未来のケアマネジャー
未来のケアマネジャー92 骨太方針2026を読み解く 介護人材を「社会を支える存在」へ再定義
国の見取り図ともいえる「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」は毎年初夏に内閣府から発表される。今年は7月21日に発表された。骨太の方針を読み解くことは、政府がこれからどのような政策に力を入れ、どこに予算を使っていくのかを予測することといえる。
厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会では、令和9年介護報酬改定に向けた議論が始まり、その動向が気になるところだ。ひっ迫する人材不足や、物価高騰のあおりを受ける厳しい経営事情がある一方で、増加する要支援・要介護高齢者に対するサービスの質を保ち、尊厳の保持に向けた限界への挑戦ともいえる状況に対して、政府はどのような方針を立てたのか。
骨太の方針2026をより深く理解するために、2024年から2026年の3年分を「介護」「エッセンシャルワーカー」「DX/AX」の3つのキーワードから読み解いていこう。
まず「介護」の出現頻度は、2024年版(35回)、2025年版(36回)、2026年版(23回)と、2026年版で減少したものの依然として高い水準にある。例えば、道路陥没事故が年間1万件近く発生しているにもかかわらず、「公共インフラ」の出現は各年度で1〜2回にとどまる。不足が深刻視されている「原油」でさえ、2024年版と2025年版は0回、問題が発生した2026年版で1回である。いかに国が「介護」を重視しているかがわかるだろう。
次に注目すべきは「エッセンシャルワーカー(社会基盤を支える働き手)」である。実はこの言葉は2024年版には存在しない。2025年版で初めて出現し、「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」と記載された。これは、デジタル技術を使いこなして高い給与を得る次世代の働き手を意味する。2026年版では「医療・介護・障害福祉等の分野の技術の発展と普及を支援し、DX/AX、多職種連携を含むチーム医療等による生産性の向上と職員配置の柔軟化に向けた一層の取組を図る」と言及された上で、この言葉が用いられている。これは、国が介護職員を単なる「人手不足の現場の担い手」としてではなく、これからの社会を牽引する重要な存在として再定義し、期待を高めていると解釈できる。
「DX(デジタル技術による変革)」と「AX(AIによる変革)」についても深掘りして福祉等の分野の技術の発展と普及を支援し、DX/AX、多職種連携を含むチーム医療等による生産性の向上と職員配置の柔軟化に向けた一層の取組を図る」と言及された上で、この言葉が用いられている。これは、国が介護職員を単なる「人手不足の現場の担い手」としてではなく、これからの社会を牽引する重要な存在として再定義し、期待を高めていると解釈できる。
「DX(デジタル技術による変革)」と「AX(AIによる変革)」についても深掘りしてーとは、自分の作業範囲を超え、チームアプローチでDX・AXを活用して生産性を向上できる人材である。まさにチームアプローチの要であるケアマネジャーは、これをどう受け止めるべきか。
報酬改定についての国の本気度はどうか。2026年版では「物価の変動に適切に対応するとともに、他職種と遜色のない(他と比べて見劣りしない)処遇改善の実現を図る」と、踏み込んだ記載がある。他業種に負けない給与水準を実現し、必要なエッセンシャルワーカーを確保して、全国どこでもサービスを受けられる体制を守るための制度改革に速やかに着手すると宣言している。
一方、骨太の方針に「ハラスメント」の記載は皆無である。「気候変動」の項目で「熱中症対策」に言及されているが、介護との紐づけはない。酷暑の期間が延伸した昨今、訪問系サービスの提供は命がけの状況である。介護人材という大きなくくりではなく、より負担が大きく不足が深刻な人材への配慮はいまだない。
前介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げられた。しかし、訪問介護が生活を支えなければ、医療の提供すら実現しないのが在宅生活の実態である。空調が完備された施設とは異なる過酷な気候下での移動や、利用者宅ごとに異なる環境で、一人で判断しながら行う究極の個別ケアが訪問介護だ。収支差率を基準とするのではなく、基本報酬は専門性への評価であるべきだ。骨太の方針の記載事項が今後どのように報酬へ反映されていくのか、次期介護報酬改定に向けた議論に注目が集まる。
(シルバー産業新聞2026年8月10日号)


