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手書き業務からの脱却でケアの質向上 ~キヤノンシステムアンドサポートの伴走支援~

手書き業務からの脱却でケアの質向上 ~キヤノンシステムアンドサポートの伴走支援~

 特別養護老人ホーム絹の道(東京都八王子市、社会福祉法人美薗会)は来年で30年を迎える。在宅介護で疲弊する家族の支援を大切にし、他施設では入所を断られるような認知症状の重い人、経管栄養や吸引など医療依存度が高い人を、介護保険制度創設以前から優先的に受入れてきた。

 開設20年が過ぎた頃から設備の老朽化が問題に。備え付けのナースコールは動作不良が目立った。また、見守り機器はスポンジとアルミを2枚のアクリル板で挟んだ施設の手作りベッドセンサー。端座位になり踏むと、内部のアルミが通電し発報される。「かなりアナログな方法でした」と副施設長の桒原利政さんは振り返る。

 そこで、施設内設備の全面的な見直しを検討するため、業務改善委員会を立上げた。ベッド周りは、見守り機器とナースコールが連携できるものを条件に、展示会などで情報収集・試用にあたった。「普段から機器に触れることがほとんどなかったメンバーだったので、デモ試用などかれこれ2年かかりました」と援助課課長の佐藤裕紀さん。「『良いものがあれば』ではなく、導入を大前提に妥協せず最適なものを探す気持ちが強かったです」と語る。
桒原副施設長

桒原副施設長

見守り・ナースコール・インカムの一体的運用

 一昨年、補助金を活用し①見守り機器とカメラ②ナースコール③インカム④iOS端末――を一括導入した。見守り機器は施設全80床のうち40床に設置。マットレスの下に敷くタイプで、睡眠状態や呼吸・心拍などのバイタルデータを測定する。「試用機器の中で最も感度が高かった。動き出し・起き上がり・離床の見守りポイントを入所者ごとに設定できます」と佐藤さんは話す。

 オプションのカメラは転倒リスクが比較的高い入所者へ使用。通知があった際には端末で映像を確認し、訪室の判断をその場で行う。仮に転倒があった場合も映像が録画され、再発予防策が立てやすく、虐待疑いの解消にも。転倒等の事故報告は年20~30件だったのが、昨年は10件に改善した。「転倒が減るとけがや骨折も減る。通院の人手も緩和されます」(桒原さん)。

 インカムは日中、フロア・浴室・医務担当が装着。入浴時に処置が必要なときに看護師を呼べる体制にしている。夜間は1、2階の夜勤職員が主にフロア間の連絡に活用。人員が少ない夜勤帯で、職員の安心感にもつながっている。
カメラは天井や壁など 入所者ごとに適した画角で取り付け可

カメラは天井や壁など 入所者ごとに適した画角で取り付け可

マットレス下に敷く見守り機器

マットレス下に敷く見守り機器

タブレット端末でナースコール、見守り機器の情報を一元化

タブレット端末でナースコール、見守り機器の情報を一元化

運用をあきらめさせない伴走型支援

 同施設職員の平均年齢は47歳。「ICT機器に関しては全員が素人。使い慣れるまでに相当な時間がかかりました」と佐藤さん。「はじめの頃はセンサーの敷く位置の間違い、スイッチの入れ忘れなどシンプルなミスも頻発。カメラを見ていない職員がいたので、理由を聞くと『タブレットでの見方が分からない』と。そんな状況からのスタートです」と話す。

 それでもあきらめなかったのは、キヤノンシステムアンドサポートの支援が大きかったと桒原さん。「補助金活用から、導入・運用まで伴走していただける。我々にとって『ジョブコーチ』のような存在です」と強調する。「より使いこなすには職員のさらなるスキル向上が不可欠。ICT機器から得た情報をもとにどう役割を決めて動くか。これからも『人とテクノロジーの融合』に取り組んでいきます」。

(シルバー産業新聞2024年7月10日号)

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