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鹿児島の介護保険 先行する高齢社会と多様な地域性に寄り添う

鹿児島の介護保険 先行する高齢社会と多様な地域性に寄り添う

 九州南端の鹿児島県は、高齢化率32.5%(2020年)。25年には高齢者数がピークとなるが、75歳以上の人口は35年、85歳以上の人口は45年にピークを迎える。

 県民を対象にした調査結果によれば「幸せと感じている人(10点満点で5点以上)」が約9割、「健康と感じている人(とても良い、まあ良い)」が約8割、「自宅で介護を受けたい人」が約7割、「自宅で最期を迎えたい人」が約5割、「地域のつながりがあると感じている」が約7割。甑(こしき)島列島、宇治群島、薩南諸島(大隅諸島・トカラ列島・奄美群島)など600㎞にわたって離島が広がり、同一県内でも地域資源や生活様式の違いも大きい。

 高齢単身世帯の割合が16.4%(20年、全国2位、全国平均12.1%)、高齢夫婦世帯は14.9%(全国4位、全国平均11.7%)と高く、介護ニーズを支える人材を確保し、地域とつながりを保ちながら、自宅で介護を受け、最期を迎えられる体制づくりが期待されている。

県民意識に沿った介護保険サービスのために

 保健福祉部高齢者生き生き推進課長の永江裕之氏は「当県では65~74歳の要介護認定率が3.9%なのに対し、75~84歳では16.8%、85歳以上では58.4%。第9期計画では、医療や介護ニーズの高まる75歳・85歳以上人口のピークを見据えた対応が求められている」と説明する。

 コロナ禍の影響や介護予防等の効果により、余剰金として積み立てた基金を充てることで第9期の県内市町村の介護保険料の基準額平均が6210円(第8期6286円)に下がった。

 「特養などの施設ニーズは一時のピークを越えた。在宅医療・介護の連携の更なる推進が求められており、市町村とも協議しながら、計画的な整備を支援していきたい」(永江氏)。

 第9期計画では、将来の変化に備え、将来の医療やケアについて、本人を主体に関係者が繰り返し話し合い、本人による意思決定を支援する「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」の取組も強化。現在34市町村で実施されているACP周知活動を、今期中に全市町村に広げることを目指す。

健康寿命の延伸と支え手確保

 100歳以上人口は全国4位(10万人当たり125.7人、23年9月、厚生労働省)。健康寿命を延伸する取組の促進のため▽市町村に対して保健事業と介護予防の一体的実施ができるように情報提供等で支援▽市町村が自立支援・重度化防止の取組がしやすいように地域のリハビリテーション専門職等の積極的な関与を促進――などを行う。

 また、介護人材や地域で高齢者を支える人材の裾野を拡大することを目的として▽チームオレンジのステップアップ研修・認知症サポーター養成講座など介護分野の各種研修▽ゴミ出しや片付けの手伝い、声掛け、見守りなど高齢者を支援する活動▽高齢者施設等でのボランティア活動――などに参加した場合にポイントを付与し、地域商品券等に交換できる「介護人材確保ポイント事業」も推進している。現在31市町村(1062人)が参画しており、今期中に2300人を目指す。

 永江氏は「元気高齢者だけでなく、幅広い世代(個人)に介護分野に関心をもって取り組んでもらいたい。研修で学び、在宅の高齢者支援や介護施設での手伝いなどの実践に結び付け、結果として介護人材の裾野を拡大することを目指している」と話す。

 介護職の処遇改善も喫緊の課題。同課介護保険室長の末吉智子氏は「23年末の処遇改善加算Ⅰの取得率は80%、特定処遇改善加算の取得率は63%(ともに旧加算)で第8期計画の目標をおおむね達成した。引き続き加算取得率向上のため、個別相談やキャリアパス構築に向けた研修等を実施するなど、支援を継続したい」と話す。
あらゆる世代に介護に関心をもってもらえるように、単なる知識にとどめず、ボランティアや介護助手の実践にもポイント付与

あらゆる世代に介護に関心をもってもらえるように、単なる知識にとどめず、ボランティアや介護助手の実践にもポイント付与

介護職員のための介護テクノロジー活用も

 介護テクノロジーに関しては、第8期計画で、介護サービス事業所ICT導入支援事業による「ICT導入事業者数」の目標200事業所を超過して実績352事業所となった。現在のICT導入介護サービスの比率は40.5%で、第9期中に64.5%への拡大を目指す。同様に介護施設等の介護ロボットの比率は、現在の19.2%を43.2%への拡大を目指す。

 6月1日、介護職員が働きやすい職場づくりに関するワンストップ相談窓口である鹿児島県介護生産性向上総合相談センター(かごロボ)を開設した。24年度は県内3施設で伴走型支援も行っている。末吉氏は「初年度目標の100件に対して、10月末現在で903件の相談をいただいている。今後も気軽に『かごロボ』に相談いただき、業務改善等の取組みにご活用いただきたい」と意気込む。

離島の介護を支える支援と国への要望

 県北端から離島を含めると600㎞にも渡る同県では、新規参入を期待することが難しく、必要なサービスの確保が困難な地域もある。

 末吉室長は「離島等で介護サービスが確保できるように、市町村と連携しながら、県としても支援していきたいと考えている。また、国に対し、離島における介護報酬の加算が利用者等の負担増にならないような負担軽減措置の拡充や財政支援策の創設を引き続き要望している」と説明する。

医療機関とケアマネジャーの連携をしやすく

 入退院支援ルールに関与し、支援することで関係者間のネットワークの維持・拡大や定着・改善を図った。ケアマネジャーにとって、医療機関との連携のハードルの高さを改善する狙いもある。

 同課地域包括ケア対策監の福田みゆき氏は「14年度のモデル事業として入退院支援ルールに取組んだ。20年度には全二次保健医療圏域で活用されるようになり、現在でも定期的にメンテナンス会議を開催し、より使いやすいルールに見直しを図っている」と説明する。

 現在は退院時調整率92.0%、入院時情報連携93.1%と、全国的で注目される取組となっている。

(シルバー産業新聞2024年12月10日号)

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