インタビュー・座談会

財務省主計局 大来志郎主計官 現役世代の負担抑制へ

財務省主計局 大来志郎主計官 現役世代の負担抑制へ

財務省の財政制度等審議会が6月26日に取りまとめた建議では、現役世代の社会保険料率を引き下げていくため、介護分野では、利用者負担2割の対象拡大、ケアマネジメントへの利用者負担導入、サービス提供実態に応じた報酬の適正化などを求めている。財務省主計局の大来志郎主計官(厚生労働・こども家庭係・社会保障総括担当)に話を聞いた。

現役世代の保険料率引き下げに向け工程表作成

 ――高齢化によって社会保障費が増大する中、政府が掲げる「現役世代の保険料率の引き下げ」を、どのように実現していく考えなのか。

 大来主計官 建議では、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくという政府方針の実現に向けて、一つは社会保障負担率の具体的な数値目標と年限を明確に掲げること、それから、その達成に向けた具体的な改革項目について、工程表を改めて作成すべきだという提言をいただいている。

 また、これに先立つ経済財政諮問会議でも、総理から、社会保障負担率の目標の検討、改革項目の今年度中の具体化と工程の明確化に取り組むよう指示があった。工程表の作成は、こうした動きと軌を一にしたものとなっている。

 具体的な数値目標や工程の期間は、今後議論を進めていくもので、現時点で決まっているものはない。関係省庁が連携し、与党でも議論いただきながら検討を進め、今年度中に取りまとめる予定になっている。工程表ができた際には、そこに定められる改革項目と時間軸が、中期的に各年度の予算編成の下敷きになる。

2割負担の対象拡大は「主要な改革項目」

 ――建議では介護保険の利用者負担について、2割負担の対象拡大を求めているが、現場からは利用控えを懸念する声もある。

 大来 介護保険制度が2000年に創設されてから四半世紀が経過し、高齢化の進展などによって、介護費用は約4倍、保険料は約2倍に増加している。今後も、要介護認定率や1人当たり介護給付費が高い85歳以上人口の増加が見込まれている。そうした点を踏まえ、制度の持続可能性を確保する観点から、2割負担の対象拡大は、主要な改革項目の候補の一つだと考えている。骨太方針2026において「2026年度中に結論を得る」とされているので、早急に結論を得て実施すべきだ。

 一方で、介護サービスは長期利用される傾向にあり、現場からは受給抑制や利用控えを懸念する声が政府に届いている。今後、結論を得るプロセスの中で、厚労省がそうした意見を吸い上げ、十分に吟味していく必要がある。

 例えば、昨年の社会保障審議会で具体的に検討対象となった年金収入230万円から260万円程度の層は、現役時代の給与収入でみれば、大企業で課長から部長級まで昇進したような層に相当し、相応の資産を保有している場合も多い。

 また、配慮措置として、預貯金が一定額以下の人は申請により1割負担に戻す案や、新たに2割負担となることによる負担増を、当分の間、月最大7000円に抑える案も示されていた。

 さらに、介護保険には高額介護サービス費があり、利用者負担が月額上限を超えた場合には、超過分が払い戻される。過去の2割、3割負担導入による介護サービス利用への影響も、実証的には限定的であったと考えられる。

 こうした対象者や配慮措置などを総合的に考え、利用控えへの懸念を解消していくことが大事だと考えている。

登録施設介護支援への利用者負担導入は「一歩前進」

 ――社会福祉法等の一部を改正する法律案が国会で可決・成立し、住宅型有料老人ホームの入居者を対象に、ケアプラン作成や生活相談、地域との連携などを行う「登録施設介護支援」が創設されることになった。ここでは、ケアマネジメントに対する利用者負担が入居者に導入される。財務省としては、今回の見直しを居宅介護支援への自己負担導入の着地点と考えているのか、それとも通過点と考えているのか。

 大来 居宅介護支援については、制度創設時に利用者負担を取らない扱いとされたが、制度創設から25年が経ち、現状ではケアマネジメントのサービス利用が定着している。利用者負担がない部分は保険給付で手当てされているため、現役世代を中心に、その分を保険料や公費で負担することで制度が成り立っている。

 一方、特養などの介護施設では、ケアプラン作成の費用が基本サービスの一部として利用者負担の対象となっており、施設介護と在宅介護との間で、ケアマネジメントの利用者負担に不均衡が生じている。

