に参加してきた経歴を持つ。しかし高齢になった今、外出したい気持ちと、衰えた自分の姿で人に会いたくない気持ちの狭間で、強く葛藤するなど、抑うつ状態だった。そこでAさんの大切にしている本をシェア図書館の一角に収めることを提案した。本はガザやイスラエル、戦争、性差別といった社会問題にまつわるものが多く、その本を読んだとある別の人が、思うところがありAさんに手紙を書いた。その手紙をAさんに渡したところ泣いて喜んでくれた。このように本は人と人の交流を生み出す力をもっている。他にも人と人とのつながりをどう作っていくのかを考えている。

生活リハビリの考えを取り入れる
建物は、1階から3階まで吹き抜け構造で、全体に明るく、開放感がある。居室もシニアだけをかためず、多世代が自然と交流できる配置にしている。家具や日用品の持ち込みは可能で、本人らしい生活を重視する。トイレは個室内に配置され、シャワールームや電気コンロ付きの部屋もある。
設備には生活リハビリの考えを取り入れ、“できることは簡単にあきらめない”をモットーにしている。例えば、トイレの手すりは、自分で頑張れるように工夫されている。リハビリデザイン研究所の山田穣さんにお願いしたが、山田さんは、身体の自然な動作に着目して、手すりの位置や構造を工夫している。「便座と手すりの距離が大事で、用をたす時に正面にある手すりに摑まることで、おしりが自然と持ち上がる」と説明する。縦型の手すりだと、本人は握りっぱなしになりがちで、次の動作に移りにくいためだそうだ。お風呂も個浴に拘り、ヒノキのお風呂でゆっくり温まれる。
建物は、1階から3階まで吹き抜け構造で、全体に明るく、開放感がある。居室もシニアだけをかためず、多世代が自然と交流できる配置にしている。家具や日用品の持ち込みは可能で、本人らしい生活を重視する。トイレは個室内に配置され、シャワールームや電気コンロ付きの部屋もある。
設備には生活リハビリの考えを取り入れ、“できることは簡単にあきらめない”をモットーにしている。例えば、トイレの手すりは、自分で頑張れるように工夫されている。リハビリデザイン研究所の山田穣さんにお願いしたが、山田さんは、身体の自然な動作に着目して、手すりの位置や構造を工夫している。「便座と手すりの距離が大事で、用をたす時に正面にある手すりに摑まることで、おしりが自然と持ち上がる」と説明する。縦型の手すりだと、本人は握りっぱなしになりがちで、次の動作に移りにくいためだそうだ。お風呂も個浴に拘り、ヒノキのお風呂でゆっくり温まれる。

“私らしく最期まで暮らす”いえ
確かに多世代や集団で暮らすことは難しい面もある。子どもが走り回り、お年寄りにぶつかりケガをさせては困る。ささいなもめごともあるが対話を通して解決を図っている。私もある意味24時間仕事をしていることになるが、しかし、そうした点を補って余りある価値とやりがいが、この住まいにはあると感じている。
入居金等については、このエリアの有料老人ホームの相場に設定している。住宅型有料では50床を基準に建設するのが一般的だが、ここはその半分以下。どうしても費用が高くなるが、その分、付加価値を付けている。実は私の専門は在宅緩和ケア。いろいろな有料老人ホームを見てきたが、どうしても最期は病院でという場合も多い。しかしここは終末期でも緩和ケアが行えて、家族や親しい人に手を握られて最期を迎えることができる。これは大きな安心だと思う。「多世代のいえ」は“私らしく最期まで暮らす”いえ。すべての人に生き甲斐感をもって欲しい。生きていてよかった、そして長生きしたいと言える社会であって欲しい。
みたか多世代のいえ
東京都三鷹市上連雀4-10-14
確かに多世代や集団で暮らすことは難しい面もある。子どもが走り回り、お年寄りにぶつかりケガをさせては困る。ささいなもめごともあるが対話を通して解決を図っている。私もある意味24時間仕事をしていることになるが、しかし、そうした点を補って余りある価値とやりがいが、この住まいにはあると感じている。
入居金等については、このエリアの有料老人ホームの相場に設定している。住宅型有料では50床を基準に建設するのが一般的だが、ここはその半分以下。どうしても費用が高くなるが、その分、付加価値を付けている。実は私の専門は在宅緩和ケア。いろいろな有料老人ホームを見てきたが、どうしても最期は病院でという場合も多い。しかしここは終末期でも緩和ケアが行えて、家族や親しい人に手を握られて最期を迎えることができる。これは大きな安心だと思う。「多世代のいえ」は“私らしく最期まで暮らす”いえ。すべての人に生き甲斐感をもって欲しい。生きていてよかった、そして長生きしたいと言える社会であって欲しい。
みたか多世代のいえ
東京都三鷹市上連雀4-10-14
