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本紙 福祉用具貸与事業者アンケート 選択制と上限価格制

本紙 福祉用具貸与事業者アンケート 選択制と上限価格制

 本紙は9月に4月から始まった選択制の現状と仕入れ値上昇の中での上限価格制のあり方について、貸与事業所拠点数上位100社に、郵送アンケートを実施、32社から回答を得た。選択制対象製品で貸与・販売の比率は全体で貸与76.5%、販売23.5%で、貸与を選択する利用者が大勢を占めた。上限価格制は、貸与製品仕入れ値高騰を貸与価格に転嫁できないとして、制度の見直しを求める回答が9割を占めた。

選択制

 今年4月から始まった一部の貸与種目の利用者による貸与・販売(購入)の選択制について、回答のあった貸与事業所32社へのアンケート結果は、つぎのようになった(表・グラフ参照)。

 対象4種目全体(回答総件数2万3301件)では、貸与76.5%、販売23.5%と、全体の4分の3が貸与を選んだ。販売を選んだ比率をみると、種目によって差があり、固定用スロープ(総数1万1675件)は34.5%で、4種目のうちで最も高かった。一方、歩行器(歩行車は除く、ピックアップ式。総数2172件)は5.5%で、販売比率は4種目中もっとも低かった。歩行補助杖については、ロフトアンドクラッチなどの単点杖(総数474件)が販売18.8%、3点杖や4点杖などの多点杖(総数8056件)が販売13.6%という結果になった。

 販売比率について想定割合を聞いた(16社回答)質問では、販売1割4社、2割7社、3割4社、5割1社だった。想定と比べて多いか少ないか(31社回答)は、想定より多い6社、少ない11社、想定通り14社だった。

上限価格制

 上限価格制については、見直しを求めるべきとの回答が91%。理由は、物価高騰の影響で福祉用具の仕入れ価格が上昇(72%)したが、上限価格制によって既存の福祉用具の貸与価格に転嫁できない(96%)。

 上限価格制の見直し(一部重複回答)は、「上限価格の廃止」37%、「見直し1回まで」16%、「見直し2回まで」8%、「物価スライド方式導入」27%。その他は「仕入れ価格が貸与価格に反映できる仕組みがほしい」、「公定価格に統一」、「送料、地域が考慮されるしくみ」、「物価高騰を上限見直しでは緩和できない」「外れ値の対応のみにする」、「地域ごとの上限価格設定」など。

 福祉用具貸与の上限価格は、「外れ値」と呼ばれる高価格での貸与を是正するため、18年10月から「福祉用具貸与価格の上限制」がスタート。上限価格は「全国平均貸与価格+1標準偏差」で設定され、正規分布の場合、価格上位16%の貸与価格が保険給付の対象外になる。月平均100件以上の貸与件数のある製品が対象。新製品は3カ月ごとに追加される。今年7月1日現在、4516製品に上限価格が設定されている。

 今回の本紙アンケートは大手貸与事業者を対象にしており、自社レンタルが主体の事業所が多く、レンタル卸を活用する事業所や事業規模によっては、回答に差異もあることも考えられる。

選択制・貸与か販売か

ケアマネジャーの対応

 「ケアマネは貸与のメリット(交換可能・返却可能等)を感じている人が多く、貸与を勧めているケースが多い」や、「身体状況が不安定なケースが多く貸与からスタート」と、ケアマネジャーは貸与優先の意向が強い。
 一方で「ケアプランにほかの福祉用具の利用がない場合、ケアマネジャーは販売の提案をするケースが多い」、「介護度が高い利用者は貸与を希望される割合が高く、低い場合は購入の希望が多い」など、状況によって販売を勧める場合がある。

保険者の対応

 「保険者がどちらかを推奨するケースはほとんどない」や、「ケアマネに聞いても、保険者からの説明や指導などは特にない」、また「今のところ、販売を推奨しているケースはない」と、貸与か販売の方向性を示さない保険者が多い印象だった。しかし、「保険者が販売するように勧めている」との回答もあった。「一部の保険者から選択制をしっかり利用者へ説明を行っているかとの聞き取りはあった」や、「なぜ購入を選択したのか何度も聞かれる」との回答も見られた。

選択制の手続き

ケアマネジャーの対応

 「ケアマネによってきちんと説明する人と消極的な人がいる。地域で異なる」、「医療職の意見入手困難」など、手続き面での知識不足や対応の困難さが指摘された。

保険者の対応

 保険者によって、申請書類、添付資料(図面、写真等)に違いがあることや、医療職の意見に関する見解が異なる(必須、不要)との指摘があった、4点杖のゴムチップ交換について保険者が判断を断っているなど。

上限価格制についてどのような見直しが必要か

制度維持

 「上限制を廃止すると再び外れ値が発生するおそれがある」、「上限価格は貸与価格の適性化にある程度必要なこと」

制度撤廃・見直し

 「上限価格が重石となり、賃上げやメーカー値上げ分の価格転嫁が進んでいない」、「都度の調整の労力が大きい」や「見直し頻度を下げる」「新製品のみでよいのではないか」という意見。
 
 選択制・上限価格制の現状と課題を探る調査は、24・25年度の厚労省の改定検証(24年は対象・貸与事業所6000事業所、貸与利用者1万2000人)で実施される。
 
 一方、全国の福祉用具供給事業者が加盟する日本福祉用具供給協会(小野木孝二理事長)では、選択制への貸与事業所の対応についての調査を今年5月に実施しており、11月にその後の状況を調査する予定。
(シルバー産業新聞2024年10月10日号)

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