 また、利用者負担がないことで、ケアマネジメントの意義が利用者に認識されず、大切な役割を果たしているはずなのに、その役割が不当に軽視されている面もある。

 こうした課題を解決するためにも、ケアマネジメントの付加価値に応じて、利用する都度、一定の負担があってしかるべきではないかというのが、財務省のここ数年の継続的な考え方である。

 今回、住宅型有料老人ホームに対して登録施設介護支援を設けた上で、入居者にケアマネジメントの利用者負担を導入することになったのは一歩前進だと考えている。

 ただ、ケアマネジメントの利用者負担に関する課題は、必ずしも住宅型有料老人ホームに限ったものではない。先ほども述べたように、現役世代を中心に保険給付側へ負担を求めていること、在宅・施設の不均衡の問題、ケアマネジメントの意義や付加価値を正当に「見える化」していくことなどを考えれば、広くケアマネジメント全般に利用者負担を導入していくことが導き出されるのではないか。

 今回の改正の影響なども見極めながら、ケアマネジメントの利用者負担のあり方については、中期的に検討を続けていくべきだと考えている。

登録施設介護支援の報酬は「サービス実態を踏まえて」

 ――登録施設介護支援の介護報酬について、どのように考えるか。

 大来 一般的な居宅介護支援では、利用者宅を個別に訪問している。一方、住宅型有料老人ホームなどでは、利用者が同じ建物に集住しているため、移動時間を含め、利用者1人当たりのサービス提供者側の労働投入時間や労力が少なくて済む面がある。

 同一敷地内に居住する利用者へサービスを提供する場合には、「同一建物減算」が適用されるが、減算率は現段階では限定的である。住宅型有料老人ホームでサービスを提供する事業者は、利用者宅を個別に訪問する事業者と比べて、労働投入時間との対比で、より多くの介護報酬を得ていると考えられる。

 収支差率はいろいろな要因によって決まるため、次期改定のプロセスで経営情報をデータとしてしっかり取り、分析していく必要がある。ただ、これまでのデータを見ると、そうしたサービス類型は収支差率も良い傾向にある。

 登録施設介護支援の報酬設定にあたっては、こうしたサービス提供の実態を踏まえ、現在の居宅介護支援の報酬との関係で考えていく必要があるのではないか。

令和9年度改定は「メリハリ」が重要

 ――賃上げや物価上昇への対応が求められる中、建議では、介護サービスの利益率が他産業と比べて高い水準にあり、サービス類型ごとに大きな差がある点を指摘している。次期介護報酬改定に対する財務省の考えは。

 大来 令和9年度の介護報酬改定では、現役世代を中心とする保険料負担の増加を抑制し、制度の持続可能性を確保するため、介護給付全体の効率化・適正化を促すような報酬改定が必要になる。

 その際、「メリハリのある報酬改定」は重要なキーワードだ。物価上昇の影響がある中でも、介護サービスの利益率は、過去や他産業と比較して高い水準にあり、サービス類型ごとに大きな差がある。次期介護報酬改定では、こうしたサービス類型やサービスの提供実態に応じて、介護報酬を適正化する必要があるだろう。

 ただし、利益率という外形だけを見て、機械的に判断するわけではない。さまざまな情報を集めて多面的に分析し、納得感のある報酬改定につなげていくことが大事だ。また、生産性を高める取り組みにインセンティブをつけるなどのメリハリも大事だと考えている。

物価対応も介護報酬改定の「一要素」

 ――令和8年度の診療報酬改定では、費用構造などに応じたきめ細やかな物価対応や賃上げ対応が行われた。介護報酬改定でも、同様の対応が必要ではないか。

 大来 賃金や物価の動向などの変化に的確に対応する必要があると認識している。ただ、医療に比べると介護は労働集約的なので、やはり中心は処遇改善になる。一方で、介護にも一定の物件費はかかっているため、物価対応も報酬改定で見ていかなければならない一要素だと考えている。

 ただし、各論では、どのサービス類型の、どの物件費を、どの程度伸ばすのかを、最終的には決めなければならない。

 介護報酬は、国民の保険料と税金で賄われている。最終的には政府全体が国民に対して立証責任を負うが、予算編成のプロセスでは、一義的には事業者や厚労省側が物価上昇の影響を立証していくことが、議論のスタートになると考えている。そうしたデータや根拠があってこそ、建設的で実効性のある物価対応策を検討できる。

(シルバー産業新聞2026年8月10日号)

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