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コロナ感染対策がICT化を加速 ~キヤノンシステムアンドサポートの伴走支援~

コロナ感染対策がICT化を加速 ~キヤノンシステムアンドサポートの伴走支援~

 特別養護老人ホームひまわりの丘(千葉県松戸市、社会福祉法人松栄会)は開設20年が経過し、電話機やナースコールを入れ替えるタイミングを検討していた。弱電設備であるWi―Fi環境の拡張や整備の中で、ナースコールのデジタル化、見守り機器、カメラ等を介護ロボット/ICT導入支援事業の補助金を活用し、2024年に導入。運用を開始した。

 ナースコールおよび電話の内外線、見守り機器の受信がスマートフォン1台で可能となり、業務効率化が進んだ。「パソコンも含め端末が増えたので、IPアドレスが枯渇しないようVLANを整備しました」と総務部・鏑木諭部長は話す。見守り機器はベッドの脚に敷くタイプを選定。見守りカメラは28台が稼働し、主に多床室の入所者の見守りに使用している。
鏑木総務部長

鏑木総務部長

業務改善チームから普及

 介護福祉士の川平健太さんは「デジタル化と急に言われると、作業が増えるイメージを持つ職員がいます。そうではなく、いかに楽になるかを丁寧に伝えていきました」と導入当初を振り返る。

 普及の起点となったのが、22年度に立ち上げたプロジェクトチーム。「職員の幸せ」「働きやすい環境づくり」などを目的に、施設のさまざまな業務改善を模索してきた。メンバーは各部署からスカウトした6人で構成。「経験年数を問わず若い職員が中心で、興味を持ってICT機器を色々試してもらえます」と川平さん。メンバーが効率的に仕事をこなすことで、他の職員のICT機器に対する目も変わってきたそうだ。

 さらにICT機器への理解を後押ししたのが、新型コロナウイルス感染症対策の経験。感染者の隔離用に個室を設け、特定の職員しか入れないようゾーニングを徹底したが、ケア内容を報告するためには、ケアを実施した部屋から出て防護服を脱ぎ、クリーンな状態になってから暗記したケア内容を紙に手書きしなければならなかった。

 しかし、ICT機器導入後は職員が室内にパソコンとスマートフォンを持ち込み、その場で記録のやり取りが行えるように。その結果、出入りの頻度が減ったことでゾーニングの精度が向上し、以前と比べて感染拡大が抑えられた。あわせて、オンライン会議やチャットツールも活用。「職員が施設に集まれるのは2カ月に1回のペースでしたので、ICT機器は必要だという共通認識が少しずつ高まりました」と川平さんは述べる。
見守りカメラとナースコールが連動

見守りカメラとナースコールが連動

多床室にプライバシー保護のパーテーションを設置し、ベッド周りのセンシング精度もアップ

多床室にプライバシー保護のパーテーションを設置し、ベッド周りのセンシング精度もアップ

「どう良くするか」の意識が外国人の受入れにも

 このほど、4月の報酬改定で新設された生産性向上推進体制加算(Ⅱ)の届出も。チーム内では既に上位加算(Ⅰ)への意欲も高いそうだ。

 鏑木部長は今後の課題にDX化を挙げる。「情報の共有や発信方法は、まだまだアナログな部分が残っています。日誌も介護記録ソフトを見ず、口頭での申し送りで済ませようとする職員もいます。自分から情報を取りに行く意識を植え付けなくてはなりません」。

 同法人全体の職員は188人。うち外国人職員40人程を雇用する。千葉県留学生受入プログラムを活用し、4月からは在留資格が「留学」から「介護」となった4人が介護福祉士として働く。「これまで外国人職員の離職者はゼロです。声をかけることを大切にし、字の書き方一つから、より良いコミュニケーションの取り方を職員自らが考え自発的に行ってくれています。お互いの信頼関係を築きながら、これからも一緒にやっていきます」(川平さん)。

(シルバー産業新聞2024年7月10日号)

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